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12かぼ!狩猟大会
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「かぼパン、イチゴ飴食べすぎじゃない?」
「な、何の事だ」
「バレてんのよ。口の周り」
最近イチゴ飴にハマっているかぼパンはハッと口元に手を当てた。相変わらず素直すぎる。
「引っかかった~」
「ぬぅううう!」
背を向けて悔しそうなプンプン歩きが可愛すぎ。
今日は皆で狩猟大会!
かぼパンは身体が子供なのでさすがに出場は出来ないけど、毎年やっている王室主催のイベントで王として賞品をあげたりするらしい。
森林に到着し、主催者席に移動すると森の中とは思えないほど多くの馬車や人、馬と狩猟犬で大賑わいだった。
「すごーい!」
「だろう!国で1番大きな大会だからな。優勝賞品も豪華なんだぞ。今年は空の雫と呼ばれる青い宝石だ」
かぼパンが箱を開けて、青くて美しい雫形の宝石を得意げに見せてくれた。コロンとした雫形でかなり高そう。
そして、空を閉じ込めたみたいに綺麗!
「わぁ!この青、かぼパンの瞳みたいに綺麗だね」
「急に何を言い出すんだ!」
褒められると思っていなかったのか、顔を真っ赤に染めたかぼパン。
あまりの可愛さについ頬をツンツン。
「可愛い奴め」
「可愛いと言うな、ツンツンするなっ!いいか、他の人の前では陛下と呼ぶんだぞ!」
プンプンしながら宝石を箱にしまうと、参加貴族が続々と挨拶にやって来る。その中にはピンクのドレスを着たリーリンの姿もあった。
「ナナと言いましたかしら?またあなた陛下と一緒に……」
「挨拶が終わったら早く貴賓席に行ってくれ」
何か言いたげだったが、追い返すようにかぼパンがパッパと手を振ると、リーリンは不服そうに私を睨み貴賓席へと消えていった。
「いいか、ベビーシッターと言う肩書はあの令嬢にだけだぞ。僕は子供じゃないからな」
「子供だけどねー」
「見た目だけだ!」
そんな事を話していたら始まった狩猟大会。
二階建くらいの高さの観賞用の塔に登り、上から見学。
弓に槍に銃にと思い思いの武器を持ち、犬と一緒に追い回している。
「どれどれ、皆張り切っているな」
かぼパンはご満悦の様子だけど、正直こう言うのは参加してなんぼよね。
もっと貴族同士殺伐とした空気の中で行われるイメージだったけど、意外と和やかな雰囲気。
狩られた獲物が並べられていくのを皆お喋りしながら見ている。
わぁっと一際歓声が上がったのは4メートルはありそうな巨体のバイソン。背中に何本も弓矢と槍が刺さっている。実際に見ると壮絶だ。
「今年の優勝はバイソンを仕留めた奴に決定だな。栄光を掴んだのは誰だ?」
ワクワクしたかぼパンの声が聞こえたかのように、審判らしき人が塔の下に来て叫んだ。
「陛下、バイソンを仕留めましたカナル公爵家のご子息、カナル・ディーン・リュスト様が優勝でございます」
「リュストだったか。素晴らしいぞ!」
かぼパンは小さな手で拍手をして、塔から降り始める。
拍手までも可愛い!と、デレた私は抱っこしようとしたが人前だからと断固拒否。
結構急な階段なのに、いつも降りていると誰の手も取らず1人で下り始めた。
低い塔だけど、心配で見ていると降りきった所で気が抜けたのかバランスを崩し転んでしまった。
「かぼパン!」
駆け寄り身体を支えると拍子に口から飛び出した赤い塊。まさか……
「まさか血?」
青ざめた私とかぼパンは顔を見合わせる。吐血なんて普通じゃない。
「医者!医者を呼んで!」
「はいっ」
私が叫ぶとランが血相を変えて赤い塊をティッシュに包んだ。
「すぐに医者を呼んで来てくれ!」
ランが護衛にティッシュを差し出すと、うけとり慌てて医者を呼びに行った。私はかぼパンのおでこに手を当てる。
「熱はないわね。まだ吐きそうだったりする?」
「大丈夫だ」
「でも吐血したのは事実だから……」
重い病気だったらどうしよう。
かぼパンが病に苦しむ姿なんて、想像するのも辛い。
「悪い病気だったら……後継を早く作れと言っていたお祖母様の言葉が正しかったようだな」
「かぼパン……」
「陛下……」
項垂れたかぼパンを慰めつつ、医者はまだかとテントに顔を向けたその時、耳をつんざくほどの叫び声が上がった。
狩場に並べられていたバイソンが起き上がったのだ。
「キャー!」
「逃げろー!」
起き上がったバイソンは逃げ惑う人混みの中なんと私達の方に向かって来た。
「陛下ーっ!お逃げ下さいっ!」
聞こえてくる叫び。私は咄嗟にかぼパンを抱き上げランに渡した。
「逃げて!」
こちらに突進して来てはいるが、バイソンは深傷を負っているからかそうスピードは速くない。
かぼパンは絶対に守る。その一心で周りの音が聞こえない程集中した。
バイソンの動きがスローモーションのように見える——
今だ!
