292 / 577
第四章
52『初手』
しおりを挟む
「イジは私と後方の本隊を迎え撃ちます。なお、ここには前方の馬車を片づけた熊さんとセトも合流してもらいます。
そして左方向からの狼の群れにはネロ、お願いしますね」
「御意」
「あとのアラーニェ、アンソニー、アマルは馬車を守って下さい。
万全の態勢でよろしく」
従魔たちが一斉に、片膝ついて跪く。
その様を見せつけられたアルバインは、アンナリーナの実力が自分が思っていた以上のものだと理解する。
錬金薬師でありテイマー。
魔獣の群れも盗賊団も恐れない。むしろ楽しんでいるように見えるのは、気のせいなのだろうか。
「この後、馬の休憩が終わり次第、出発します。それまでに出来るだけ食事などを済ませておいて下さい」
アンナリーナはそう言うと、セトとイジを引き連れテントに入っていった。
結界をまとった馬車が進んでいく。
自ら罠に飛び込んでいく彼らに、過度な緊張は見られない。
「それで最後の打ち合わせです。
もうすぐ盗賊団の馬車と接触しますが、結界があるので攻撃されても大丈夫です。
でも、皆さんは絶対に馬車から出ないで下さい」
そう言う遣り取りをしている間に、遠くに脱輪して立ち往生しているように偽装した馬車が見えてきた。
「皆さん、始まりますよ」
前方で手を振る男がいる。
彼の後ろでは丸太を使い、テコの原理で溝にはまった車輪を持ち上げようとしているものがいる。
……芸の細かい事だ。
アンナリーナのマップ上に現れた点は相変わらず真っ赤。
奴らは盗賊団で間違いない。
「どうしたんだ?」
先頭の箱馬車に御者とともに乗っていたテオドールが、白々しく声をかけた。
「脱輪したんだ。
悪いが手伝ってもらえないだろうか?」
「ああ、いいぞ」
後ろの幌馬車の御者台に座っていたセトが近寄ってきたのを合図として、テオドールがいきなり男に斬りかかった。
丸太を持っていた男がそれを放り出し向かってくる。
馬車のドアが開いて、中から5人の男が飛び出してきた。
すぐにセトが切り結び、1人の男が一閃されたのち、真っ二つとなった。
同時に尾で跳ね飛ばされた男は木に直撃し、首がありえない方向に曲がってしまっている。
テオドールの今日の得物、大剣も盗賊団の血を吸っていた。
馬車の結界から出た街道で、ネロの呟いた呪文により大型の魔法陣が現れた。
「出でよ、我が僕たち」
淡く発光した魔法陣から現れたのは、完全武装したスケルトンたち。いわゆるスケルトンソルジャーだ。
「いい感じに育ってるじゃん。
ネロに任せておいて良かったよ」
「ありがとうございます。
今は100体ほどしかおりませんが、これからも随時増やしていく所存でございます」
「では狼くんたちをやっつけてもらおうか……テイマーは絶対に殺して」
「御意」
魔方陣からはまだまだスケルトンが現れ続けている。
それを目にした盗賊たちは恐慌をきたしている。
「セト!! 行っちゃって!」
斬り合いの場から、テオドールが退いたのを合図に、セトの口から火のブレスが吐き出され、馬車もろとも火だるまとなる。
バタバタと暴れる盗賊たちに、レーザーでとどめを刺したのはセトの優しさだろうか。
「思ったよりもあっさりとカタがついたね……次は後方の本隊、熊さんも暴れ足りないでしょ」
「おお、次は本来の得物、これでいくぜ」
アンナリーナから支給されているウエストバッグから、戦斧が取り出され上下左右に振り回す。
そして左方向からの狼の群れにはネロ、お願いしますね」
「御意」
「あとのアラーニェ、アンソニー、アマルは馬車を守って下さい。
万全の態勢でよろしく」
従魔たちが一斉に、片膝ついて跪く。
その様を見せつけられたアルバインは、アンナリーナの実力が自分が思っていた以上のものだと理解する。
錬金薬師でありテイマー。
魔獣の群れも盗賊団も恐れない。むしろ楽しんでいるように見えるのは、気のせいなのだろうか。
「この後、馬の休憩が終わり次第、出発します。それまでに出来るだけ食事などを済ませておいて下さい」
アンナリーナはそう言うと、セトとイジを引き連れテントに入っていった。
結界をまとった馬車が進んでいく。
自ら罠に飛び込んでいく彼らに、過度な緊張は見られない。
「それで最後の打ち合わせです。
もうすぐ盗賊団の馬車と接触しますが、結界があるので攻撃されても大丈夫です。
でも、皆さんは絶対に馬車から出ないで下さい」
そう言う遣り取りをしている間に、遠くに脱輪して立ち往生しているように偽装した馬車が見えてきた。
「皆さん、始まりますよ」
前方で手を振る男がいる。
彼の後ろでは丸太を使い、テコの原理で溝にはまった車輪を持ち上げようとしているものがいる。
……芸の細かい事だ。
アンナリーナのマップ上に現れた点は相変わらず真っ赤。
奴らは盗賊団で間違いない。
「どうしたんだ?」
先頭の箱馬車に御者とともに乗っていたテオドールが、白々しく声をかけた。
「脱輪したんだ。
悪いが手伝ってもらえないだろうか?」
「ああ、いいぞ」
後ろの幌馬車の御者台に座っていたセトが近寄ってきたのを合図として、テオドールがいきなり男に斬りかかった。
丸太を持っていた男がそれを放り出し向かってくる。
馬車のドアが開いて、中から5人の男が飛び出してきた。
すぐにセトが切り結び、1人の男が一閃されたのち、真っ二つとなった。
同時に尾で跳ね飛ばされた男は木に直撃し、首がありえない方向に曲がってしまっている。
テオドールの今日の得物、大剣も盗賊団の血を吸っていた。
馬車の結界から出た街道で、ネロの呟いた呪文により大型の魔法陣が現れた。
「出でよ、我が僕たち」
淡く発光した魔法陣から現れたのは、完全武装したスケルトンたち。いわゆるスケルトンソルジャーだ。
「いい感じに育ってるじゃん。
ネロに任せておいて良かったよ」
「ありがとうございます。
今は100体ほどしかおりませんが、これからも随時増やしていく所存でございます」
「では狼くんたちをやっつけてもらおうか……テイマーは絶対に殺して」
「御意」
魔方陣からはまだまだスケルトンが現れ続けている。
それを目にした盗賊たちは恐慌をきたしている。
「セト!! 行っちゃって!」
斬り合いの場から、テオドールが退いたのを合図に、セトの口から火のブレスが吐き出され、馬車もろとも火だるまとなる。
バタバタと暴れる盗賊たちに、レーザーでとどめを刺したのはセトの優しさだろうか。
「思ったよりもあっさりとカタがついたね……次は後方の本隊、熊さんも暴れ足りないでしょ」
「おお、次は本来の得物、これでいくぜ」
アンナリーナから支給されているウエストバッグから、戦斧が取り出され上下左右に振り回す。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
605
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる