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第四章

51『盗賊団への対抗策』

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 盗賊団本隊から3時間以上離れている今、アンナリーナは街道沿いの拓けた土地に馬車を止めさせた。

「ここで盗賊団に対峙する準備をします。
 御者さんは馬たちに飼葉と水を与えて下さい。それとみなさんには今のうちに食事を摂ってもらいます」

 タイニス、オクタビオを始めアルバインたちも落ち着いている。
 それはこの護衛依頼の間に培った、アンナリーナたちに対する信頼からくるものであった。
 それほどアンナリーナや従魔たちは規格外なのだ。

「では、準備してきます。
 みなさんはまだ、外に出ていて大丈夫ですよ」

 窮屈になっていた馬車からアンナリーナが出て行く。そしてサルバドールも続いた。
 先ほど馬車を覗いて話を聞いていた御者たちは、テオドールとイジと共に飼葉を与えている。
 アンナリーナはさりげなく近寄ると、一頭一頭に回復魔法を施していく。
 そして中級ポーションを取り出すと足元にかけていった。

 次はテントをひと張り取り出し、ツリーハウスと繋いだ。
 中に入って向こうに行くと、昨夜に伝えてあったからであろう、アラーニェなどは戦装束を着込んでいた。

「ガムリの護衛としてジルヴァラを残し、それ以外は皆あちらで。
 アンソニーはまずサンドイッチとお茶を最低3食分お願い」

「リーナ様、サンドイッチはもう出来ています。お茶も保温水筒に用意しました」

「ではあちらのタイニスさんたちに2食分ずつ配って来て。
 そのあとは自分の得物を持って馬車の前に集合ね」

「リーナ様、私ももうあちらに行っても?」

「もちろんよ、アラーニェ」

 アラーニェには馬車の護りを担当してもらう。
 今回は3方向からの襲撃なのだ。結界が破られるとは思わないが、アンナリーナは最善を尽くす。

「次はネロ。
 どう?計画は順調に進んでいて?」

「はい、ご主人様。
 必ずや、ご期待にそって見せましょう」

「そう、楽しみにしているわ」

 ネロが向こうに行くのを見送って、アンナリーナはツリーハウスから出て、ガムリの居るテントにジルヴァラを連れて向かう。

「ガムリ、ちょっと失礼するわよ」

 入り口の布をめくって狼を伴って入ってきたアンナリーナを見て、ガムリはびっくりして飛び起きた。

「ごめんね、ちょっとアラーニェを連れて行くことになったから、この子をあなたの護衛に置いておくことにしたの。
 一日もかからないと思うけど、3食分のサンドイッチはここに置いておくね」

「あの、その狼は……?」

「この子はジルヴァラ。私の従魔なの。このままここで、あなたの護衛をさせたいのだけど……嫌なら外でさせるわ」

 ガムリは考える。
 銀色の大型犬ほどの大きさだが、そののし掛かってくるようなオーラは、ただの狼とは思わせない。
 だが、たとえ返しがなくとも話しかける相手がいるというのは、気が紛れるというものだ。

「ここにいてもらっても構いません。
 あの、彼?の食事は?」

「この子は2~3日食べなくても大丈夫。そうね、ジルヴァラにもサンドイッチを置いておくわ。
 お茶はこのポットに、水差しはここね」

 あとはポーションと薬湯と。
 用法を教え、アンナリーナはツリーハウス経由で馬車に戻っていった。


「さて、今回の敵は3方向からやって来ます。
 まずは前方の馬車。おそらく馬車の故障か何か、難儀して助けを求めてくる作戦だと思います。
 さほど人数はいませんが、私たちを油断させて襲ってくると思います。
 私の危機察知では真っ赤ですので先行して殺っちゃいます。
 ここには熊さんとセトでお願い。
 セト……ブレスで燃やしちゃっていいから」

 燃やしたら駄目だろう……と、アルバインは心の中で呟いた。
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