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24かぼ!僕の気持ち(かぼパン視点)

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 名ばかりが気になって仕方ないと言う気持ちを知られてしまった。そのせいで毎日最悪だ。

「ウラウラ~、私の事が気になって仕方ないかぼパン可愛いー!」

 ツンツンと頬に当たる指。

 名ばかりはそれはもう楽しそうな笑顔で毎日頭を撫で回し、頬をつつく。

 そもそもウラウラとは何だ?

「ヤメロ!」

「やめなーい!あー、怒ってる顔も可愛いぃ!」

 分かっている。名ばかりが僕のお願いを聞いてくれる事なんてない。

「そうプンプンするなら抱っこしちゃおっかな~」

「す、る、な」

「じゃあ、キスしちゃおっかな~」

 キスだとっ?!
 こんな事を言われると途端に胸がドキっと高鳴り、一気に顔が熱くなってくる。
 それをこの名ばかりは……

「あー、照れたぁ!可愛い~」 

 笑い飛ばすのだ!

「や、め、ろぉぉぉお!」

「あははははは!」

 恥ずかしすぎて、必死に抵抗する僕を見て名ばかりはゲタゲタ声を上げて笑う。
 まったく品がない。

「可愛いですね」

「ねー!写真撮ってる?」

「僕が撮ってますよ」

 散々僕をドキドキさせておいて、ランとリュストと3人で人を見せ物のように扱い、写真を撮り喜ぶ。

 悔しい。
 だが名ばかりが僕だけではなく、ランとリュストと仲が良い事がもっと悔しい。

 名ばかりはずっと僕に構って揶揄っていればいいのだ。

 拗ねたように唇を突き出してみせると、名ばかりが嬉しそうに瞳を輝かせる。これは可愛いぼくを見た時の瞳だ。

 キラキラしたこの瞳は悪くない。

「ほら、見て!何か考え込んでいるようなこのムスッとしたへの字口!ふぁーっ、たまんないっ!可愛いが過ぎるっ」

 思った通り、名ばかりは頬を染めて僕に夢中になる。

 ……僕は多分名ばかりに出会ってすぐ、大袈裟に表現するようになった。
 初めは僕が小さくても分かりやすいだろうとやった事だが、名ばかりが喜び、やたらと構った。最初は嫌だと思ったが、いつの間にか気を引く為にやっていた気がする。

 こうやって瞳を輝かせて僕だけを見ているのは気分が良い。
 他の男と話しているのは正直面白くないからな。

 ランに教えてもらったが、僕のこの気持ちは嫉妬と言う物だ。
 僕が名ばかりに抱く感情こそが恋なのだと延々と語られたのだ。

「その突き出したへの字のお口を掴んでもいいでちゅか?」

 デレデレと鼻の下を伸ばしたマヌケ面で言ってくる。なぜ僕はこんなヘラヘラ子供扱いしてくる名ばかりに心を奪われたのか!

「良いわけないだろう!しかも何回も言っているが僕は子供じゃないぞ!」

「分かってまーす!ああ、本当に可愛いからやっぱりチューしちゃおっかな~!大人に戻れるかも知れないよ?なんたってかぼパンは私の事を好きになりかけてるから!」

 バカか!好きになりかけじゃなくて好きなのだ。
 本気で悔しいが認めるしかない。

 だが名ばかりは僕にキスをすると軽く言っているが、相手が僕じゃなくても出来る気がするぞ。

 ランが相手でもリュストでも平気でキスしそうで怖い。

 ああ。自分で考えて胸が痛い。

「僕が可愛いからキスすると言うが、名ばかりは可愛くなくてもキス出来るんじゃないのか?ランとか、リュストとでも……」

 口に出して更に胸が傷む。何故こんな事を言ってしまったのか。まさか、気持ちを確かめたいのか?

