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14かぼ!リュスト登場
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「ベビーシッター様、どうでしょう、私の息子と会ってみてはくれませんかな?」
また来た。これで何度目?
「イケメン?」
「イケメンとはハンサムと言う意味でしたな?勿論私に似てイケメンに育っておりまして」
狩猟大会でベビーシッターナナで表彰されたせいで、皆からベビーシッター様と呼ばれるようになってしまった。
かぼパンは私をベビーシッターじゃないと何度も説明していたが、諦めたらしくもう何も言わない。
そして何故かこのように私に息子を紹介したがる貴族が急増。
「やめておけ、そやつの息子は確かにイケメンだが泣かせた女は1人や2人じゃない」
そしてこうやってかぼパンが正論で反対してくるまでがセット。
うん、いくらイケメンでも遊び人はねぇ……
「だからこそなんです!ベビーシッター様のようにお強い方が家に来てくださればもう馬鹿な事はしないでしょう!お願いしますぅう!息子の性根を叩き直してくれぇえ」
私はしつけ係か。
「しつけは陛下で手いっぱいなんですよねー」
「だから誤解されるような事は言うなと……」
かぼパンが苦言をこぼそうとした時、封筒が乗せられたトレイを持った執事が入って来た。
「陛下、またベビーシッター様にお手紙が届いております」
かぼパンの瞳が見極めるべくキラリと光る。
トレイに乗せられた沢山の封筒は私宛。これも狩猟大会効果である。
かぼパンはトレイを受け取ると、1通1通送り主を確認し始める。
「こいつはだめだ。こいつもダメ。これは論外」
いきなり手紙を送って来られてもどこの誰だか分からないので私が選別を頼んだんだけど、いつも1通も残らない。
「それ何見て判断してんの?」
「派閥、家柄、人柄……こいつもダメ」
ブツブツ言いつつ、最後の薄ピンク色の封筒を手にした瞬間、ビクっと止まった。
「これは……どっちだ?」
「だれ?」
「カナル公爵家の嫡男だ。名ばかりの前に優勝だと言われていた」
ああ、最初にバイソンを倒していた人だ。
「どっちだってどう言う意味?」
「内容が優勝を奪われた事に関してなのか、他の者と同じで名ばかりに興味を持っているのか……」
「公爵家の後継でしょ?そんな地位の高い人、普通に考えて優勝を奪われた件じゃない?」
私はかぼパンの手から手紙を取り封を開けた。
「なになに?えーと、今度2人でお会いしたいって!やっぱり賞品の件かな」
「いや……裕福なカナル公爵家が賞品を欲しがるだろうか?」
「わかんないから会ってみるよ!一個しかないとは言え、私が賞品貰うのは気が引けるなぁってずっと思ってたから!」
「ううむ」
顎に手を当て訝しげな表情で唸ったかぼパン。唸り声も仕草も可愛い。
自然と頭に手が伸びる。
「撫でるなっ」
シャーッ!と猫のように拒否されたけど、毎度可愛すぎて頭も撫でたくなるってものよ。
頬にスリスリしないだけマシだと思って欲しい。
と言うわけで、日時を決めてサクッとリュストさんとやらと応接室でご面会。
狩猟大会では見ていなかったけど、淡いピンク髪のかなりのイケメン男子。多分私より少し歳下くらいだろう。
「賞品貰ってしまってすみません。私も気にしていたんです」
会ってすぐ謝るとリュストはキョトンとした顔をした。
「空の雫の事?」
「はい。その事ですよね?」
「いや、面白そうだからお会いしてみたいと思っただけだけど……あ、じゃあ賞品の代わりに1日僕に付き合ってくれない?」
最後にバイソンを倒したのは私だけど、あんな巨体、このお坊ちゃんが深傷を負わせてくれていなければ絶対倒せなかった。
「では、それでいいなら」
「よし、じゃあ行こう、ナナ!」
いきなり呼び捨てなのは妹のリーリンの影響か?馬車に乗り込み軽いトーク。
「面白そうって言われたの初めて。面白みのない女で有名だったから……」
「ブブブッ!」
