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第四章
105『トラブルの予感……』
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時は少々遡る。
アンナリーナが王弟の怪我を治して目を付けられ、理不尽な “ 命令 ”に憤慨して飛び出したのと前後して、学院に季節外れの編入があった。
ほぼゴリ押しのその編入は、今アンナリーナが滞在している祖国の王女である。
それは授業の進行など意にも介していない傍若無人さで、その滞在中に生活する寮でも問題になるほど。
現に10日ほど経った今でも、未だ引越し作業は続いていた。
そんな当の本人、王女シモネッティーナが寮に到着した当日、自分の部屋番号が『2』で、他に『1』号室がある事に機嫌を損ねた。
「今現在この学院には、王族が1人も在学していないと聞いているわ。
それなのにどうして私の部屋より良い部屋が使われているの?!
抗議します! 今すぐ私に『1』号室を明け渡しなさい!」
寮監の老婦人に高圧的にまくし立てる様はとても王族には見えない見苦しさだ。
「シモネッティーナ様、『1』号室には現在居住している学院生が居ります。
彼女は今、学業の一貫で国外に出ておりますので連絡の取りようがないのです」
老婦人は安易な方に逃げを打ったようだ。
それが王女の、一層の怒りを買う。
「すぐに部屋を明け渡しなさい!
これ以上抵抗するなら国から正式な抗議を行います」
「しかし、彼女もまた正式な誓約を持ってして契約しているのです。
授業料とともに部屋の使用料、金貨2000枚も先日すでに支払われています」
相手側に瑕疵がない限り追い出す事は出来ない、老婦人はそう言っているのだが。
護衛の女騎士が老婦人を拘束し、お付きの侍女が寮監の証、合鍵の束を取り上げる。
腕力にモノを言わせた女騎士は乱暴に老婦人を押しやり、彼女は倒れてしまう。
同じ階で生活している貴族令嬢たちは、その様子を恐々と見ていた。
本日の御者、テオドールの横に座ったアンナリーナの身体がかすかに揺れた。
「っ!?」
「リーナ? どうした?」
伴侶の、ほんの僅かな異常も見逃さないテオドールが華奢な肩を抱く。
「ごめん、ちょっと止めてくれるかな」
アンナリーナの声は硬い。
言われた通り馬車を止めたテオドールは俯いたアンナリーナの様子にオロオロする。
「誰かが私の結界に触れた」
テオドールさえゾッとする、怒りの篭った声。
まるで怨嗟の呪文の様なそれが続く。
「学院の寮の扉を誰かが開けたわ。
……無断で私の部屋に入ろうとしているみたい」
アンナリーナの本気の怒りは大男さえ恐れさせる。
「ちょっと様子を見てくる」
御者台から滑り降りたアンナリーナが馬車の中に消えていく。
場所が場所なだけに同行出来ないテオドールは、只々溜息するしかない。
そうしてアンナリーナはアラーニェを伴い、転移の陣を踏んだ。
アンナリーナたちが現れたのは清廉な空気の漂うシンプルな一室。
そこは【塔】の中のユングクヴィストの居室であった。
「ユングクヴィスト様」
突然、奥の扉を開けて研究室に入ってきたアンナリーナに、ちょうどひと休みしていたユングクヴィストが目を瞠る。
最近はもう、どのような事が起ころうと驚いたりしないのだが、このような登場の仕方は、はっきり言って心臓に悪い。
「リーナ……そなた、家出中ではなかったのか?」
「家出なんて人聞きが悪いですね。
ちょっと自分探しの旅に出ているだけですのに。
……そうそう、今日お邪魔したのは、誰かが私の結界に触れたからなのですが」
目がまったく笑っていない笑顔とは、それはそれは恐ろしいものだ。
「ユングクヴィスト様、申し訳ないのですが誰か人をやって、何があったのか確認していただけませんか?」
アンナリーナのプライベートな空間に侵食しようとするなどなんと大胆なのだろう。
ユングクヴィストは表の部屋から従者を呼んだ。
アンナリーナが王弟の怪我を治して目を付けられ、理不尽な “ 命令 ”に憤慨して飛び出したのと前後して、学院に季節外れの編入があった。
ほぼゴリ押しのその編入は、今アンナリーナが滞在している祖国の王女である。
それは授業の進行など意にも介していない傍若無人さで、その滞在中に生活する寮でも問題になるほど。
現に10日ほど経った今でも、未だ引越し作業は続いていた。
そんな当の本人、王女シモネッティーナが寮に到着した当日、自分の部屋番号が『2』で、他に『1』号室がある事に機嫌を損ねた。
「今現在この学院には、王族が1人も在学していないと聞いているわ。
それなのにどうして私の部屋より良い部屋が使われているの?!
