280 / 577
第四章
40『タイニスとの商談と襲撃』
しおりを挟む
「私は以前、あのテントの1人用を2張り、販売した事があります」
アンナリーナはここで言葉を切った。
「あのテントは、とにかく魔力を喰うんですよ。
元々、自分が使うために作ったわけだし、あまり考えずに作ったもので。
それでですね、今使ってもらってるテントなら……魔力値10000はいるんじゃないかな。そのレベルの魔法職、用意出来ます?」
魔力値10000の魔法職と言えば、宮廷魔導士の最低ラインだ。
そしてこのレベルなら、冒険者としてもAランクは堅い。
「魔力値10000……ですか?」
「ええ、販路にのせる気もありませんし、だからこれ以上使用魔力の節約とか興味ないので改良の予定もなしです。
それとお値段は……前売った小さいのが金貨300枚くらいだったから、あれなら500枚くらいでしょうか」
タイニスは黙り込んでいた。
やはり、魔力値10000の魔法職と言うのが障害となって立ちはだかる。
そして、先ほどから心とらわれているこの馬車に関しては……推して知るべし。
「もしよろしければ、この依頼が終わって、魔法職の方を調達出来てから連絡下されば、いつでもお譲りします」
にっこりと笑ったアンナリーナは、無言でタイニスたちに帰るよう、促している。
その事を見て取った従者が追い立てるように辞去をし、ドアへと向かう。
彼の背中は冷や汗でびっしょりと濡れていた。
何事もない日々が続き、翌日は目的地である、東部工業都市ランブエールに着くという前夜。
今宵もアンナリーナと従魔たちによって、十分に満足のいった夕食の後、それらはやって来た。
「セト、イジ」
「近づいてきてますね。
結界を越えられるとは思いませんが、迎え討ちましょう」
「主人、群れのようだが……狼か?」
「そうね。上位種のようだわ」
セトとイジが、ウエストバッグから得物を取り出して構えた。
その様子にタイニスたちはギョっとする。
その頃にはテオドールやアルバインも気づき、サルバドールは顔色を変える。
「リーナ! どうなってる!?」
テオドールが腰の剣ではなく、本来の得物、戦斧を取り出し駆け寄ってくる。
アンナリーナはアイテムバッグから防具を取り出し、イジが着けるのを手伝っていた。
「熊さん、セトとイジが出ます!
魔獣は狼系、おそらく黒狼の群れ、およそ50。
群れのボスはさらに上位種のおそれあり!」
「黒狼!?」
アルバインの上ずった声がして、アンナリーナは振り返り、『ちょうどいい』と舌舐めずりした。
「アルバインさん、この魔獣ですけど討伐した場合、素材はいただけます?」
「ああ、討伐した魔獣は君らのものだ」
「やった! 張り切っちゃう!
セト、イジ、なるべく傷つけないようにお願い!
親玉は私に任せて」
結界を通り抜けて、主従は駆け出していった。
「テオドール、あれは大丈夫なのか?」
「まったく問題ないですよ。
あいつは変に細かいんで、倒した魔獣さえもらえれば大満足でしょう」
とりあえず、タイニスと従者、それと御者2人を箱馬車に乗せて、テオドールは戦斧を構えた。
「あいつらが討ち漏らす事はないと思うが、ここは俺が守る。
あんたらは手出し無用だ」
先鋒であろう3匹の黒狼を、イジの剣が一匹の首を落とし、セトはエアカッターで2匹の首を落とした。
アンナリーナは【飛行】を使い浮き上がり、上空から全景を見つめている。
「うふ、親玉はあの白っぽいのみたいね。一気に【血抜き】でいく?
それとも【サファケイト】?」
楽しそうに笑うアンナリーナから、魔力が黄金色の粉となり溢れ出した。
アンナリーナはここで言葉を切った。
「あのテントは、とにかく魔力を喰うんですよ。
元々、自分が使うために作ったわけだし、あまり考えずに作ったもので。
それでですね、今使ってもらってるテントなら……魔力値10000はいるんじゃないかな。そのレベルの魔法職、用意出来ます?」
魔力値10000の魔法職と言えば、宮廷魔導士の最低ラインだ。
そしてこのレベルなら、冒険者としてもAランクは堅い。
「魔力値10000……ですか?」
「ええ、販路にのせる気もありませんし、だからこれ以上使用魔力の節約とか興味ないので改良の予定もなしです。
それとお値段は……前売った小さいのが金貨300枚くらいだったから、あれなら500枚くらいでしょうか」
タイニスは黙り込んでいた。
やはり、魔力値10000の魔法職と言うのが障害となって立ちはだかる。
そして、先ほどから心とらわれているこの馬車に関しては……推して知るべし。
「もしよろしければ、この依頼が終わって、魔法職の方を調達出来てから連絡下されば、いつでもお譲りします」
にっこりと笑ったアンナリーナは、無言でタイニスたちに帰るよう、促している。
その事を見て取った従者が追い立てるように辞去をし、ドアへと向かう。
彼の背中は冷や汗でびっしょりと濡れていた。
何事もない日々が続き、翌日は目的地である、東部工業都市ランブエールに着くという前夜。
今宵もアンナリーナと従魔たちによって、十分に満足のいった夕食の後、それらはやって来た。
「セト、イジ」
「近づいてきてますね。
結界を越えられるとは思いませんが、迎え討ちましょう」
「主人、群れのようだが……狼か?」
「そうね。上位種のようだわ」
セトとイジが、ウエストバッグから得物を取り出して構えた。
その様子にタイニスたちはギョっとする。
その頃にはテオドールやアルバインも気づき、サルバドールは顔色を変える。
「リーナ! どうなってる!?」
テオドールが腰の剣ではなく、本来の得物、戦斧を取り出し駆け寄ってくる。
アンナリーナはアイテムバッグから防具を取り出し、イジが着けるのを手伝っていた。
「熊さん、セトとイジが出ます!
魔獣は狼系、おそらく黒狼の群れ、およそ50。
群れのボスはさらに上位種のおそれあり!」
「黒狼!?」
アルバインの上ずった声がして、アンナリーナは振り返り、『ちょうどいい』と舌舐めずりした。
「アルバインさん、この魔獣ですけど討伐した場合、素材はいただけます?」
「ああ、討伐した魔獣は君らのものだ」
「やった! 張り切っちゃう!
セト、イジ、なるべく傷つけないようにお願い!
親玉は私に任せて」
結界を通り抜けて、主従は駆け出していった。
「テオドール、あれは大丈夫なのか?」
「まったく問題ないですよ。
あいつは変に細かいんで、倒した魔獣さえもらえれば大満足でしょう」
とりあえず、タイニスと従者、それと御者2人を箱馬車に乗せて、テオドールは戦斧を構えた。
「あいつらが討ち漏らす事はないと思うが、ここは俺が守る。
あんたらは手出し無用だ」
先鋒であろう3匹の黒狼を、イジの剣が一匹の首を落とし、セトはエアカッターで2匹の首を落とした。
アンナリーナは【飛行】を使い浮き上がり、上空から全景を見つめている。
「うふ、親玉はあの白っぽいのみたいね。一気に【血抜き】でいく?
それとも【サファケイト】?」
楽しそうに笑うアンナリーナから、魔力が黄金色の粉となり溢れ出した。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
605
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる