魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

110『大使への宣告』

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 騒ぎに気づいた、ある貴族令嬢の侍女が寮監の部屋を訪れ、初めて寮監の老婦人の状態を見つけて、ようやく騒ぎになった。

 すぐに【塔】からユングクヴィストが呼ばれて、高位のポーションを使った治療を行い、凶事からいささか時間が経っていて出血の量が多かったため危険な状態だった彼女も無事、命を取り留めた。
 あとは失った血を補うため、アンナリーナ特製の増血剤と絶対安静が与えられた。

 意識の戻った寮監から、この度の一件の詳細を聞いた学院側と王宮はこのまま放置できないと判断し、先日も呼び出したばかりの大使を召還する。
 今回は正式な抗議と、犯人である女騎士の引き渡し、そして元凶である王女の我儘に対しての処分を課す事を宣言していたのだが、そこに新たな知らせがもたらされて、大使を含むそこにいた全員が唖然とした。


「もう一度、言ってもらえますか?」

 学院長と、王宮から代表としてやってきていた文官は顔を見合わせた。
 そして庶務部の事務長はもう一度、言葉を繰り返した。

「王女殿下が仰るには、もう部屋替えの件はよろしいそうです。
 従って、金貨2000枚も支払うおつもりはないと言う事です」

「いい加減にしまえ!」

 学院長が唾を飛ばして怒鳴った。
 今回、騒ぎを聞いたアンナリーナが要らぬトラブルを避けるために、支払い済みだった部屋代と引き換えに部屋を譲ったのだ。
 そうまでしてもらった挙句の、この仕打ち。
 ワナワナと怒りの隠せない学院長に、大使は許容範囲を超えている。

「すぐに、お国に連絡されて、此度の一件についてどう始末をつけられるか、ご相談願いたい」

 文官は冷ややかな目を大使に向けた。

「それと、国王陛下からのお達しです。
『今回対象となった生徒は【錬金薬師】たとえ相手が王女と言えど見下す相手ではない。
 この件は国として正式に抗議する』との事です」

 ただの王女の我儘が、一気に国家間の問題に発展しそうだ。



 大使は青黒い顔色で脂汗をかきながら公邸に戻ってきた。
 即座に魔導伝書鳥を使い、国に一報を送った。
【錬金薬師】に喧嘩を売るなど、とんでもない事だ。
 彼は震える手で詳細を記した手紙を書き、使者に預けた。
 大使は学院から戻ってきてから件の【錬金薬師】について情報を集めていた。そして、その相手が自分たちにとってどれほどたちが悪いか、思い知り、絶望していた。

「これは……下手をしたら戦になる」

 国王が側妃に望み、王弟が妻に迎えようとした女性だ。
 ただ、すでに伴侶を得ていたため話が進まなかっただけで、本来なら王族に囲い込まれていただろう相手なのだ。



 今、アンナリーナは学院から遠く離れた場所で、この国から出国するために馬車を走らせていた。

「エピたちの走力を持ってしてもあと2~3日はかかりそうだね。
 野営地に着いたらユングクヴィスト様のところに行ってくるよ」

「大丈夫か?」

 まさか、女騎士の剣によって怪我人が出ているとは思っていない。
 アンナリーナは気楽にお茶をする感覚で【塔】を訪れるつもりだった。

「うん、どうせ何にも食べてないだろうから、あの方……
 何か差し入れてくるよ」

「わかった」

 口数少ないテオドールは、そのままアンナリーナを抱き寄せた。
 手綱を操りながら身を寄せ合う。
 昼なお暗い、うっそうと茂った森の中を通る道だ。
 すでに陽が傾き始めるこの時間、肌寒くなってきていて、アンナリーナにはテオドールの身体の暖かさが心地よかった。

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