飛び上がり、子供の頃から父に教え込まれ1番得意だった飛び後ろ回し蹴りをバイソンの脳天目掛けて放つ。
動きが止まったバイソンはそのままゆっくりと横に倒れた。
ドサッ。
音が戻った瞬間、わあっ!と歓声が聞こえた。
そしてかぼパンの泣きそうな叫びも。
「名ばかりーっ!」
ランの腕から降りて走ってくるかぼパン。ああっ、なんて愛らしい!
私もかぼパンの元へと走る。
「何をやってるんだ!危ないだろうっ!」
私はしゃがんで安心させるようにかぼパンの頭を撫でる。
「無事で良かった」
「そ、そんな事を言われたいんじゃないっ!僕は危ないだろうって言ってるんだ!素手でバイソンに向かって行くなんて正気じゃない!何かあったらどうするんだ!」
心配しすぎて頭に来たのか、顔を真っ赤にして叫んでいる。そうプンプンしなくても。
「かぼパンを守れたんだからいいじゃない」
「うう……」
今にも泣きそうな、悔しそうな顔のかぼパンにきゅんとくる。
「大丈夫だよ?何があっても私が守るから」
「僕は……守られ……」
しょぼんとしながらかぼパンが何かを呟いた時、医者が走って来た。
「お待たせしました!陛下、先ほどの赤い塊は血では無くいちごの塊でした」
「いちご……」
「はい、いちごは一気に食べすぎると胃腸によくありませんし、嘔吐も引き起こしますから食べ過ぎに注意してください」
薬を処方して医者が去ると私はニヤニヤ。そんな私の顔を見るかぼパンは少し恥ずかしそう。
「またからかおうとしてるんだろ!」
「ううん、悪い病気じゃ無くてよかったと思ったら顔がニヤケちゃって。元気で可愛いかぼパンが1番好きだから」
何故か驚いたように目を開き固まったかぼパン。どうしたんだ?
不思議に思っていると、倒れたバイソンに集まっていた人々の中からリーリンが前に出てこちらを指差した。
すると審判が人の山から飛び出し、私のところに走って来た。
「さぁ、お立ちください!」
「はぁ」
何事かと立ち上がると、手を取られ上に上げられる。
「優勝、ベビーシッターのナナ様!」
優勝した。
「な、何の事だ」
「バレてんのよ。口の周り」
最近イチゴ飴にハマっているかぼパンはハッと口元に手を当てた。相変わらず素直すぎる。
「引っかかった~」
「ぬぅううう!」
背を向けて悔しそうなプンプン歩きが可愛すぎ。
今日は皆で狩猟大会!
かぼパンは身体が子供なのでさすがに出場は出来ないけど、毎年やっている王室主催のイベントで王として賞品をあげたりするらしい。
森林に到着し、主催者席に移動すると森の中とは思えないほど多くの馬車や人、馬と狩猟犬で大賑わいだった。
「すごーい!」
「だろう!国で1番大きな大会だからな。優勝賞品も豪華なんだぞ。今年は空の雫と呼ばれる青い宝石だ」
かぼパンが箱を開けて、青くて美しい雫形の宝石を得意げに見せてくれた。コロンとした雫形でかなり高そう。
そして、空を閉じ込めたみたいに綺麗!
