名ばかり聖女はかぼちゃパンツ陛下をからかいたい!

ハラペコWASABI

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26かぼ!小さくなったら何をする?

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 私は今、ミニサイズになった自分の手をリュストに向かって差し出している。

 身体を包み込んだモクモク霧が晴れたと思ったら視界が低くなっていた。
 驚いたけど、小さくなった可愛いおて手を見て自分が小さくなったとすぐに分かったのだ。

「見て!手が紅葉みたいで可愛いくない?」

 手の平を見せながらニコニコで言うと、顔面蒼白で絶句していたリュストは見事にズッコケた。

「まずそれ?!」

「うん、アハハハハ!リュストデカっ!巨人みたい!アハハハハハ」

 笑いころげる私とは裏腹に、リュストはおでこをテーブルに擦り付つけ謝罪を口にした。

「ごめん、絶対僕のリーリンの仕業だ!妹が大人に戻った陛下と結婚すると喜んでいたからつい、陛下はナナと結婚すると言ってしまって……」

「あー……」

 そうだ。リュストの妹はあの強引なリーリンだった。
 大人のかぼパンのことが好きなんだっけ?

「……別に謝らなくていいよ!リュストは知らなかったんだし。そんなことより鏡を持って来てくれない?小さな自分を見てみたい!」

「分かった」

 すぐに立ち上がり全身鏡を持ってきたリュスト。

「本当にごめん……」

 申し訳なさそうに私に向けられた全身鏡を覗き込むと小さな自分がいた。子供かぼパンと同じ3歳くらい。

「可愛い~」

 自画自賛してしまったけど、この頃の自分天使じゃない?小さな顔にくりくりの瞳。汚れなきお肌、唇も淡くピンクに染まっている。

 マンドローレで仕立ててもらったパンツスーツも一緒に小さくなっていてそれもまたコスプレみたいで可愛い。

「リュスト、私の部屋に連れてって」

「ナナの?先に陛下かラン様にお伝えしないと……」

「ダメダメ!そんな事したらリュストも責任取らされちゃうよ!いいから部屋に連れて行って」

「いや、これは責任とらないとダメだろ……」

 意外と真面目なリュストはブツブツ言いながら私を抱き上げ部屋に運んでくれた。

 髪の毛を縛るゴムを鞄から取り出し、ツインテールにしてみると可愛さが倍増した気がする。

「可愛い……」

 私を見守っているリュストがポツリとつぶやいた。

「でしょ?」

 得意気に返事をするとリュストは慌てて首を振る。

「可愛いから良いってものじゃない!早く魔法使いを呼んで元に戻してもらわないと」

「ダメダメ~!せっかく小さくなったんだよ?何もしないまま大人に戻ったら面白くないよ」

 リュストを止めると呆れたように首を横に振った。

「さすがナナだよ。少しも動じないとは……今僕はさすがに胃が痛くなってきたんだけどどうする気?」

「……王妃候補を子供にしちゃったなんてバレたらリュストの家はどうなるか分かってる……?下手したら処刑……」

「ハッ!」

 息を飲むと同時に一気に緊張感のある顔付きになったリュスト。

 リュストには悪いけどせっかく子供になったのだから子供にしか出来ないことを楽しみたいのだ。さっさと元に戻るなんて勿体無い!

 私は真っ先に折り鶴に乗ったかぼパンを思い出した。
 あれは味わっておきたい。

 思いついた私は早速奴隷と化したリュストと共にマシューの元へ。

「ええええー!」

 と、マシューは最初は驚いたけど軽いノリで受け入れてくれた。折り鶴を大きくしてもらい鶴に乗る。

 意外とある安定感。
 フワッと空に浮きクルクル回る折り鶴の楽しさときたら!
 遊園地の遊具に乗っているみたい。
 この世界に遊園地はないからね。あの時かぼパンがはしゃいだ気持ちが分かる。

 小さいって良いなぁ。

「アハハハハハ!たっのしー」

 堪能していると涙目の奴隷リュストが言う。

「ナナ様、そろそろ元に戻ってくれませんか?もう十分遊びましたよね……僕は気が気じゃなくて。マシューさん、大人に戻せそうですか?」

「えー?陛下の時とは事情が違うから戻せると思うけどー?」

「じゃあお願いします!」

 リュストがマシューに向かって頭を下げる。でも正直まだ遊び足りない。

 何かいい遊びはないだろうか?子供の姿でしか出来ない事……

 ハッと思いついた私はニヤリと笑い、リュストとマシューに提案する。

「せっかく小さくなったんだからかぼパンをからかいたくない?」

 ******

 話は纏まり、と言うか押し通し、私はリュストが開けたドアから執務室に飛び込んだ。

「パパーっ!」

 力一杯叫びながらかぼパンの元へと走る。

 執務室内は一瞬時が止まったように静かになり、バン!と声が上がった。

「パパぁ?!」

 かぼパンを愛でる会の家臣達の驚いた顔に笑いが止まらない。

「アハハハハハ!」

 家臣達の後ろをすり抜け、私は笑いながらかぼパンの元へと走る。
 かぼパンの後ろで言葉を失い白目になっているランには後で説明するとしよう。

 かぼパンの足元に到着すると、目を点にして見ているかぼパンに向かって両手を広げる。

「パパ、抱っこ」

 大人かぼパンは驚きすぎて口を大きく開け声も出せないご様子。

「パパ、私の事分からないの?」

 上目遣いで少し唇を突き出し拗ねてみせる。
 これは子供かぼパンが良くやっていた表情だ。
 その表情に、口を開けて固まっていたかぼパンの瞳に色が戻る。

 ハアアアアッと息を飲んだ大人かぼパン。

「な、名ばかりにそっくりだ……」

 呟くように言うと私を抱き上げ頬を桜色に染めた。

 間近で見る大人になったかぼパン。
 別人みたいで少し緊張するかも。
 なんて思っていたら、かぼパンは私を見つめ照れ臭そうに微笑んだ。

「そうか……昨日のキスで子供が出来たのだな」

「出来るかーっ!」

 息を飲み見つめていた全員が叫び、突っ込んだのだった。

「アハハハハハ!」

 そのやり取りに私の少しの緊張は解けて笑いがこぼれる。

 見た目は別人みたいだけど、やっぱり中身はかぼパンだ。可愛すぎる!



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