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17かぼ!武闘会
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「来週リュスト様の22回目の生誕祭を記念して舞踏会が行われるのですが、奈那様も是非参加して頂きたいとの事です」
「え?リュスト誕生日なの?この前会った時何も言ってなかったのに」
「はい、前から舞踏会が行われるのは決まっていたのですが、奈那様はまだこちらの世界にいらっしゃらなかった時でしたので。突然のお誘いになってしまい申し訳ないのですが是非にとの事です」
誕生日記念に武闘会を開くなんて。リュスト、意外と闘い好きなんだ。
武闘会なんてお祭り、格闘技歴20年超えの私は参加するしかないでしょう!
「勿論参加するわ」
「では早速ですが以前行った服屋さんに行って来てくださいますか?私と陛下はトラブルで忙しく、一緒に行けないのです」
そう、昨日起こったトラブルで今もかぼパンは執務室に篭りっきり。ランはこの事を伝える為にわざわざ来てくれた。
寂しいけど1人で行ってくるか!
「わかった!お仕事頑張って!」
早速用意された馬車に乗り込み、服屋さんへ行くと女性従業員が静々と頭を下げる。
「お話は聞いております。どのようなデザインがよろしいでしょうか?」
「えーと、道着か空手衣がある?訳ないよねぇ」
「申し訳ございません、初めてお聞きしました!」
私は紙に書き出し戦闘服を説明する。
「あの、こんなに簡素な物でよろしいんですか?」
「ええ、私の故郷では皆これを着ているわ。あ、帯は黒でお願い」
「そ、そうでございましたか、故郷の……民族衣装のようなものでございますね?」
「まぁそうね」
頷くが、少しまだ躊躇いの感じる女性店員さんに採寸をしてもらい、中に着るTシャツもお願いした。
「せめてこの首元に宝石を散りばめては如何でしょうか?」
不安そうな女性店員が紙を指差し提案してくる。この世界ではそんなに地味なのか?だけど。
「戦闘服にそんなの付けたら邪道だよ。何も付けず頼んだ通りにお願いっ!」
不安だった私は生地も見せてもらい、しっかりと指定したのだった。大丈夫かな?
夕飯時、ようやくかぼパンに会えた。なんと昨日の夕食以来だ。こんなに長い時間会わないのはこの世界に来て初めて。
「かーぼーぱーん!寂しかったよおお」
私は擦り寄り、スンスンとかぼパンの可愛い香りを鼻から摂取。やはり落ち着く。
かぼパンの可愛いは疲れをも吹き飛ばす効果があるのです!
「はぁ~、やっぱり1日1回はかぼパンの可愛いを摂取しないとねぇ」
「分かります」
「はぁ、もう何も言うまい」
少し呆れた顔のかぼパンを見つめ、愛で活をしているとかぼパンが咄嗟に口を開いた。
「そう言えば服屋はどうだったんだ?」
「あ、ちゃんと頼んできたよ!ありがとう。でもこっちの世界じゃ地味みたいで、店員さんが困惑してた」
「困惑?それは大丈夫なのか?」
怪訝そうな表情だけどこっちの世界とは違うから。
「大丈夫!私達の世界では制服のようなものよ!武闘会ではほぼ全員同じシンプルなデザインの服を着ているわ」
「そうか、シンプルなのか。名ばかりの世界の常識なら尊重しよう」
「うん!明日から中庭で特訓するね!」
「特訓?」
「うん、武闘会に向けて特訓するの」
「ああ……参加するからにはやはり……そうか……楽しみにしているぞ」
何故かシュンとしながらも、かぼパンが楽しみだと言ってくれた。
これは頑張るしかない。
翌日、言葉通り中庭で特訓していると、噂を聞いた城の騎士様が見学に来た。
話をすると騎士団長らしい。
「ベビーシッター殿は身体が軽くジャンプ力もあり、体幹がしっかりしている。このまま剣舞も舞えそうだな」
私の動きを一通り見た騎士団長のその一言で剣を借り、格闘技の型と組み合わせてみる。思ったより相性が良く自然と身体が動いた。
「初めてとは思えないほど素晴らしい!迫力が違う!少し練習すれば国で、いや世界で1番の踊り手になれるぞ」
世界で1番とは!
言い過ぎだとは思うが、騎士団長のお褒めの言葉にすっかり気を良くした私。
騎士団長に教えを請い、武闘会に向けて剣技、剣舞の練習をしたのだった。
「最近騎士団長とダンスの練習をしているらしいな」
トラブル処理の忙しさが続き、最近夕食時にしか会えないかぼパンが疲れた表情で聞いてきた。
ダンスとは剣舞の事だろう。
「うん、騎士団長のおかげでメキメキ上達してる!」
「そうか……やはりダンスの相手は大人じゃないとな……」
疲れた顔でしょんぼりと呟いたかぼパン。
「明後日の武闘会で披露するつもりだから楽しみにしてて」
「……相手はリュストか?」
私の対戦相手はリュストなのだろうか?公爵家の跡継ぎを舞うように刺して問題ないのかな?
「分からないけど……度肝を抜いてやるつもりよ!」
「名ばかりの相手は大変だな……」
少し寂し気な様子が気になり、抱っこして撫で撫で攻撃。
ようやく「や、め、ろ!」といつもの調子に戻したのだった。
武闘会当日、私は戦闘服の上から煌びやかな宝石のついたロングコートを羽織った。
服屋の店員さんが、どうしても上から羽織って欲しいと懇願してきたのだ。
憶測だけど、自分の店の作品が地味だと評判に関わるのだろう。
戦う時だけ身軽なら良いので了承したのだ。
そして何故か準備のお手伝いにとメイドが2人派遣されてきたんだけど、帰ってもらった。
髪の毛のセットと言われても、ポニーテールで充分なのよ。
そのせいか馬車で待ち合わせていたかぼパンの表情がおかしい。
「名ばかりよ、そちらの世界を尊重はするが化粧もいつもと変わらず、髪もひとつに纏めているだけじゃないか」
少しガッカリしたような表情。何を期待していたのかは分からないが、かぼパンはいつもにも増して煌びやかな服装だ。
「見るだけのかぼパンと違って私は参加者だから。TPOに合わせた結果よ」
「見るだけ……」
ズンと落ち込んだかぼパン。良く分からないが傷つけてしまったらしい。
膝に乗せるが、抵抗することも無く受け入れるほどの落ち込みよう。
見るだけと言う言葉がよくなかったんだろう。ならばフォローはこうだ。
「大人に戻ったらかぼパンも一緒に参加しようね」
慰めるように言うと、かぼパンは小さく頷いたのだった。
かぼパンも意外と闘い好きなのね。
武闘会が行われるカナル公爵家に到着すると右も左も派手なドレスを着た女性と、燕尾服や宮廷服を着た男性がワラワラ。
さすが異世界、武闘会を見るのも超ド派手。
建物の中に入ると大きなシャンデリアが輝くさらに派手な空間だった。
その派手な空間の中に広々と赤い絨毯が敷き詰められたゾーンがある。きっとあそこが試合会場なのだろう。
「じゃあ私は行くわ。かぼパン、選手の控室はどこかしら?」
「ん?選手の控室?何の選手だ?」
「武闘会に出場する選手達の控室よ。ちゃんと応援してね!きっと私がカッコ良すぎて2人とも震えるわよ」
私の言葉にかぼパンもランも目を点にして黙った。
何か変な事を言ったかな?こっちの世界の武闘会は作法が違う?
困惑していると、私よりも困惑した表情のかぼパンがようやく声を出した。
「名ばかりの世界での舞踏会は一体どんなスタイルなんだ?」
「えと、トーナメント選かな」
「トーナメント……?」
困惑している私とかぼパンの横で何かに気付いたのか、ランが派手に吹き出した。
「ブハッ!ハハハ!まさか、奈那様、舞踏会を勘違いしていませんか?」
「えっ?」
「今日は舞踏会ですよ、ダンスパーティーです!奈那様がおっしゃっているのは武力を競い合う武闘会ではありませんか?」
ランの言葉に一気に震えが来た。今までの私の人生、ぶとうかいと言う響きはもう武闘会なのよ!
「たっ、闘わないの?」
「はい」
ああ、ようやく理解。こっちの世界は舞踏会が普通なんだ。
……正直、これは恥ずかしい!
「あはは!ははははは!ははははは!」
「ハハハハハハハハハハ」
理解したかぼパンもランも笑いすぎて震えている。カッコ良さで震わせるはずだったのに!
「あはは!だが毎日騎士団長とダンスの特訓をしていたのではないのか?」
「したよ、剣舞……」
自分でも情けない声で答えるとかぼパンは満面の笑みを見せた。
「なんだ、剣舞だったのか!僕はてっきり社交ダンスだとばかり!あははははは!剣舞!名ばかりらしいな!あははははは!」
馬車の中と違い、一気に上機嫌になったかぼパンは延々と笑い続けた。
間違った甲斐があったと思わせるほど可愛いっ!けど……!
