名ばかり聖女はかぼちゃパンツ陛下をからかいたい!

ハラペコWASABI

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15かぼ!クリクルパラポン!

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「陛下が会いたくないと」

 城に帰り早速かぼパンに会いに行くと、ランが困った顔で言った。

「なんで?」

「……スイーツ店でリュスト様と2人、サッサと出て行かれたのでショックだったのでは?」

「そっか、一緒に遊びたかったのね……」

 ランは少しの間の後溜息を吐き、静かに頷いた。



「かーぼパン!拗ねてんの?」

「何で入ってきてるんだ!ランは何をやっている!」

 ベッドの縁にちょこんと座りご機嫌斜めなかぼパンに空の雫で作ったネックレスを見せた。

「かぼパンにこれを渡したいって言ったらすぐ通してくれた」

「それは空の雫じゃないか」

「そ、スイーツ店を出てすぐ作りに行ったんだ。ネックレスにするには石が大きいから半分にして2つ作って貰ったの。その片割れをかぼパンにあげようと思って」

 自分の首元に掛けてあるお揃いのネックレスを見せると、不機嫌そうだったかぼパンの表情が変わり、瞳を大きく開けた。
 大きく開けた瞳に涙が揺れる。

 こっちまで切なくなりそうな、子供らしくない表情に胸がチクリと痛む。
 そんなに寂しかったなら言ってくれたら一緒に遊んだのに。そしたらこんな表情させなくて済んだ。

「なぜそれを僕に……?」

 小さく声を上げたかぼパンの目の前にネックレスを持ち上げて見せる。

「ほら、だってかぼパンの瞳の色にそっくりで綺麗でしょう?初めて見た時からずっと思ってたの!」

「……リュストにあげなくていいのか?」

「リュスト?さすがに賞品とは言えリュストとお揃いのアクセサリーをするのは誤解を招きそうだからしないよ!2つにするって決めた時、かぼパンにあげようと思ったの。リュストも陛下にあげるなら賛成だって」

 信じられない言葉を聞いているかのように、何も言わずぼーっとした表情で聞いているかぼパンの首にネックレスを着けてあげた。

「ほら、凄く似合ってる」

 微笑むとかぼパンの頬が薄っすらと桜色に染まった。何も言わないけどこの顔は嬉しい時の顔だ。
 ああ、可愛い!こんなに可愛い子の近くに居られる幸運!

