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荷台の秘め事:トラック大脱出劇
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ここは郊外の零細運送会社。
昼休みの社内はのんびりとした空気が流れていた。
僕はこの会社の唯一の営業マンだ。主任だ。
実は事務員の初恵と付き合っている。
社内では絶対に秘密の関係だ。
なぜならお互い思いっきり既婚者なのだ…。
社内で二人きりになれる場所を探すのはいつも苦労する。
今日の密会場所は、同僚の島田のトラックの荷台。
午後の配送予定はないと聞いていたので、バレる心配はないはずだった。
「ああ初恵…」
「主任…こんなところでダメよ…」
「ここは大丈夫だよ…さあ…恥ずかしがらずに…」
「主任…アッ…そこは…」
「……」
「……っ」
バタン!
突然、荷台の扉が閉まった。
「え? ちょ、ちょ、待っ!」
反射的に扉に手を伸ばしたが、外から鍵がかけられた。扉はびくともしない。
「うそでしょ!? 出られない!」
そしてトラックのエンジンがかかり発信してしまった。
「どどどどどどうしよう!」
焦る僕を尻目に、初恵はスマホを取り出して島田に電話をかけた。
「あ、島田さん? あの、今日は出発前に残業申請の書類は出したかしら?」
「ああ、今から東京都内の倉庫だよ。急に入った依頼でさ。その後は大阪支店まで行く予定。初恵さん、悪いね俺の分の残業申請お願いしていい?」
「お、大阪!?」
聞き間違いであってほしいと思ったが、現実は非情だった。
僕たちは顔面蒼白になった。
僕は慌てて事務所にいる部長に電話した。
「あ、部長!僕にさっきお客さんから呼び出しがあって!長くなりそうなのでそのまま直帰します!ええ、問題ないです!
あ、あと、初恵さんが昼休み中に具合が悪くなったんで早退したそうです。ええ、大丈夫みたいです!」
これで僕たちが午後にいないことのとりあえずの辻褄は合う。
「このまま大阪なんて無理だ! 途中で脱出するしかない!」
まずは集荷場所の東京都内の倉庫での脱出を試みることにした。
トラックが倉庫に到着すると、荷台の扉がガチャリと開いた。
倉庫スタッフがいったん離れる足音がする。荷積みの応援を呼びに行ったようだ。
チャンスは今しか無い!
僕は初恵の手を取り、音を立てないように身を屈めて外に出ようとした。
倉庫スタッフ数名の足音はすぐ近くに迫っていた。
「今だ!」
タイミングを見計らって飛び出した!
しかし、初恵の足がもつれて荷台の端に引っかかり、バランスを崩して転びそうになった。
「キャッ!」
反射的に僕が抱きかかえる形になり、二人して荷台の中に倒れ込む。
その瞬間、倉庫スタッフが荷物を持ってやってきた。
「危ない…!」
声を殺して運び込まれた荷物の陰に身を潜める。
スタッフは怪訝そうに辺りを見回したが、特に異変に気づくことなく荷物を積み込み、扉をバタンと閉めた。
「くそっ、もう少しで…なんであんな時に転ぶんだよ。」
「だってスカートが…」
「え?」
「主任が下ろしたスカートがまだ上がってなかったのよ!」
「ご…ごめん」
僕たちは、再び暗闇に閉じ込められた。
「うそだろ…このまま高速道路に…」
「も、もう扉壊して飛び降りるしかないじゃない!」
錯乱する初恵をなんとか宥め、僕は次の作戦を考える。
「島田が休憩するタイミングを見計らって、なんとか脱出するぞ!」
しかし島田の行動パターンを考えたら休憩するサービスエリアは大分先になる。
その時、初恵が閃いた。