やけになった私はコートを脱ぎ捨て、リュストに誕生日祝いの舞だと剣舞を披露したのだった。
「え?リュスト誕生日なの?この前会った時何も言ってなかったのに」
「はい、前から舞踏会が行われるのは決まっていたのですが、奈那様はまだこちらの世界にいらっしゃらなかった時でしたので。突然のお誘いになってしまい申し訳ないのですが是非にとの事です」
誕生日記念に武闘会を開くなんて。リュスト、意外と闘い好きなんだ。
武闘会なんてお祭り、格闘技歴20年超えの私は参加するしかないでしょう!
「勿論参加するわ」
「では早速ですが以前行った服屋さんに行って来てくださいますか?私と陛下はトラブルで忙しく、一緒に行けないのです」
そう、昨日起こったトラブルで今もかぼパンは執務室に篭りっきり。ランはこの事を伝える為にわざわざ来てくれた。
寂しいけど1人で行ってくるか!
「わかった!お仕事頑張って!」
早速用意された馬車に乗り込み、服屋さんへ行くと女性従業員が静々と頭を下げる。
「お話は聞いております。どのようなデザインがよろしいでしょうか?」
「えーと、道着か空手衣がある?訳ないよねぇ」
「申し訳ございません、初めてお聞きしました!」
私は紙に書き出し戦闘服を説明する。
「あの、こんなに簡素な物でよろしいんですか?」
「ええ、私の故郷では皆これを着ているわ。あ、帯は黒でお願い」
「そ、そうでございましたか、故郷の……民族衣装のようなものでございますね?」
「まぁそうね」
頷くが、少しまだ躊躇いの感じる女性店員さんに採寸をしてもらい、中に着るTシャツもお願いした。
「せめてこの首元に宝石を散りばめては如何でしょうか?」
不安そうな女性店員が紙を指差し提案してくる。この世界ではそんなに地味なのか?だけど。
「戦闘服にそんなの付けたら邪道だよ。何も付けず頼んだ通りにお願いっ!」
不安だった私は生地も見せてもらい、しっかりと指定したのだった。大丈夫かな?
夕飯時、ようやくかぼパンに会えた。なんと昨日の夕食以来だ。こんなに長い時間会わないのはこの世界に来て初めて。
「かーぼーぱーん!寂しかったよおお」
私は擦り寄り、スンスンとかぼパンの可愛い香りを鼻から摂取。やはり落ち着く。
かぼパンの可愛いは疲れをも吹き飛ばす効果があるのです!
「はぁ~、やっぱり1日1回はかぼパンの可愛いを摂取しないとねぇ」
「分かります」
「はぁ、もう何も言うまい」
少し呆れた顔のかぼパンを見つめ、愛で活をしているとかぼパンが咄嗟に口を開いた。
「そう言えば服屋はどうだったんだ?」
「あ、ちゃんと頼んできたよ!ありがとう。でもこっちの世界じゃ地味みたいで、店員さんが困惑してた」
「困惑?それは大丈夫なのか?」
怪訝そうな表情だけどこっちの世界とは違うから。
「大丈夫!私達の世界では制服のようなものよ!武闘会ではほぼ全員同じシンプルなデザインの服を着ているわ」
「そうか、シンプルなのか。名ばかりの世界の常識なら尊重しよう」
「うん!明日から中庭で特訓するね!」
「特訓?」
「うん、武闘会に向けて特訓するの」
「ああ……参加するからにはやはり……そうか……楽しみにしているぞ」
何故かシュンとしながらも、かぼパンが楽しみだと言ってくれた。
これは頑張るしかない。
翌日、言葉通り中庭で特訓していると、噂を聞いた城の騎士様が見学に来た。
話をすると騎士団長らしい。
「ベビーシッター殿は身体が軽くジャンプ力もあり、体幹がしっかりしている。このまま剣舞も舞えそうだな」
私の動きを一通り見た騎士団長のその一言で剣を借り、格闘技の型と組み合わせてみる。思ったより相性が良く自然と身体が動いた。
「初めてとは思えないほど素晴らしい!迫力が違う!少し練習すれば国で、いや世界で1番の踊り手になれるぞ」
世界で1番とは!
