名ばかり聖女はかぼちゃパンツ陛下をからかいたい!

ハラペコWASABI

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25かぼ!私を食べて

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 涙ながらに私の事を好きだと打ち明け、プロポーズまでしてくれたかぼパンに心が動かないわけがない。

 同情心に似た気持ちが沸いたのだと思う。

 泣いてほしくなくて、思わず唇に軽いキスをすると、光り輝く霧がかぼパンを包み込んだ。
 いつもは白く輝く魔力なのに、ほのかにピンク色に染まっている。

 もしかしてかぼパンの頬の色かしら?なんて考える余裕があるほど、かぼパンを覆うもこもこ魔力霧が長い。

「これはひょっとするとひょっとするかも」

 皆黙って見守っていたが、私が声をあげるとランが満足気に頷いた。

「奈那様ありがとうございます。大人に戻るのは少し寂しいですが国の未来の為です。今回もし無事に大人に戻っていたら陛下と結婚してくださいませんか?」

 やり切ったような表情のランだけど、急にそんな事言われても正直悩んでしまう。

 かぼパンの事は大好きだけど恋じゃないし、それに王様と結婚したら王妃様になると言う……

 ドレスよりジャージが似合う私は王妃なんてそんなガラじゃない。

「う~ん……悪いけどちょっと……」

 考えられない。と言おうとして止まった。
 かぼパンを包み込んでいた霧が一気に薄れて来たから。

「見て!」

 いつもより確実に身長が高いシルエットに注目していると、上半身もしっかり大人に見えてきた。

「これはっ!」

 ランが驚きの声を上げた瞬間、かぼパンを包み込んでいた薄いピンクの霧全てがさあっと晴れた。

 澄んだ空気に戻った室内。そこに立っていたのは——

 だ、誰このイケメン……と口に出せない程輝くオーラに圧倒される。
 サラサラのホワイトブロンドの髪の毛、見つめると骨まで溶かされてしまいそうな色気のある瞳、色づいた唇、きめ細やかな美しい肌。

 どういう原理か服まで大きくなって、かぼちゃパンツを履いているイケメンがそこに居た。
 かぼちゃパンツなのにイケメンって相当凄いよ?

 もしかしなくても、これが大人のかぼパンなの?

 本当に?イケメンを越えたイケメン、この光り輝くイケメンが?

 かぼパンなんだ!

 そう思った瞬間、胸がドキドキと暴れ出す。

 空いた口が塞がらない!私こんな人に好きって言われたの?

「陛下、やりました!やりましたよ!大人に戻っています」

「こちらに鏡が……」

 ランが喜びの声を上げ、リュストが鏡を案内すると、鏡を覗き込んだかぼパンは自分の頬を確かめるように触った。

「戻った……やった、本当にもどったぞ!やったぞ名ばかり!」

 嬉しそうに私に向かって笑顔を見せた大人かぼパン。

 ああ、胸が高鳴りすぎて倒れそう。
 光り輝くイケメン……心臓に悪すぎるっ!

「おめでとうかぼパン」

 平静を装いお祝いの言葉を口にする。何故か動揺していると思われたくない。

「うむ、ありがとう名ばかり。それで、キスをしたという事は僕と結婚してくれるのだな?」

 子供の姿の頃と同じような話し方で堂々と聞いてくる。
 あまりのイケメンさに「うん」と答えたくなるけど。

「正直戸惑ってる……子供のかぼパンは知っていても大人のかぼパンを知らないもの」

 これは本音だ。

「見た目が大人だろうが中身は同じ僕だ。そうだろう?」

「その見た目に慣れないって言うか……」

「慣れれば良い。大人の僕の見た目は嫌いか?」

「ううん、嫌いって言うよりむしろ逆?大好物って言うか、イケメンすぎて驚いてる」

 私の言葉に大人かぼパンの瞳がキラキラと輝き、とびきりの笑顔を見せた。

「世界一のイケメンだと言っただろう?」

 世界を救えそうな笑顔でこんなセリフを吐いても嫌味じゃない。
 凄いよ、かぼパン!でも結婚は……

「少し考えさせて!」

 で、はぐらかした。かぼパンは残念そうな表情だったけど、見慣れるまで待ってくれるらしい。

 なんだかんだ、私は大人に戻った時のかぼパンを想像していなかったのだ。
 この先ずっと、小さいままのかぼパンの側に居る想像をしていた。

 それに、王妃様と言う響きがもう……

 かぼパンが5年ぶりに大人に戻れた事ですぐに城は大騒ぎに。

「世界最強のベビーシッター様の手にかかれば解けない魔法すらも解ける!」

 などと書いた号外が発行され、あっという間にマンドローレ全土に知れ渡る。

 翌日には祝いの品が次々と届き、かぼパンとランは対応で大忙し。
 私にもお礼の品と感謝の文が後を絶たず、もうずっと応接室に待機。

 結婚の事なんて考える時間もない。
 部屋の三分の一は贈り物で埋まっている。そんな中コンコンとノックの音が聞こえ、またかと返事を返す。

「はーいどうぞー」

「やっほ」

 顔をヒョイっと出した見慣れたピンク色の髪の毛にホッとする。
 疲れた時に見るイケメンは癒される。

「リュスト~!もう疲れたああぁ」

「アハハ!疲れてるね、でも仕方ないよ、ナナは世界最強のベビーシッター、マンドローレの救世主になったからね」

「救世主か~悪い気はしないけど疲れるかな~ハハ」

 乾いた笑いを見せると、笑顔のリュストが何やらリボンの付いた箱を差し出して来る。

「だよね、疲れてるだろうと思って僕が預かって来たよ。これ、家からのお礼の品」

「ありがと~!リュストが来てくれて助かったよ!開けてもいい?」

「勿論!」

 私はリュストから帽子が入っていそうなサイズの箱を受取り膝に置き、リボンを解いた。
 パカっと蓋を開けて中を見ると、ビンに入ったパステルカラーのキャンディと青くて四角い箱。

「ブルーダイヤとダイヤのネックレスだよ」

 向かいのソファに腰掛けニコニコ顔で説明してくれるリュスト。
 今日で幾ら分の宝石を貰ったのだろうか?
 対応で疲れている今は宝石よりも隣にあるキャンディが嬉しい。

 私はキャンディのビンを取り出し、「私を食べて」と書いてあるシールを見ながらお礼を告げる。

「ありがとう。宝石も嬉しいけど、疲れてる今はこのキャンディが嬉しい」

 そう言いながら蓋を開けると、リュストが声を低くする。

「キャンディだって?そんなもの入れた記憶は……」

 疲れている私はリュストの話を聞きながら、取り出したピンク色のキャンディを口に入れた。

 ちょっと甘すぎに感じるキャンディ。
 甘すぎる感想を伝えようとリュストを見ると、顔色を変え酷く慌てている。

「待ってナナ!そんなキャンディは入れた覚えがないんだ!すぐに吐き出して……」

 そう言われた途端、私はボン!と輝く霧に包まれ、リュストの姿が見えなくなってしまった。

 まさかこれは……魔力の霧……?!



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