「そうだ、島田さんにお土産を頼めば海老名SAに寄ってくれるんじゃない?」
「なるほど! ナイスだ、初恵!」
初恵は島田に電話をかける。
「もしもし?ねえ島田さん、よかったら海老名SAのメロンパン買ってきてちょうだい。」
「参ったなあ、初恵さんには残業申請お願いしちゃったし、断れねえな。寄っていくよ。」
手前の海老名SAへと休憩場所を変更させることに成功した。
さらに、僕が嘘の電話を入れた。
「島田!俺だ!得意先から今連絡があって、積み込んだ荷物に私物が紛れてないか確認してくれないか?え?ええと、大人用紙オムツの段ボールだ!あるとしたら一番外側だ!」
「あ、そうなのか? よし、ちょうど初恵さんにメロンパン頼まれてるし、海老名SAですぐ確認するよ。」
島田をすっかり信じ込ませることに成功した。
荷台の中でガッツポーズを決める僕たち。
海老名SAに到着すると、島田がトラックを停め、荷台の扉がガチャリと開いた。
僕たちは息を潜め、島田が荷物を確認するのを待った。
「まったく、紙オムツの箱なんかと間違うわけないよな…。」
島田が荷物を軽く覗き込んだ瞬間、僕たちは身体を縮めた。
もし見つかれば、不倫は確実にバレる。会社での居場所もなくなる。
「……ふぅ、さすがに大丈夫か。」
島田が安堵の声を漏らした。
その瞬間、初恵が島田の電話をコールし、島田を荷台から離れさせる作戦を決行。
「今だ!」
僕たちは転がるように外へ飛び出し、トラックの陰に身を隠した。
「あれ?切れちゃった。初恵さんメロンパンの催促かなぁ…?」
島田がトイレへ向かったのを確認してから、僕たちは猛ダッシュでSAの建物の陰へ駆け出した。
振り返る余裕もない。ただ、バレる前に逃げ切ることだけを考えていた。
「はぁ…はぁ…やっと、出られた…」
ホッとしたのも束の間。僕たちはSAの駐車場に立ち尽くした。
「…ここ、高速道路だよね?」
脱出には成功したものの、お互いの家庭にバレないようにどうやって帰るんだ。
途方に暮れる僕たちをよそに島田のトラックが出発して行った。
昼休みの社内はのんびりとした空気が流れていた。
僕はこの会社の唯一の営業マンだ。主任だ。
実は事務員の初恵と付き合っている。
社内では絶対に秘密の関係だ。
なぜならお互い思いっきり既婚者なのだ…。
社内で二人きりになれる場所を探すのはいつも苦労する。
今日の密会場所は、同僚の島田のトラックの荷台。
午後の配送予定はないと聞いていたので、バレる心配はないはずだった。
「ああ初恵…」
「主任…こんなところでダメよ…」
「ここは大丈夫だよ…さあ…恥ずかしがらずに…」
「主任…アッ…そこは…」
「……」
「……っ」
バタン!
突然、荷台の扉が閉まった。
「え? ちょ、ちょ、待っ!」
反射的に扉に手を伸ばしたが、外から鍵がかけられた。扉はびくともしない。
「うそでしょ!? 出られない!」
そしてトラックのエンジンがかかり発信してしまった。
「どどどどどどうしよう!」
焦る僕を尻目に、初恵はスマホを取り出して島田に電話をかけた。
「あ、島田さん? あの、今日は出発前に残業申請の書類は出したかしら?」
「ああ、今から東京都内の倉庫だよ。急に入った依頼でさ。その後は大阪支店まで行く予定。初恵さん、悪いね俺の分の残業申請お願いしていい?」
「お、大阪!?」
聞き間違いであってほしいと思ったが、現実は非情だった。
僕たちは顔面蒼白になった。
僕は慌てて事務所にいる部長に電話した。
「あ、部長!僕にさっきお客さんから呼び出しがあって!長くなりそうなのでそのまま直帰します!ええ、問題ないです!