言い過ぎだとは思うが、騎士団長のお褒めの言葉にすっかり気を良くした私。
騎士団長に教えを請い、武闘会に向けて剣技、剣舞の練習をしたのだった。
「最近騎士団長とダンスの練習をしているらしいな」
トラブル処理の忙しさが続き、最近夕食時にしか会えないかぼパンが疲れた表情で聞いてきた。
ダンスとは剣舞の事だろう。
「うん、騎士団長のおかげでメキメキ上達してる!」
「そうか……やはりダンスの相手は大人じゃないとな……」
疲れた顔でしょんぼりと呟いたかぼパン。
「明後日の武闘会で披露するつもりだから楽しみにしてて」
「……相手はリュストか?」
私の対戦相手はリュストなのだろうか?公爵家の跡継ぎを舞うように刺して問題ないのかな?
「分からないけど……度肝を抜いてやるつもりよ!」
「名ばかりの相手は大変だな……」
少し寂し気な様子が気になり、抱っこして撫で撫で攻撃。
ようやく「や、め、ろ!」といつもの調子に戻したのだった。
武闘会当日、私は戦闘服の上から煌びやかな宝石のついたロングコートを羽織った。
服屋の店員さんが、どうしても上から羽織って欲しいと懇願してきたのだ。
憶測だけど、自分の店の作品が地味だと評判に関わるのだろう。
戦う時だけ身軽なら良いので了承したのだ。
そして何故か準備のお手伝いにとメイドが2人派遣されてきたんだけど、帰ってもらった。
髪の毛のセットと言われても、ポニーテールで充分なのよ。
そのせいか馬車で待ち合わせていたかぼパンの表情がおかしい。
「名ばかりよ、そちらの世界を尊重はするが化粧もいつもと変わらず、髪もひとつに纏めているだけじゃないか」
少しガッカリしたような表情。何を期待していたのかは分からないが、かぼパンはいつもにも増して煌びやかな服装だ。
「見るだけのかぼパンと違って私は参加者だから。TPOに合わせた結果よ」
「見るだけ……」
ズンと落ち込んだかぼパン。良く分からないが傷つけてしまったらしい。
膝に乗せるが、抵抗することも無く受け入れるほどの落ち込みよう。
見るだけと言う言葉がよくなかったんだろう。ならばフォローはこうだ。
「大人に戻ったらかぼパンも一緒に参加しようね」
慰めるように言うと、かぼパンは小さく頷いたのだった。
かぼパンも意外と闘い好きなのね。
武闘会が行われるカナル公爵家に到着すると右も左も派手なドレスを着た女性と、燕尾服や宮廷服を着た男性がワラワラ。
さすが異世界、武闘会を見るのも超ド派手。
建物の中に入ると大きなシャンデリアが輝くさらに派手な空間だった。
その派手な空間の中に広々と赤い絨毯が敷き詰められたゾーンがある。きっとあそこが試合会場なのだろう。
「じゃあ私は行くわ。かぼパン、選手の控室はどこかしら?」
「ん?選手の控室?何の選手だ?」
「武闘会に出場する選手達の控室よ。ちゃんと応援してね!きっと私がカッコ良すぎて2人とも震えるわよ」
私の言葉にかぼパンもランも目を点にして黙った。
何か変な事を言ったかな?こっちの世界の武闘会は作法が違う?
困惑していると、私よりも困惑した表情のかぼパンがようやく声を出した。
「名ばかりの世界での舞踏会は一体どんなスタイルなんだ?」
「えと、トーナメント選かな」
「トーナメント……?」
困惑している私とかぼパンの横で何かに気付いたのか、ランが派手に吹き出した。
「ブハッ!ハハハ!まさか、奈那様、舞踏会を勘違いしていませんか?」
「えっ?」
「今日は舞踏会ですよ、ダンスパーティーです!奈那様がおっしゃっているのは武力を競い合う武闘会ではありませんか?」
ランの言葉に一気に震えが来た。今までの私の人生、ぶとうかいと言う響きはもう武闘会なのよ!
「たっ、闘わないの?」
「はい」
ああ、ようやく理解。こっちの世界は舞踏会が普通なんだ。
……正直、これは恥ずかしい!
「あはは!ははははは!ははははは!」
「ハハハハハハハハハハ」
理解したかぼパンもランも笑いすぎて震えている。カッコ良さで震わせるはずだったのに!
「あはは!だが毎日騎士団長とダンスの特訓をしていたのではないのか?」
「したよ、剣舞……」
自分でも情けない声で答えるとかぼパンは満面の笑みを見せた。
「なんだ、剣舞だったのか!僕はてっきり社交ダンスだとばかり!あははははは!剣舞!名ばかりらしいな!あははははは!」
馬車の中と違い、一気に上機嫌になったかぼパンは延々と笑い続けた。
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