魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

75『アントンへの治療』

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 血まみれの鎧下を引き裂き、アンナリーナはまず魔力水で傷を洗った。

「うーん、結構深くいっちゃってるね。ギリギリかな……【回復】」

 まずはこれ以上悪化しないように、傷が今の状態で固定されるよう【回復】をかけ、次に切断された右脚を診た。

「こちらはちゃんと止血してあるね。
 わき腹の傷とは時間差があるのかな」

 アントンが右脚を失った時点では、彼を助ける意思があったようだ。

「さすがにこのわき腹の傷では助からないと思って見捨てたのか……」

 アンナリーナはイジに指示して、今夜の野営地の12階層までアントンを運ばせて、馬車の近くにガムリのときに使ったテントを出した。

「ここに寝かせて、そう」

 マットレスを覆うように敷かれたビニールシートの上にアントンを寝かせ、着ているものをすべて取り去る。
 そして全身を丁寧に洗浄していった。
 背中の様子を見るために身体を傾けると、アントンの口からごぷりと血が溢れ出す。

「おっ……と。ビニールシートを敷いていて良かったね。
 でも、これは……
 ポーションを経口摂取させたかったんだけど、しょうがないね」

 アンナリーナは、取り出した上級ポーションを惜しげもなく傷にかけ、様子を見ている。

「ん~ 腸がちょっと齧られちゃってるかな。
【回復】【回復】」

 アンナリーナのレベルの高い治癒魔法で、どうにか腸を再生することが出来た。
 後は筋肉などの組織を元に戻すだけだ。
 また、患部にポーションを振りかけ、再生を促す。
 少し抉れた痕を残し、アンナリーナは治療を終えた。

「? 主人様、足は治さないのでしょうか?」

 一応、護衛として残ったイジが不思議そうに聞いた。
 ちなみにテオドールとネロはセトを伴い、もう一度8階層に探索に行っている。

「これは意識が戻ってからだね。
 第一、何の見返りもなしに、貴重な薬を使う義理はないわ」

 ふん、と鼻を鳴らしたアンナリーナは、決して善良な人間ではない。



 アントンは生まれ育った村を出たあと、王都の冒険者養成学校の戦士科に入学した。
 この時、幼馴染のナタリアとともに上洛した彼は間なしに自分たちの故郷が壊滅した事を知る。
 それから彼は冒険者として登録し、学費と生活費を稼ぎながらようやく一年間の教育課程を終え、中級レベルのクランに入る事が出来たのだ。
 そして見習いだが、重戦士としてそれなりの活躍をし、今回のダンジョン攻略に抜擢された。
 アントンにとって初めてのダンジョン攻略はそうして始まったのだが、その時はまだ、全員が楽観視しすぎていたのだろう。
 願わくば、ダンジョンの到達記録を更新しようと思うほど、彼らの士気は上がっていた。

 デラガルサ・ダンジョンは、浅い階層はかなり低いレベルでも攻略出来る、初心者には優しいダンジョンだ。
 2階層で現れる洞窟蝙蝠の皮膜はそこそこの買取額になるし、その数を揃える事が出来るため、ランクの低い冒険者がこれを売って生活している事もある。
 3階層、4階層に出現する魔獣も初心者には美味しい獲物だった。
 だがそれは5階層になると一気に変わる。
 それは、たとえ今までの階層と同じ魔獣でも格段に強化されていて、同じように思っていると痛い目に遭うのだが、ここで彼らのパーティの盗賊が愚かにもしっぺ返しに遭い、脱落した。
 パーティは一度ダンジョンから出て盗賊を宿に残し、他の者は消耗品を追加してダンジョンに戻っていったのだが、この時ギルドで販売されているダンジョンマップを買っていたら、あのような目に遭う事はなかったかもしれない。
 アントンたちは再びダンジョンに入ったのだ。
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