250 / 577
第四章
10『アレクセイ』
しおりを挟む
「リーナ君!」
アンナリーナが動かなくなったビッグワームを収納して、初めて教官の結界内に意識を移すと、生徒たちは喝采の歓声をあげていたが教官たちは真っ青な顔色でパニック寸前だった。
「今すぐに行きます。【洗浄】」
全身を清めて彼らの元に駆け寄る。
そこにはワームの直撃を受けた生徒が横たえられていた。
「食いちぎられてはいないが、かなり酷い。手持ちのポーションで何とか保たせてきたが……」
アンナリーナは【解析】で、横たわる男の子の状態をスキャンしていく。
「出血が多いですね。
どんな種類のポーションを使いました?」
「初級と中級を。
だが傷は塞がらなくて」
「大丈夫ですよ」
アンナリーナはアイテムバッグからポーション瓶を取り出した。
まずはそれをそれぞれの傷にかけていくと沁みたのか、意識のない男の子が呻いて、身じろぐ。
「ちょっと我慢してね」
一番酷い脚は、すでにズボンが切り裂かれ、傷が露わになっていた。
そこはようやく、出血が治まりつつある。
「骨は大丈夫……
腱が傷ついているからもう少しポーションを使うね」
アンナリーナはもう量産しているが、まだ一般には流通させていない【上級ポーションC】を、まるで湯水のように使っていく。
「あ、気がついた?
じゃあ、これ……飲んでくれる?」
男の子にポーション瓶が2本、渡される。
同時に丸薬も差し出された。
「これは増血のお薬だよ。
少し様子を見て、痛み止めとか熱冷ましとか考えるね」
当然の事ながらオリエンテーションは中止となり、まずは教官とアンナリーナが付き添って男の子が運ばれていった。
学院に戻ったアンナリーナは、男の子に付き添って寮の医療室にいた。
この男の子、実は北の辺境の領地を守る伯爵家の嫡男で、伯爵が老年に至ってから授かった一粒種である。
アレクセイ・サバベント、それが彼の名だ。
「毒消しのポーションで洗ったから大丈夫だと思うけど、一応このお薬も飲んでおいて。
これは毒状態解除薬だから」
「はい、ありがとうございます」
「痛みはない? 今夜は熱が出るかもしれないから、ここに泊まってね。
私も付き合うから」
そこに、呼ばれて駆けつけた、アレクセイの従者が飛び込んできた。
「坊っちゃま!」
「イゴール」
「坊っちゃま、ああ、よかった……
錬金薬師様、この度は本当にありがとうございました。ありがとうございますぅ……」
年配の、爺やと言ってもよい従者であるイゴールが、最後はさめざめと泣いている。
「従者さんが来てくれたし、ちょうどいいから私も部屋に戻って着替えてきます。
えっと、なんて呼んだらいいのかな?」
「僕はアレクセイ。
アレクセイ・サバベントです」
「じゃあ、アレクセイくん、ベッドで大人しくしていてね」
アレクセイ・サバベント。
彼は今年度最年少の12才である。
いささか過保護に育てられた彼は、年若いのもあって未だに友だちの一人もいない。
ギフト授与式も済ませていないため、適正を図る事も出来ずにいる “ 半端者 ”扱いされているのだ。
「坊っちゃま、学院の方から報せを受けて、爺は生きた心地がしませんでした」
「うん、本当に突然な事だったんだ。
リーナ様がいらっしゃらなかったら、僕は脚を……いや、命すら危なかった」
「何と!!」
イゴールが卒倒しそうな顔をしていた。
アンナリーナが動かなくなったビッグワームを収納して、初めて教官の結界内に意識を移すと、生徒たちは喝采の歓声をあげていたが教官たちは真っ青な顔色でパニック寸前だった。
「今すぐに行きます。【洗浄】」
全身を清めて彼らの元に駆け寄る。
そこにはワームの直撃を受けた生徒が横たえられていた。
「食いちぎられてはいないが、かなり酷い。手持ちのポーションで何とか保たせてきたが……」
アンナリーナは【解析】で、横たわる男の子の状態をスキャンしていく。
「出血が多いですね。
どんな種類のポーションを使いました?」
「初級と中級を。
だが傷は塞がらなくて」
「大丈夫ですよ」
アンナリーナはアイテムバッグからポーション瓶を取り出した。
まずはそれをそれぞれの傷にかけていくと沁みたのか、意識のない男の子が呻いて、身じろぐ。
「ちょっと我慢してね」
一番酷い脚は、すでにズボンが切り裂かれ、傷が露わになっていた。
そこはようやく、出血が治まりつつある。
「骨は大丈夫……
腱が傷ついているからもう少しポーションを使うね」
アンナリーナはもう量産しているが、まだ一般には流通させていない【上級ポーションC】を、まるで湯水のように使っていく。
「あ、気がついた?
じゃあ、これ……飲んでくれる?」
男の子にポーション瓶が2本、渡される。
同時に丸薬も差し出された。
「これは増血のお薬だよ。
少し様子を見て、痛み止めとか熱冷ましとか考えるね」
当然の事ながらオリエンテーションは中止となり、まずは教官とアンナリーナが付き添って男の子が運ばれていった。
学院に戻ったアンナリーナは、男の子に付き添って寮の医療室にいた。
この男の子、実は北の辺境の領地を守る伯爵家の嫡男で、伯爵が老年に至ってから授かった一粒種である。
アレクセイ・サバベント、それが彼の名だ。
「毒消しのポーションで洗ったから大丈夫だと思うけど、一応このお薬も飲んでおいて。
これは毒状態解除薬だから」
「はい、ありがとうございます」
「痛みはない? 今夜は熱が出るかもしれないから、ここに泊まってね。
私も付き合うから」
そこに、呼ばれて駆けつけた、アレクセイの従者が飛び込んできた。
「坊っちゃま!」
「イゴール」
「坊っちゃま、ああ、よかった……
錬金薬師様、この度は本当にありがとうございました。ありがとうございますぅ……」
年配の、爺やと言ってもよい従者であるイゴールが、最後はさめざめと泣いている。
「従者さんが来てくれたし、ちょうどいいから私も部屋に戻って着替えてきます。
えっと、なんて呼んだらいいのかな?」
「僕はアレクセイ。
アレクセイ・サバベントです」
「じゃあ、アレクセイくん、ベッドで大人しくしていてね」
アレクセイ・サバベント。
彼は今年度最年少の12才である。
いささか過保護に育てられた彼は、年若いのもあって未だに友だちの一人もいない。
ギフト授与式も済ませていないため、適正を図る事も出来ずにいる “ 半端者 ”扱いされているのだ。
「坊っちゃま、学院の方から報せを受けて、爺は生きた心地がしませんでした」
「うん、本当に突然な事だったんだ。
リーナ様がいらっしゃらなかったら、僕は脚を……いや、命すら危なかった」
「何と!!」
イゴールが卒倒しそうな顔をしていた。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの
山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。
玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。
エリーゼ=アルセリア。
目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。
「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」
「……なぜ、ですか……?」
声が震える。
彼女の問いに、王子は冷然と答えた。
「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」
「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」
「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」
広間にざわめきが広がる。
──すべて、仕組まれていたのだ。
「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」
必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。
「黙れ!」
シャルルの一喝が、広間に響き渡る。
「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」
広間は、再び深い静寂に沈んだ。
「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」
王子は、無慈悲に言葉を重ねた。
「国外追放を命じる」
その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。
「そ、そんな……!」
桃色の髪が広間に広がる。
必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。
「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」
シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。
重い扉が開かれる。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる