魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

171『学研都市からの旅立ち』

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 早朝の朝靄のなか、馬車の駅には冒険者たちが集まっていた。

「おはようございます」

 そのなかの紅一点、アンナリーナがテオドールを伴って姿を現した。
 テオドールの手には2頭のエピオルスの手綱が握られている。
 これらは昨日、事前に登録されたアンナリーナの召喚獣である。

「これで全員揃ったな。忘れ物はないな?」

 今回の責任者は御者のダマスクだ。
 そして乗り合い馬車を借り切ったバルトリが依頼主で、後の冒険者全員が護衛となる。
 そこにアンナリーナとテオドールが加わり、総員12名がアシードに向かう。

「まず最初は、私たち2人がエピオルスに乗って周辺を監視します。
 後部は皆さんでお願いします」

 乗り合い馬車の護衛に慣れている連中が揃っていることで、頷いたマルセルたちが後ろの、水の入った樽の横に陣取った。

「では、出発……」

「待って下さい!!」

 ダマスクが御者台に上がって号令をかけようとしたところで、靄の中から大声がして、見覚えのある姿が現れた。

「串焼き屋さん?!」

 アンナリーナがエピオルスから降り、駆け寄ると、串焼き屋の主人が息を切らしながら、アンナリーナにはひと抱えもあるほどの包みを渡してきた。

「本当に、嬢ちゃんにはどれほど感謝してもしきれねぇ。
 これは今さっき焼いてきた串焼きだ。
 持っていってくれ」

 結局、アンナリーナにはわずかな数しか手に入れられなかった串焼きを、店主はその恩義に感じ入って持ってきたのだ。

「それと、これも持っていってくんな」

 今度こそ持ちきれない、テオドールでさえも重さを感じそうな瓶である。

「この中には串焼きのタレが入っている。これで串焼きを作って焼いてくんな」

「え? いいの?」

「あたりまえだよ。恩人の嬢ちゃんに十分な礼ができなかった。
 このくらい何でもないさ」

 それでも、タレは串焼き屋としての生命線である。

「嬢ちゃん、また近くまで来たら寄ってくんな。それまでに精進してもっと美味い串焼きを作っておくからな」

「ありがとうございます」

 串焼き屋と別れの挨拶を交わし、今度こそダマスクの号令で馬車が動き出した。
 本来通り過ぎるはずの町に約10日滞在して、出会いと成り行きから南部の港町へと向かうことになったアンナリーナたち。
 その旅はひと月はかかると言う。


 乗り合い馬車の大きな車体の左右に分かれて、エピオルスを走らせていたふたりは、常に念話を使って会話していた。

『熊さん、昼休憩はどんな具合?』

 先ほどアンナリーナが串焼き屋と遣り取りしていた時に、ダマスクと最終確認していたテオドールは地図を見ていた。

『野営地でも中継地でもない、街道沿いの空き地だが、よく馬車が休憩する場所があるそうだ。
 一応そこで予定しているそうだが、何か?』

『ううん、昼食の準備があるから聞いてみただけ。
 それなら簡単なスープが作れるね。
 最悪、馬車を走らせたままも考えていたから……サンドイッチは十分用意してるし』

 十分な休息をとって早起きしたアンナリーナは、台所の片隅を借りてサンドイッチを作って来ていた。

『美味い食事は心を豊かにするからな。気力も充実するし、何よりも凡ミスも減る。
 連中は一応顔見知りなようだが、人間関係だってギスギスしない方がいいからな』

『アンソニーにも協力を頼んであるから、楽しみにしてよ』

 エピオルスの鞍上で、テオドールは微笑んだ。

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