 ネックレスを確かめるように触ったかぼパンは小さく呟いた。

「……貰ってやる」

「うん!あ、チェーンは赤ちゃん用だから……」

 お肌に優しい素材らしいよ。と言いたかったのだが、かぼパンは目玉が飛び出しそうな程驚いた顔で声を張り上げた。

「あーっ!?赤ちゃん用だと!?」

「うん、アクセサリーショップの人がそう言ってた。お肌に優しい……」

「子供扱いから赤ちゃんになってるじゃないか!僕は赤ちゃんじゃない!大人!おーとーなだー!」

 かぼパンの今までにないほどの叫び声が響き渡ると、ランが慌てて中に入って来る。

「陛下、何かありましたか?」

 ランを見たかぼパンの瞳がうるうると涙で染まる。

「ラン、早く大人に戻る方法を探してくれぇぇ!たーのーむううぅ!」

 私は癇癪を起こした子供をあやすように素早く抱っこし背中をトントンと軽く叩く。

「ヨチヨチ、落ち着いて」

「僕は赤ちゃんじゃないぃぃい!」

 逆効果だったらしい。そのままかぼパンによる家臣緊急収集、会議が行われる事になってしまった。

「以前から何度も言っているが僕は今切実に大人に戻りたい!各自案をだしてくれ」

 かぼパンの言葉にざわつく会議室。

「そうは言われましても今まで散々試したではありませんか」

「国民の支持率も異様に高いですし、もうそのままでいいのでないですか?」 

「そうですな。最終手段で養子を迎えては如何か」

「ダメだ、駄目だ、だめだぁ!僕はいますぐに戻りたいんだあぁあ」

 手厳しい家臣達の言葉の中、かぼパンは勇敢にも椅子の上に立ち叫んだ。

 しかし今案を出せと言われても、家臣達が言っている通り散々試して来たのだ。かぼパン自身もそう言っていた。すぐに案を出すのは難しいのだ。

「ハイヒールを履いてはどうだ」

「髪を立てて固めれば大きくなるのでは?」

「僕が求めているのは身長じゃない!真剣に考えてくれっ」

 赤ちゃんと言われたことが相当ショックだったらしい。かぼパンは真剣だ。

「名ばかりも他にあちらの世界の知恵はないのか?」

 私まで呼ばれた時点でお察ししていたけど、やはり飛び火したか……

「大丈夫、かぼパンのハートはちゃんと大人だよ」

「精神的じゃなくて肉体的に大人になりたいんだ!」

「う~ん……聖女でも呼んでみたら?」

「お、ま、え、だ!」

 渾身のギャグだったのだが真顔で返されてしまった。あちらの世界の知恵と言われても液体も飴も試したし……

 そう言えばまだあれがあった。鏡だ。
 童話からアニメまで、魔法の鏡が出て来る話は沢山ある。

 それに召喚された当日、昼食が露天で買ったたこ焼きだった私は歯に青ノリが付いていないか確認したいと思った。
 すると、隣の露天に丸いコンパクトミラーが売っているのに気付き、つい購入してしまったんだよね。

 いつもならトイレまで見に行くんだけど、何故か買ってしまった。もちろんそのミラーは鞄の中に入っている。

 いつもしない行動をしたという事は自分が聖女である為召喚される事を見越し……略。

 ものは試しだ。
 私は鞄から丸いコンパクトミラーを取り出しかぼパンに手渡す。

「これは魔法の鏡……かもしれない」

「ほう?」

「コンパクトを開いて鏡に向かい、大人に戻る呪文を唱えると……」

「ほほう!それは効き目がありそうだ」

 かぼパンは丸いコンパクトを開き鏡を覗き込んだ。

「クリクルパラポン!クリクルパラポン!大人の姿にも、ど、れー!大人になぁれー!クリクルパラポン!」

 ブッと吹き出したのがバレないようすぐに口元を押さえた。

 何?それが魔法の呪文なの?鏡に向かってクルクルしている指先といい、まるで保育園児がお遊戯の練習してるみたいなんですけど。

 可愛すぎて泣ける!尊い。

 あまりの可愛さにはあはあしているが、それは私だけではない。
 愛で会の家臣全員、瞳をキラキラさせて見つめている。

 そんな暖かい視線の中頑張ったかぼパン。

「そういえばもう魔力がなかったんだったね」

「ううっ」

 結局大人に戻れず、項垂れたかぼパンをランと2人で部屋まで見送る。

「何故そんなに急に戻りたいと焦るのですか?」

 赤ちゃん用チェーンの話を知らないランの問いかけに答えを出し渋るかぼパン。

 赤ちゃん扱いされた事がショックだったとは言いたくないらしい。代わりに私が冗談で答える。
 
「そりゃーかぼパンは私と2人で遊びたいからでしょ!リュストが羨ましかったんだよねー」

 するとかぼパンは壮絶に顔を歪ませ、赤くし、狼狽えた。
 
「そおぉぉんなわけないだろう!何を言い出すんだ!名ばかりと遊ぶくらいならまだまだ子供でいい!本当だぞ!」

 そこまで言い切らなくてもいいのに。

 寝る前なのにわーわー悪態をついて来るかぼパン。落ち着かせようと可愛い鼻を軽くつついて呪文を唱える。

「クリクルパラポン!クリクルパラポン!良い夢が見れますよーに!大人に戻れる夢でも見られたらいいね」

 頭を撫でるとかぼパンは寂しそうに呟いた。

「夢じゃダメなんだ……」

 なんて切ないの?!このまま寝かせたらダメっ!元気になってほしい。

「一緒に寝るか!」

「寝、な、い!全く名ばかりは……」

 部屋に入ったけど追い出された。

 
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