あ、あと、初恵さんが昼休み中に具合が悪くなったんで早退したそうです。ええ、大丈夫みたいです!」
これで僕たちが午後にいないことのとりあえずの辻褄は合う。
「このまま大阪なんて無理だ! 途中で脱出するしかない!」
まずは集荷場所の東京都内の倉庫での脱出を試みることにした。
トラックが倉庫に到着すると、荷台の扉がガチャリと開いた。
倉庫スタッフがいったん離れる足音がする。荷積みの応援を呼びに行ったようだ。
チャンスは今しか無い!
僕は初恵の手を取り、音を立てないように身を屈めて外に出ようとした。
倉庫スタッフ数名の足音はすぐ近くに迫っていた。
「今だ!」
タイミングを見計らって飛び出した!
しかし、初恵の足がもつれて荷台の端に引っかかり、バランスを崩して転びそうになった。
「キャッ!」
反射的に僕が抱きかかえる形になり、二人して荷台の中に倒れ込む。
その瞬間、倉庫スタッフが荷物を持ってやってきた。
「危ない…!」
声を殺して運び込まれた荷物の陰に身を潜める。
スタッフは怪訝そうに辺りを見回したが、特に異変に気づくことなく荷物を積み込み、扉をバタンと閉めた。
「くそっ、もう少しで…なんであんな時に転ぶんだよ。」
「だってスカートが…」
「え?」
「主任が下ろしたスカートがまだ上がってなかったのよ!」
「ご…ごめん」
僕たちは、再び暗闇に閉じ込められた。
「うそだろ…このまま高速道路に…」
「も、もう扉壊して飛び降りるしかないじゃない!」
錯乱する初恵をなんとか宥め、僕は次の作戦を考える。
「島田が休憩するタイミングを見計らって、なんとか脱出するぞ!」
しかし島田の行動パターンを考えたら休憩するサービスエリアは大分先になる。
その時、初恵が閃いた。
「そうだ、島田さんにお土産を頼めば海老名SAに寄ってくれるんじゃない?」
「なるほど! ナイスだ、初恵!」
初恵は島田に電話をかける。
「もしもし?ねえ島田さん、よかったら海老名SAのメロンパン買ってきてちょうだい。」
「参ったなあ、初恵さんには残業申請お願いしちゃったし、断れねえな。寄っていくよ。」
手前の海老名SAへと休憩場所を変更させることに成功した。
さらに、僕が嘘の電話を入れた。
「島田!俺だ!得意先から今連絡があって、積み込んだ荷物に私物が紛れてないか確認してくれないか?え?ええと、大人用紙オムツの段ボールだ!あるとしたら一番外側だ!」
「あ、そうなのか? よし、ちょうど初恵さんにメロンパン頼まれてるし、海老名SAですぐ確認するよ。」
島田をすっかり信じ込ませることに成功した。
荷台の中でガッツポーズを決める僕たち。
海老名SAに到着すると、島田がトラックを停め、荷台の扉がガチャリと開いた。
僕たちは息を潜め、島田が荷物を確認するのを待った。
「まったく、紙オムツの箱なんかと間違うわけないよな…。」
島田が荷物を軽く覗き込んだ瞬間、僕たちは身体を縮めた。
もし見つかれば、不倫は確実にバレる。会社での居場所もなくなる。
「……ふぅ、さすがに大丈夫か。」
島田が安堵の声を漏らした。
その瞬間、初恵が島田の電話をコールし、島田を荷台から離れさせる作戦を決行。
「今だ!」
僕たちは転がるように外へ飛び出し、トラックの陰に身を隠した。
「あれ?切れちゃった。初恵さんメロンパンの催促かなぁ…?」
島田がトイレへ向かったのを確認してから、僕たちは猛ダッシュでSAの建物の陰へ駆け出した。
振り返る余裕もない。ただ、バレる前に逃げ切ることだけを考えていた。
「はぁ…はぁ…やっと、出られた…」
ホッとしたのも束の間。僕たちはSAの駐車場に立ち尽くした。
「…ここ、高速道路だよね?」
脱出には成功したものの、お互いの家庭にバレないようにどうやって帰るんだ。
途方に暮れる僕たちをよそに島田のトラックが出発して行った。
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