どう言うわけか私の話を楽しそうに聞いてくれるし、お偉いさんの息子とは思えないほど気取ってないし良い子である。
スッカリ意気投合した私達は街を練り歩き色々な物を見て回った。
以前ランとデートの時に来たスイーツ店に入り席に着くと、空の雫を取り出す。手のひらにコロンと乗るサイズの綺麗な宝石だ。
「本当に私がもらっていいの?」
「うん、それはナナが持ってて」
「ありがとう!陛下の瞳の色に似てるから凄く気に入ってたんだ」
「確かに陛下の瞳に似ているよね……そうだ、スイーツを食べ終えたら宝石をアクセサリーに加工してくれるお店に行ってみる?魔法を使える店主のところに行けばすぐに作ってくれるよ」
「行く行くっ!」
二つ返事とはこの事。
このまま持ち歩くのは無くしそうで怖かったんだよね。
普段使えるアクセサリー案をリュストと話し合っていると「楽しそうだな」と、聞き慣れた声が聞こえた。見るとランとかぼパン。
「陛下、お会いできて光栄です」
「かぼパン!」
挨拶をしたリュストに被った、かぼパン呼び。人前では陛下と呼ぶ約束だったのについ嬉しくて……
「陛下に会えて嬉しくてつい頭にあった言葉を口走ってしまったわ!オホホ」
「あはは!ナナは本当に面白いな」
リュストが笑うとかぼパンが眉を寄せた。
「ナナ……?」
「私の本名だけど、もしかして忘れたの?」
問いかけるとミニ陛下は口を思い切りへの字に結んだ。心なしか瞳も少し潤んだ気がする。
何が涙腺を刺激したのか分からないけどこの表情、胸がきゅんと締め付けられる。
可愛すぎるっ。慰めたい!母性本能ぎゅんぎゅんモードに突入した私は抱き上げて膝に座らせた。
ああ、すぐ側にかぼパンがいるだけでなんかしっくりすると言うか、落ち着くわ。
「本当にベビーシッターなんだね」
リュストの一言にハッとなる。
しまった。またつい本能で行動してしまった。人前でするなと確実に怒られる。
「あはは、今日は休日でした」
私はかぼパンを抱き上げてランに渡す。
「ラン、陛下をお願いしますね」
「承知致しました。休日をお楽しみください」
かぼパンとランは他の席に座り、私達はスイーツを食べ終えると2人に挨拶してすぐに店を出たのだった——
また来た。これで何度目?
「イケメン?」
「イケメンとはハンサムと言う意味でしたな?勿論私に似てイケメンに育っておりまして」
狩猟大会でベビーシッターナナで表彰されたせいで、皆からベビーシッター様と呼ばれるようになってしまった。
かぼパンは私をベビーシッターじゃないと何度も説明していたが、諦めたらしくもう何も言わない。
そして何故かこのように私に息子を紹介したがる貴族が急増。
「やめておけ、そやつの息子は確かにイケメンだが泣かせた女は1人や2人じゃない」
そしてこうやってかぼパンが正論で反対してくるまでがセット。
うん、いくらイケメンでも遊び人はねぇ……
「だからこそなんです!ベビーシッター様のようにお強い方が家に来てくださればもう馬鹿な事はしないでしょう!お願いしますぅう!息子の性根を叩き直してくれぇえ」
私はしつけ係か。
「しつけは陛下で手いっぱいなんですよねー」
「だから誤解されるような事は言うなと……」
かぼパンが苦言をこぼそうとした時、封筒が乗せられたトレイを持った執事が入って来た。
「陛下、またベビーシッター様にお手紙が届いております」
かぼパンの瞳が見極めるべくキラリと光る。
トレイに乗せられた沢山の封筒は私宛。これも狩猟大会効果である。
かぼパンはトレイを受け取ると、1通1通送り主を確認し始める。
「こいつはだめだ。こいつもダメ。これは論外」
いきなり手紙を送って来られてもどこの誰だか分からないので私が選別を頼んだんだけど、いつも1通も残らない。
「それ何見て判断してんの?」
「派閥、家柄、人柄……こいつもダメ」
ブツブツ言いつつ、最後の薄ピンク色の封筒を手にした瞬間、ビクっと止まった。
「これは……どっちだ?」
「だれ?」
「カナル公爵家の嫡男だ。名ばかりの前に優勝だと言われていた」
ああ、最初にバイソンを倒していた人だ。
「どっちだってどう言う意味?」
