異世界生物専門医アレクサンダー=ミルフィエ

耄碌狸翁

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始まり:白く、毛むくじゃらで

視点:サシャ

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 誰か、誰か助けて。
 僕がいる自室で、いきなり大きな音が聞こえたと思ったら(なのに僕には傷一つついていない)煙が立っていたんだ。「これはまずい」って咳き込みながら逃げようと一歩踏み込んだら、知らない生き物がいたんだ。そいつが今、僕の目の前にいるんだ。
 白く毛むくじゃらで、怖いことに二つの赤い目がギラギラと光っている。腰には、棘が並んだ尻尾が生えてて……あの尻尾で、鞭のように攻撃してくるのかな、当たったらひとたまりもないかも。しかも僕らのように二足歩行できるらしい。
 ──こっちに近づいてくる、どうしよう。ゆっくりと動かすあの足、お腹をえぐれるほどの大きな鉤爪かぎづめがあるぞ、どうしよう。しまった、すみに追いやられた、どうしようどうしよう。そうだ僕には自慢の術式ノールがあるんだこれを使ってどうにか倒せないだろうかいやいや倒すんだ倒さなきゃいけないんだそうでもしないとご主人様たちに危険が及んじゃう

願うは来る、荒びたる風エスタムヴェントス・グランコーツ!」

 ……。
 …………。
 ………………嘘だ、けるだなんて。

 逃げ場がない。──ジリジリと、近づいてくる音が聞こえる。目の光も、さっきより強くなった気がする。やめてくれ、その手で引っ掻かれたら僕は
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