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16かぼ!かぼパンぬいぐるみ

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「可愛い、可愛い、あー!可愛いっ」

「う、る、さ、い」

 私は今かぼパンではなく、等身大かぼパンぬいぐるみを抱っこしてウキウキしている。

 前に言っていたぬいぐるみをランが本当に作ってくれていたのだ。これがまた、細部にまでこだわった本気の一品で思わずランも自分の分まで作ってしまったそう。そのくらい出来が良い!

「みて、この頭のフォルム!かぼパンソックリ」

「はい、後頭部の可愛さにもこだわりました」

「さっすが~!」

 私とランが盛り上がっていると、かぼパンが不機嫌そうに割って入って来る。

「見せてみろ」

 かぼパンにぬいぐるみを手渡すと、かぼパンがかぼパンのぬいぐるみを抱っこしてるようになり、つまり……かぼパン×かぼパンで究極奥義並に可愛い!

「ああっ、可愛すぎて死ぬっ!今すぐカメラマンを呼べえぇぇ!」

 私だけではなく、ランも可愛死にしそうな顔で悶えると、かぼパンは無表情でぬいぐるみをベシッと床に投げた。

「はあっ!」

 私とランは息を飲んだ。無惨に床に投げられたかぼパンぬいぐるみを慌てて抱き上げる。

「酷い!」

「そうですよ陛下、ぬいぐるみ第一号が……」

 ランの言葉に合わせて左足の裏に施されている01という刺繍を見せる。

「なんだそれは。第一号だと?一体いくつ作る気なんだっ!」

「試作品を見た会のメンバー全員欲しいと言うので20体限定で作る予定です」

「会?!メンバー?!20体っ?!」

 どこからツッコんでいいのか良く分からないんだろう。力一杯叫んで、疲れたように腰掛けた。

「説明しろっ!」

「会とは、かぼパンを愛でる会の事よ。このあいだすごろくの時に皆いたでしょう?可愛らしいかぼパンを愛してやまない人達の集まりなの!」

 私が手短に説明するとかぼパンは深い深い溜息を吐いた。

「いつの間にそんな物が……解散だ、解散っ!」

「嫌でーす!よく考えて、皆に愛されてる王様って最高に素敵じゃない?」

「むう?」

 皆に愛されてる王様と言うワードに反応したかぼパン。今がチャンスだ。ランもそう判断したのだろう、速やかに話し始めた。

「陛下の支持率、人気は年々上昇し、とうとう99パーセントにまでなりました。これは言うまでもなく歴代最高です。以後記録を破られる事もないでしょう。それもこれも全て陛下の愛らしいお姿と国民を思う素晴らしい手腕のおかげ!そんな陛下を愛さずにいられますでしょうか」

 うんうんと頷きながら聞いていたかぼパン。

「なるほどな、99パーセントまで行っていたとは驚きだ。そこまで愛されている僕にそのような会が出来るのは自然な事だな。だがっ、そのぬいぐるみはやめてくれ!」

「何故?」

「だって僕に似たぬいぐるみが20個もあると想像したら怖いだろう」

 頭の中に20体のかぼパンぬいぐるみが並んでいる姿を想像する。

「天国?」

「はい、可愛すぎますね」

 私とランが頷くと、かぼパンはギャーギャーといつもの様に喚き出す。

「何故そうなる!ちゃんと想像するんだっ」

 想像して天国だと思ったのに。
 私はぬいぐるみ01を顔の高さまで持ち上げた。

「このかぼパンぬいぐるみ01は小言も言わないし可愛いし最高だよね。少しは本人も見習って小言減らせばいいのにねー」

 01に向かって話しかけると、無表情になったかぼパンがマシューを呼んだ。何かをコソコソ耳打ちするとマシューは笑顔で頷いた。

 私の01に向かってなにやらブツブツと呪文を唱えるマシュー。こ、これはまさか!

 私とランが目を合わせる。

「この手がありましたか!」

 ランが叫ぶとかぼパンが勝ち誇った顔をした。

「気付いたかっ!ぬいぐるみだからと油断したお前らの負けだっ!いけ、マシュー!僕のぬいぐるみに小言を言わせるんだっ!」

 それはもう得意げに叫んだが私とランは大歓喜。喋るかぼパンぬいぐるみなんて欲しいにきまってる!