 名ばかりはうーんと首を傾げ、ランとリュストの顔を交互に見て頷いた。

「2人ともイケメンだからね!頬にキスとか平気かな!あはは」

 くうぅ。今僕のハートが粉々に割れた気がするぞ。名ばかりは平気だと心のどこかで分かっていたのにも関わらず。
 
 内心落ち込むと、ランが僕に同情の目を向けた。

 ランよ、聞いたか?名ばかりは僕の事を好きだと言うがやはり恋じゃ無い。分かっていたが……
 可愛い子供、悪く言えばペットのような好きなのだろう。

 僕は言葉一つに胸を焦がし、キスをすると言われ期待するが男としてでは無いこの虚しさ。

 マンドローレ全乙女の初恋の人と異名を持っていたらしいこの僕が。

 こんな、ヘラヘラした名ばかりに片思いとは……!

 ランが僕をじっと見ていたが、突然クスッと笑った。

 ——同情していたのでは無いのか?

 産まれた頃からの付き合いのランだ。こう言う微笑みをする時は大体ろくな事を考えていない。

「奈那様、私の頬に軽くキスしてくださいませんか?」

 がああぁぁ?!

 ランが平然と言った言葉に魂が飛んで行きそうな衝撃を受けてしまった。
 何を言っているんだ?心臓部がドキドキを通り越して痛いぞ。

「えっ?いいの?」

 おいおい、名ばかりも嬉しそうに「いいの?」じゃないだろう?!絶対にダメだ!

「ちょっと待て!ダメだぞ?絶対にダメだ!」

「何故ですか?」

 ランが目を丸くして聞いてくるが、分かっているくせに!わざとらしいぞ!

「名ばかりは……名ばかりだからだっ!」

「意味が分かりません」

 ニヤついた口元に殺意が湧いて来る。ランは言わせたいのだ。
 決定的な一言を。僕が名ばかりを好きだと言う事を!

 言うものか!

「陛下、意地を張っていたら私は奈那様にキスしてもらいますよ。本気です」

 コイツ……ぬけぬけと!

 薄々感じていたがランは名ばかりの事を気に入っている。
 今ここで頬に軽くキスをしてしまったら「ランとなら全然平気!イケメンだし。口にも出来ると思う!」なんて言い出しそうだ。

 そして僕がいない場所で口にキスをして大人の関係に……うああああああ!想像しただけで心が破れそうだ!

 名ばかりの事だ。ありそうで怖い。捕まえておかないと何をするか分からない!

「ダメだっ!名ばかりは僕のものだ!誰にも渡さないっ!」

 恥を忍んで必死に叫んでみたが、名ばかりは膝を曲げニコニコと僕の頭を撫でた。

「あれ~?かぼパンてば、私の事が好きになりかけじゃ無くて、もしかして好きなのかな~?」

 相変わらず子供に話すように話してくるのに腹が立つ。

 この完全に子供扱いしている名ばかりに、僕の事が男として好きだと言わせてみたい。
 僕が悩んでいるように、胸を痛めているように、名ばかりの事しか考えられないように、名ばかりにも僕と同じ気持ちを抱かせてやりたい。

 僕の事を好きになれ!

 緩んだ涙腺を抑えるように歯を食いしばり一呼吸置き口を開く。
 心臓部がドンドンと叩くようにうるさいが構うものか。

「そうだ!僕は名ばかりが好きだ!大人に戻ったら結婚してほしい!だからっ、唇にキスして僕を大人に戻せっ!」

 本音を叫ぶと抑えていたはずの涙腺も緩み、涙がボロボロ溢れた。

 名ばかりは口を大きく開け、酷く驚いた顔で僕を見つめた。

「えええ?えっ?え?」

 信じられないのか、胸を押さえ少し放心状態の様子の名ばかりだったが、屈んで僕の視点に合わせた。
 僕の顔を見てようやく我に返ったのか、切ない顔つきで僕の涙を指で拭う。

「泣かないで、かぼパン」

 優しい指先。優しい瞳。なんだかんだと優しい名ばかりはゆっくりと僕の唇に自分の自分の唇を軽く重ねた——

















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