「内容が優勝を奪われた事に関してなのか、他の者と同じで名ばかりに興味を持っているのか……」
「公爵家の後継でしょ?そんな地位の高い人、普通に考えて優勝を奪われた件じゃない?」
私はかぼパンの手から手紙を取り封を開けた。
「なになに?えーと、今度2人でお会いしたいって!やっぱり賞品の件かな」
「いや……裕福なカナル公爵家が賞品を欲しがるだろうか?」
「わかんないから会ってみるよ!一個しかないとは言え、私が賞品貰うのは気が引けるなぁってずっと思ってたから!」
「ううむ」
顎に手を当て訝しげな表情で唸ったかぼパン。唸り声も仕草も可愛い。
自然と頭に手が伸びる。
「撫でるなっ」
シャーッ!と猫のように拒否されたけど、毎度可愛すぎて頭も撫でたくなるってものよ。
頬にスリスリしないだけマシだと思って欲しい。
と言うわけで、日時を決めてサクッとリュストさんとやらと応接室でご面会。
狩猟大会では見ていなかったけど、淡いピンク髪のかなりのイケメン男子。多分私より少し歳下くらいだろう。
「賞品貰ってしまってすみません。私も気にしていたんです」
会ってすぐ謝るとリュストはキョトンとした顔をした。
「空の雫の事?」
「はい。その事ですよね?」
「いや、面白そうだからお会いしてみたいと思っただけだけど……あ、じゃあ賞品の代わりに1日僕に付き合ってくれない?」
最後にバイソンを倒したのは私だけど、あんな巨体、このお坊ちゃんが深傷を負わせてくれていなければ絶対倒せなかった。
「では、それでいいなら」
「よし、じゃあ行こう、ナナ!」
いきなり呼び捨てなのは妹のリーリンの影響か?馬車に乗り込み軽いトーク。
「面白そうって言われたの初めて。面白みのない女で有名だったから……」
「ブブブッ!」
どう言うわけか私の話を楽しそうに聞いてくれるし、お偉いさんの息子とは思えないほど気取ってないし良い子である。
スッカリ意気投合した私達は街を練り歩き色々な物を見て回った。
以前ランとデートの時に来たスイーツ店に入り席に着くと、空の雫を取り出す。手のひらにコロンと乗るサイズの綺麗な宝石だ。
「本当に私がもらっていいの?」
「うん、それはナナが持ってて」
「ありがとう!陛下の瞳の色に似てるから凄く気に入ってたんだ」
「確かに陛下の瞳に似ているよね……そうだ、スイーツを食べ終えたら宝石をアクセサリーに加工してくれるお店に行ってみる?魔法を使える店主のところに行けばすぐに作ってくれるよ」
「行く行くっ!」
二つ返事とはこの事。
このまま持ち歩くのは無くしそうで怖かったんだよね。
普段使えるアクセサリー案をリュストと話し合っていると「楽しそうだな」と、聞き慣れた声が聞こえた。見るとランとかぼパン。
「陛下、お会いできて光栄です」
「かぼパン!」
挨拶をしたリュストに被った、かぼパン呼び。人前では陛下と呼ぶ約束だったのについ嬉しくて……
「陛下に会えて嬉しくてつい頭にあった言葉を口走ってしまったわ!オホホ」
「あはは!ナナは本当に面白いな」
リュストが笑うとかぼパンが眉を寄せた。
「ナナ……?」
「私の本名だけど、もしかして忘れたの?」
問いかけるとミニ陛下は口を思い切りへの字に結んだ。心なしか瞳も少し潤んだ気がする。
何が涙腺を刺激したのか分からないけどこの表情、胸がきゅんと締め付けられる。
可愛すぎるっ。慰めたい!母性本能ぎゅんぎゅんモードに突入した私は抱き上げて膝に座らせた。
ああ、すぐ側にかぼパンがいるだけでなんかしっくりすると言うか、落ち着くわ。
「本当にベビーシッターなんだね」
リュストの一言にハッとなる。
しまった。またつい本能で行動してしまった。人前でするなと確実に怒られる。
「あはは、今日は休日でした」
私はかぼパンを抱き上げてランに渡す。
「ラン、陛下をお願いしますね」
「承知致しました。休日をお楽しみください」
かぼパンとランは他の席に座り、私達はスイーツを食べ終えると2人に挨拶してすぐに店を出たのだった——
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