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第四章
134『王宮にて』
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ヤン・ソーサラスにプレゼンした数日後、アンナリーナは学院のユングクヴィストの元にいた。
「ユングクヴィスト様、お久しぶりでございます。
今日はお願いがあって参りました」
「そなたが願いとは、珍しい。
儂に出来ることならよいのだが」
「……陛下、もしくは大公閣下に御目通りを。ユングクヴィスト様も同行をお願いします」
「謁見の申し込みか、先触れを出せば良いのか?」
「はい」
ユングクヴィストは懐から紙を取り出し、なにごと呟いた。
すると紙が鳥型に変化し、その手から飛び立っていく。
「緊急連絡用の紙鳥じゃ。
さて、馬車の支度ができるまで、一服しようかの」
アンナリーナは、こういった連絡用の魔法を始めて見てびっくりしていたが、元々ユングクヴィストオリジナルの魔法なのだ。知らなくても不思議ではない。
「リーナよ。茶を所望じゃ」
アンナリーナは今、優雅にカーテシーをして、国王ライオネルの前にいた。
突然の面会希望だったにもかかわらず、快く受け入れてもらえただけでなく、そこには大公やエレアント公爵、それに例の王弟殿下の姿もあった。
「リーナ、久しいの。息災にしておったか?」
「はい、おかげさまでこの通り。
不義理をしていて申し訳ございません」
久しぶりの、お気に入りの臣下の訪問に、ライオネルはご機嫌だった。
だがそれはすぐに冷や水を浴びせられることとなる。
「時間が惜しいので率直に言わせていただきます。
その前に公爵様、最近、魔獣絡みで異変はございませんでしたか?」
「活動が活発になっているとは、報告されてきている」
突然話題を振られ、エレアント公爵はびっくりしていたが、アンナリーナは続けた。
「……活発、ですか。
先日、私がいたクロンバールやその隣国ではダンジョンやスタンピートが発生しています。
これは大陸全体の魔素の異常に原因があって、これからも広がると私は思っています」
私的な謁見の場が、途端に緊張に包まれた。
ライオネルは目を見開き、思わず立ち上がっている。
「クロンバールではダンジョン穴から魔獣が湧き、近隣の村々を飲み込んで街に向かっていました。
王都の近くでも魔獣の襲撃があったようです」
ダンジョン穴以外は、アンナリーナの仕業でもあったのだが。
「その隣国でもスタンピートが発生していました。
クロンバール共々小規模でしたが、おそらく今でも湧き続けている事でしょう」
今度は大公とエレアント公爵が目配せをしていた。
その横で王弟の従者が急ぎ足で部屋を出ていく。
「スタンピートの発生を抑制する方法はあるのです。でもこれは運しだいなわけで……ダンジョン穴を発見した場合、溢れる前に湧いてくる魔獣をすべて討伐すれば、そのダンジョン穴は枯れます。
私は今まで2つのダンジョン穴を潰しましたが、おそらくAランクの冒険者パーティが2~3あれば十分でしょう」
「リーナ殿、情報を感謝する」
王弟が頭を下げた。
それは多分に、例の件も含んでいるのだろう。アンナリーナは素直に頷いておいた。
それから周りを見回すと、最初はいなかった従者や文官、軍事部門の将などたちが集まりつつある。
アンナリーナはユングクヴィストと視線を交わし、そしてアイテムバッグから “ それ ”を取り出した。
「何じゃ? リーナ」
ユングクヴィストすら怪訝そうな表情で箱を見つめている。
アンナリーナはそっと蓋を開けた。と同時に特徴的な匂いが漂っていく。
「香?」
この中で唯一、魔獣除けの香の存在を知っている王弟が、打ち合わせ途中だった将官の話を遮ってこちらに向かってくる。
「はい。
この【魔獣除けの香】は最近やっと制作に成功した効果の高いものです。
特殊な素材と特別な製法で、数は作れませんが、これに火をつけて魔獣の群れに投げ込むと、一時的ですが撃退することが出来ます。
効果は5日ほどは保つと思います」
アンナリーナの言葉に周りはシンとなった。
「ユングクヴィスト様、お久しぶりでございます。
今日はお願いがあって参りました」
「そなたが願いとは、珍しい。
儂に出来ることならよいのだが」
「……陛下、もしくは大公閣下に御目通りを。ユングクヴィスト様も同行をお願いします」
「謁見の申し込みか、先触れを出せば良いのか?」
「はい」
ユングクヴィストは懐から紙を取り出し、なにごと呟いた。
すると紙が鳥型に変化し、その手から飛び立っていく。
「緊急連絡用の紙鳥じゃ。
さて、馬車の支度ができるまで、一服しようかの」
アンナリーナは、こういった連絡用の魔法を始めて見てびっくりしていたが、元々ユングクヴィストオリジナルの魔法なのだ。知らなくても不思議ではない。
「リーナよ。茶を所望じゃ」
アンナリーナは今、優雅にカーテシーをして、国王ライオネルの前にいた。
突然の面会希望だったにもかかわらず、快く受け入れてもらえただけでなく、そこには大公やエレアント公爵、それに例の王弟殿下の姿もあった。
「リーナ、久しいの。息災にしておったか?」
「はい、おかげさまでこの通り。
不義理をしていて申し訳ございません」
久しぶりの、お気に入りの臣下の訪問に、ライオネルはご機嫌だった。
だがそれはすぐに冷や水を浴びせられることとなる。
「時間が惜しいので率直に言わせていただきます。
その前に公爵様、最近、魔獣絡みで異変はございませんでしたか?」
「活動が活発になっているとは、報告されてきている」
突然話題を振られ、エレアント公爵はびっくりしていたが、アンナリーナは続けた。
「……活発、ですか。
先日、私がいたクロンバールやその隣国ではダンジョンやスタンピートが発生しています。
これは大陸全体の魔素の異常に原因があって、これからも広がると私は思っています」
私的な謁見の場が、途端に緊張に包まれた。
ライオネルは目を見開き、思わず立ち上がっている。
「クロンバールではダンジョン穴から魔獣が湧き、近隣の村々を飲み込んで街に向かっていました。
王都の近くでも魔獣の襲撃があったようです」
ダンジョン穴以外は、アンナリーナの仕業でもあったのだが。
「その隣国でもスタンピートが発生していました。
クロンバール共々小規模でしたが、おそらく今でも湧き続けている事でしょう」
今度は大公とエレアント公爵が目配せをしていた。
その横で王弟の従者が急ぎ足で部屋を出ていく。
「スタンピートの発生を抑制する方法はあるのです。でもこれは運しだいなわけで……ダンジョン穴を発見した場合、溢れる前に湧いてくる魔獣をすべて討伐すれば、そのダンジョン穴は枯れます。
私は今まで2つのダンジョン穴を潰しましたが、おそらくAランクの冒険者パーティが2~3あれば十分でしょう」
「リーナ殿、情報を感謝する」
王弟が頭を下げた。
それは多分に、例の件も含んでいるのだろう。アンナリーナは素直に頷いておいた。
それから周りを見回すと、最初はいなかった従者や文官、軍事部門の将などたちが集まりつつある。
アンナリーナはユングクヴィストと視線を交わし、そしてアイテムバッグから “ それ ”を取り出した。
「何じゃ? リーナ」
ユングクヴィストすら怪訝そうな表情で箱を見つめている。
アンナリーナはそっと蓋を開けた。と同時に特徴的な匂いが漂っていく。
「香?」
この中で唯一、魔獣除けの香の存在を知っている王弟が、打ち合わせ途中だった将官の話を遮ってこちらに向かってくる。
「はい。
この【魔獣除けの香】は最近やっと制作に成功した効果の高いものです。
特殊な素材と特別な製法で、数は作れませんが、これに火をつけて魔獣の群れに投げ込むと、一時的ですが撃退することが出来ます。
効果は5日ほどは保つと思います」
アンナリーナの言葉に周りはシンとなった。
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