「わぁ!この青、かぼパンの瞳みたいに綺麗だね」
「急に何を言い出すんだ!」
褒められると思っていなかったのか、顔を真っ赤に染めたかぼパン。
あまりの可愛さについ頬をツンツン。
「可愛い奴め」
「可愛いと言うな、ツンツンするなっ!いいか、他の人の前では陛下と呼ぶんだぞ!」
プンプンしながら宝石を箱にしまうと、参加貴族が続々と挨拶にやって来る。その中にはピンクのドレスを着たリーリンの姿もあった。
「ナナと言いましたかしら?またあなた陛下と一緒に……」
「挨拶が終わったら早く貴賓席に行ってくれ」
何か言いたげだったが、追い返すようにかぼパンがパッパと手を振ると、リーリンは不服そうに私を睨み貴賓席へと消えていった。
「いいか、ベビーシッターと言う肩書はあの令嬢にだけだぞ。僕は子供じゃないからな」
「子供だけどねー」
「見た目だけだ!」
そんな事を話していたら始まった狩猟大会。
二階建くらいの高さの観賞用の塔に登り、上から見学。
弓に槍に銃にと思い思いの武器を持ち、犬と一緒に追い回している。
「どれどれ、皆張り切っているな」
かぼパンはご満悦の様子だけど、正直こう言うのは参加してなんぼよね。
もっと貴族同士殺伐とした空気の中で行われるイメージだったけど、意外と和やかな雰囲気。
狩られた獲物が並べられていくのを皆お喋りしながら見ている。
わぁっと一際歓声が上がったのは4メートルはありそうな巨体のバイソン。背中に何本も弓矢と槍が刺さっている。実際に見ると壮絶だ。
「今年の優勝はバイソンを仕留めた奴に決定だな。栄光を掴んだのは誰だ?」
ワクワクしたかぼパンの声が聞こえたかのように、審判らしき人が塔の下に来て叫んだ。
「陛下、バイソンを仕留めましたカナル公爵家のご子息、カナル・ディーン・リュスト様が優勝でございます」
「リュストだったか。素晴らしいぞ!」
かぼパンは小さな手で拍手をして、塔から降り始める。
拍手までも可愛い!と、デレた私は抱っこしようとしたが人前だからと断固拒否。
結構急な階段なのに、いつも降りていると誰の手も取らず1人で下り始めた。
低い塔だけど、心配で見ていると降りきった所で気が抜けたのかバランスを崩し転んでしまった。
「かぼパン!」
駆け寄り身体を支えると拍子に口から飛び出した赤い塊。まさか……
「まさか血?」
青ざめた私とかぼパンは顔を見合わせる。吐血なんて普通じゃない。
「医者!医者を呼んで!」
「はいっ」
私が叫ぶとランが血相を変えて赤い塊をティッシュに包んだ。
「すぐに医者を呼んで来てくれ!」
ランが護衛にティッシュを差し出すと、うけとり慌てて医者を呼びに行った。私はかぼパンのおでこに手を当てる。
「熱はないわね。まだ吐きそうだったりする?」
「大丈夫だ」
「でも吐血したのは事実だから……」
重い病気だったらどうしよう。
かぼパンが病に苦しむ姿なんて、想像するのも辛い。
「悪い病気だったら……後継を早く作れと言っていたお祖母様の言葉が正しかったようだな」
「かぼパン……」
「陛下……」
項垂れたかぼパンを慰めつつ、医者はまだかとテントに顔を向けたその時、耳をつんざくほどの叫び声が上がった。
狩場に並べられていたバイソンが起き上がったのだ。
「キャー!」
「逃げろー!」
起き上がったバイソンは逃げ惑う人混みの中なんと私達の方に向かって来た。
「陛下ーっ!お逃げ下さいっ!」
聞こえてくる叫び。私は咄嗟にかぼパンを抱き上げランに渡した。
「逃げて!」
こちらに突進して来てはいるが、バイソンは深傷を負っているからかそうスピードは速くない。
かぼパンは絶対に守る。その一心で周りの音が聞こえない程集中した。
バイソンの動きがスローモーションのように見える——
今だ!
飛び上がり、子供の頃から父に教え込まれ1番得意だった飛び後ろ回し蹴りをバイソンの脳天目掛けて放つ。
動きが止まったバイソンはそのままゆっくりと横に倒れた。
ドサッ。
音が戻った瞬間、わあっ!と歓声が聞こえた。
そしてかぼパンの泣きそうな叫びも。
「名ばかりーっ!」
ランの腕から降りて走ってくるかぼパン。ああっ、なんて愛らしい!
私もかぼパンの元へと走る。
「何をやってるんだ!危ないだろうっ!」
私はしゃがんで安心させるようにかぼパンの頭を撫でる。
「無事で良かった」
「そ、そんな事を言われたいんじゃないっ!僕は危ないだろうって言ってるんだ!素手でバイソンに向かって行くなんて正気じゃない!何かあったらどうするんだ!」
心配しすぎて頭に来たのか、顔を真っ赤にして叫んでいる。そうプンプンしなくても。
「かぼパンを守れたんだからいいじゃない」
「うう……」
今にも泣きそうな、悔しそうな顔のかぼパンにきゅんとくる。
「大丈夫だよ?何があっても私が守るから」
「僕は……守られ……」
しょぼんとしながらかぼパンが何かを呟いた時、医者が走って来た。
「お待たせしました!陛下、先ほどの赤い塊は血では無くいちごの塊でした」
「いちご……」
「はい、いちごは一気に食べすぎると胃腸によくありませんし、嘔吐も引き起こしますから食べ過ぎに注意してください」
薬を処方して医者が去ると私はニヤニヤ。そんな私の顔を見るかぼパンは少し恥ずかしそう。
「またからかおうとしてるんだろ!」
「ううん、悪い病気じゃ無くてよかったと思ったら顔がニヤケちゃって。元気で可愛いかぼパンが1番好きだから」
何故か驚いたように目を開き固まったかぼパン。どうしたんだ?
不思議に思っていると、倒れたバイソンに集まっていた人々の中からリーリンが前に出てこちらを指差した。
すると審判が人の山から飛び出し、私のところに走って来た。
「さぁ、お立ちください!」
「はぁ」
何事かと立ち上がると、手を取られ上に上げられる。
「優勝、ベビーシッターのナナ様!」
優勝した。
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