「僕の02も持ってきます!」

「うん、急いで!」
 
「え?喜んでいる……?」

 かぼパンの思惑と違い、どう見ても喜んでいる私達に戸惑っているようだ。

 私は魔法を掛けられた01をそっと床に置いた。
 自立し、腕を組み、プンっとした顔で見上げてくる01。もうこの時点で可愛すぎてヤバい、可愛すぎるぅう!

「名ばかりめ、いつも余計な事ばかりする」

「わぁ!私の01が喋った!」

 声もちゃんとかぼパン。これはもう感動の一言である。生きててよかった!

「マシューさん、この魔法どのくらい持ちますか?」

「そうだなぁ、30分くらいかな?」

「30分も?マシューさんに30分ごとに会いに行ってもいい?」

「あはは!いいいとも!」

「キャー!ありがとう!」

 はしゃいでいるとかぼパンが頭を抱えた。

「どうしてそうなるんだ!」

「ぬいぐるみが喋るなんて嬉しいし、可愛いじゃない!さすがかぼパン、考える事が可愛すぎる」

「でも小言をいうんだぞ?僕に小言を言うなと言っていたじゃないか」

「小言を言ってもかぼパンは可愛いし……」

 もしかしたらと思った私は01に向かって言い聞かせてみる。

「01はいい子だから小言以外も話すよね?ほら、名ばかりは可愛いって言ってみて!」

「言うわけないだろう!」

 叫ぶかぼパン。しかし01は違った。

「名ばかり可愛い!いつも優しい」

 目を細め可愛く言った01の可愛さに私は悶絶。

「01可愛い~!」

「どうして心にもない事を言うんだっ!マシュー、どうにかしろ」

 真っ赤な顔して叫んだかぼパン。

「陛下のお心に寄せているはずなのですが……」

「そんなわけないだろうっ!」

 かぼパンが叫ぶと01も叫んだ。

「名ばかりが勘違いしたら困る!」

 その言葉を聞いたかぼパンがホッした表情で胸を撫で下ろすと、01は口を結び、両手で口を押さえた。

「フッフ、何も言う気はないらしい。さすが僕のぬいぐるみだ」

 ドヤ顔のかぼパン。
 その後ろのドアから魔法をかけられた02とランが入ってきた。
 当たり前だが02も超可愛い。私は素直に褒める。
 
「あら、オタクの02も可愛いですね。まぁうちの01が1番可愛いですけど!」

「そうでしょうか?1番最初に作ったからと言って01が1番可愛いとは限りません」

「そう?うちの01とおたくの02、どっちが可愛いか勝負よっ!」

 私とランが火花を散らしたその時、かぼパンが叫んだ。

「黙れラン、名ばかり、1番はこの僕だっ!」

 どーん!と胸を張り言い切ったかぼパンの可愛さに私とランは目を潤ませる。

「そうだねー、1番はかぼパンだよねー」

「はい、陛下が1番です」

 すると01と02がかぼパンに激しく抗議。お互い自分が1番だと口にする。
 
 かぼパンと01と02の必死な口論の図、可愛い×可愛い×可愛いで驚異的な可愛さを記録。
 私はコッソリスマホを起動、動画にしっかり記録したのだった。

 口論は続き、魔法が切れる直前、突如私の前に走ってきた01が私を見上げて言った。

「名ばかりよ、僕が大人に戻ったらデートしよう」
 
 01の意外な言葉に驚いたが、やたらと優しい気持ちで一杯になり、微笑み頷いた。

「うん」

「約束だ」

 その言葉を最後に魔法が解け、パタリと倒れた01。

 かぼパンはまだ魔法が解けていない02と口論を続けていて今の01の言葉に気付いてないけど、何故こんな事を?

 ……本物のかぼパンは絶対に言わないであろう言葉すぎて、何故そんな事を言ったのか分からないけど悪い気はしない。

 私は01を抱き上げ頬にちゅっとキスをした。

「なにをやってるんだあぁぁあ!」

 いつの間に見ていたのか、同時に叫んだかぼパンと02。真っ赤な顔して慌てっぷりが半端ない。

「2人にもしてあげようか?」

「いらぬぅうう!」

 これはかぼパンの叫び。

「頼むぅぅぅう!」

 この叫びを最後に02は魔法が解けてしまったのだった。

 この後、ぬいぐるみに魔法を掛けるのは禁止された。

 





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