魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

135『アンナリーナの真意』

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「これのサンプルを某国のギルドにひとつだけ預けてあります。
 そこは先日、王都がスタンピートに襲われかけたばかりで、おそらくそう遠くない時期にまた襲撃があるでしょう」

 口にするにはかなり重たい内容なのだが、アンナリーナの言葉に悲嘆した様子はない。
 基本、他者に関して冷徹なアンナリーナなので、その分冷静な判断も出来る。

「これの売値は一個金貨10000枚です。今回は箱に入っている6個に関してはサンプルとして提供致しますが、そのかわり使用した感想と結果をレポートにまとめて下さい」

 どこまでも研究者寄りの思考にユングクヴィスト以外は唖然とするが、軍部の要である王弟は再び頭を下げ、箱を受け取った。

「まあ……こんなもの、使わずに済めばそれに越したことはないのですけどね。
 ここは、学院生である私の本拠地でありますし、何よりも図書館の本をまだ読破しておりませんし、禁書庫も然りなので」

 住民云々など欠片も意識していないところがアンナリーナらしい。
 だが、それはヒトは本以下だと言っているようなものなのだが。

「婚姻を無理強いすることがなければ、私は皆様の味方をすることに吝かではございませんよ」

 そう言ってアンナリーナは退出していった。




 アンナリーナの留守中も “ 猿穴 ”の討伐は続いていた。

「ただいま、みんな」

 馬車のステップを降り、テオドールを始め、セトやイジがいる穴に近づいていった。

「ああ、おかえり。王宮はどうだった?」

「今頃、上へ下への大騒ぎしてるんじゃない?」

 アンナリーナが落とした爆弾は殊の外大きすぎて、王やその側近だけで済む話ではない。有力な冒険者が国家間で引っ張りだこのなか、国内の軍事力だけでこの災難を乗り切らなくてはならないのた。

「さて、こっちはどんな具合かな?」

 正確な心臓の場所を教えておいたので、セトやイジたちの得物でも一撃で屠る事が出来ていた。
 一定量溜まると引っ張り出して、アイテムボックスに収納する……その繰り返しだった。

「狒々の割合が増えてきて、上位種もちらほら見るようになってきた。
 あと一息だと思う」

「うん、わかった。ありがとうセト」

「俺は街道を張っていたが、この国はまだ、別段慌てたところはないな。
 変異はこれからかもしれない」

 こちらは憂い顔のテオドールだ。

「じゃあ、ちょっと探りに行こうか。
 ……ひとりで行きたいところだけど、ダメだよね?」

 同時に3対の目に睨みつけられた。

「ちぇっ」

 とても淑女とは言えない、舌打ちをして見せて、アンナリーナは対案を出してみた。

「馬車はここに置いて、普通の旅人を装っていこうと思うの。
 乗り合い馬車で王都まで行ってみたら、それなりに情報が集まるんじゃないかな」

「それは……それでもひとりは駄目だ」

 テオドールの厳つい顔が、レベルアップして鬼神の如き憤怒の顔になっている。

「じゃあ……セトを連れて行くよ。
 今でもトカゲに変化できるよね?」

「問題ない」

 その場でアイデクセに変化して見せたセトは、素早くアンナリーナの脚を駆け上がって、その肩に落ち着いた。

「ちょっと待て!
 まさかこれからすぐに行くんじゃないだろうな?」

「え? 駄目?」

「あたりまえだろうが。
 第一、この【猿穴】を放って行くつもりか?」

 この後、懇々と説教されてこの日の出発はなくなった。

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