抗議します! 今すぐ私に『1』号室を明け渡しなさい!」
寮監の老婦人に高圧的にまくし立てる様はとても王族には見えない見苦しさだ。
「シモネッティーナ様、『1』号室には現在居住している学院生が居ります。
彼女は今、学業の一貫で国外に出ておりますので連絡の取りようがないのです」
老婦人は安易な方に逃げを打ったようだ。
それが王女の、一層の怒りを買う。
「すぐに部屋を明け渡しなさい!
これ以上抵抗するなら国から正式な抗議を行います」
「しかし、彼女もまた正式な誓約を持ってして契約しているのです。
授業料とともに部屋の使用料、金貨2000枚も先日すでに支払われています」
相手側に瑕疵がない限り追い出す事は出来ない、老婦人はそう言っているのだが。
護衛の女騎士が老婦人を拘束し、お付きの侍女が寮監の証、合鍵の束を取り上げる。
腕力にモノを言わせた女騎士は乱暴に老婦人を押しやり、彼女は倒れてしまう。
同じ階で生活している貴族令嬢たちは、その様子を恐々と見ていた。
本日の御者、テオドールの横に座ったアンナリーナの身体がかすかに揺れた。
「っ!?」
「リーナ? どうした?」
伴侶の、ほんの僅かな異常も見逃さないテオドールが華奢な肩を抱く。
「ごめん、ちょっと止めてくれるかな」
アンナリーナの声は硬い。
言われた通り馬車を止めたテオドールは俯いたアンナリーナの様子にオロオロする。
「誰かが私の結界に触れた」
テオドールさえゾッとする、怒りの篭った声。
まるで怨嗟の呪文の様なそれが続く。
「学院の寮の扉を誰かが開けたわ。
……無断で私の部屋に入ろうとしているみたい」
アンナリーナの本気の怒りは大男さえ恐れさせる。
「ちょっと様子を見てくる」
御者台から滑り降りたアンナリーナが馬車の中に消えていく。
場所が場所なだけに同行出来ないテオドールは、只々溜息するしかない。
そうしてアンナリーナはアラーニェを伴い、転移の陣を踏んだ。
アンナリーナたちが現れたのは清廉な空気の漂うシンプルな一室。
そこは【塔】の中のユングクヴィストの居室であった。
「ユングクヴィスト様」
突然、奥の扉を開けて研究室に入ってきたアンナリーナに、ちょうどひと休みしていたユングクヴィストが目を瞠る。
最近はもう、どのような事が起ころうと驚いたりしないのだが、このような登場の仕方は、はっきり言って心臓に悪い。
「リーナ……そなた、家出中ではなかったのか?」
「家出なんて人聞きが悪いですね。
ちょっと自分探しの旅に出ているだけですのに。
……そうそう、今日お邪魔したのは、誰かが私の結界に触れたからなのですが」
目がまったく笑っていない笑顔とは、それはそれは恐ろしいものだ。
「ユングクヴィスト様、申し訳ないのですが誰か人をやって、何があったのか確認していただけませんか?」
アンナリーナのプライベートな空間に侵食しようとするなどなんと大胆なのだろう。
ユングクヴィストは表の部屋から従者を呼んだ。
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