魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

106『塔の賢者とアンナリーナ』

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 繰り返しになるが、この世界では薬師は貴重で特別扱いされる存在だ。
 ましてや【錬金薬師】の貴重さは群を抜いており、王族や貴族がこぞって縁を結びたがるもの。
 間違っても喧嘩を売る対象ではない。
 ましてやアンナリーナは未確定ながら【錬金医薬師】の可能性があるのだ。
 ユングクヴィストなどは確信しているのだが、それゆえに国としてはアンナリーナと事を構えたくないのだ。
 先日、浅慮な軍部が王弟との婚姻を無理強いし、アンナリーナを怒らせたところだ。
 王はすぐに軍部の “ 提案 ”を取り消し、火消しに走ったのだが怒り心頭のアンナリーナは学院を休学状態にして旅立ってしまった。
 ユングクヴィストだけには定期的に連絡が入るそうだが、国としては今静観している状態であった。

 そんななか寮で起きたトラブルは、国としては寝耳に水なわけである。
【錬金薬師】と他国の王女。
 どちらが優先されるか、わかりきった事である。



 ユングクヴィストの従者と共に動くためにアラーニェが退出していって、アンナリーナはアイテムバッグから茶器を取り出し、紅茶を淹れ始めた。

「ユングクヴィスト様、お昼は召し上がられましたか?」

 不摂生な師匠に、半ば確信して聞いてみた。

「いや……まだだった、かな」

 彼も何かに夢中になると寝食を忘れるタイプだ。

「いくら賢者と言えども人間なのですから、ちゃんと召し上がって下さいね」

 茶葉を蒸らしながら取り出したのはバスケットに詰められたサンドイッチだ。

「おお、これは美味そうじゃな」

 好々爺と化したユングクヴィストが早速手を出そうとしている。

「【洗浄】
 ユングクヴィスト様、手掴みされるなら清潔にせねばなりません」

 ゆで卵ときゅうりのサンドイッチを三角に折った紙ナプキンで包んで渡した。
 紅茶には砂糖をひとつだけ入れてかき混ぜてやる。

「ユングクヴィスト様、この度はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

「いや、あれはあちらが悪いであろう。王弟殿下も、臥せっている間の目の届かない時の事であったとしても自分の責任は否めないと、ずいぶん恐縮しておられた。できればそなたに直接謝罪したいと仰っていた」

 その言葉に嘘はないのだろう。
 だがアンナリーナは今暫し、政の関係者に近づきたくなかった。

「そのお気持ちだけで充分です。
 それと、殿下の予後はいかがですか?」

「うむ、今はもう普通に生活しておられる。
 歩行も以前と変わらず、腕の神経も異常ないようじゃ」

「よかったです。
 何度かテストをしていたのですが少し緊張しました」

 両下肢を膝上から失い、右手も同じ、それを再生させたポーションは、古から人が求め続けたものだろうか。
 そんな疑問をユングクヴィストは口にする。

「リーナよ、あれは【アムリタ】か?」

「ええ、いえ……
 正確には【劣化版アムリタ】です。
 どうしても素材が手に入らなくて代替の薬剤を使いました。
 それによってある程度効果が落ちています」

「やはり! 神の妙薬じゃったか」

「『劣化版』ですよ、ユングクヴィスト様」

 苦笑いしたアンナリーナはアイテムバッグから一本の瓶を取り出した。
 見るからに高価なクリスタルの瓶は華麗なカットが施されていて、光線の当たり具合により光り輝く。

「差し上げます。
 ……構成成分を調べても、調薬の仕方が特別なので再現出来ませんよ」

 それでも、それでも幾多の錬金薬師が憧れ続けた秘薬だ。
 ユングクヴィストは震える手を瓶に伸ばし、ようやく掌で包み込んだ。

「そうそう、国王陛下に殿下に使った【劣化版アムリタ】の代金をお願いしたいのです。
 今回は10本使いましたので金貨100万枚……ほかのポーション代はサービスしておきます」

 法外な金額に思えるが、四肢のうち三肢が欠損していたのだ。
 それだけでも、もしも失った手足が再生されるなら、金でどうにかなるものならばアンナリーナの元に集うものたちの数は予測できないほど多いだろう。

「ユングクヴィスト様、私は完全な【アムリタ】を作成する為に、その素材を探して旅をしているのです」

「リーナ、儂も出来うる限りの助力は惜しまぬ」

 ユングクヴィストはその目をギラギラさせてアンナリーナに近づいてくる。
 と、そこに。

「リーナ様、お待たせ致しました」

 ユングクヴィストの従者は詳しい事を掌握する為に残り、アラーニェが一報を持って戻って来たのだ。

「で、私の結界に触れたのは誰?」

「我々が現在滞在している国の王女が、リーナ様の部屋を明け渡せと騒いでおります。
 あろう事か寮監殿から鍵を奪い、お部屋の扉を開けた様子。
 もちろん結界に阻まれて中には入っておりませんが……いかが致しますか?」

 アンナリーナの眉尻が上がった。

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