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秘密の一夜、魅惑の赤ワインと香水の残り香
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美香が目を覚ますと、自宅のベッドの上だった。
しかも一糸まとわぬ姿。
隣には…だれもいない。
「……え、なにこれ、なにがあったの!?」
部屋に男がいた痕跡をわずかに感じる。
かすかに男物の香水の匂いが漂っている。
「え? や、やっぱり男がいたの!? 誰!? まさか…鈴木さんとか!?」
しかし状況に脳が付いてこない。頭はガンガン痛むし、体は妙にダルい。二日酔いだ。
そうだった。昨夜は会社の営業部の飲み会だった。20人くらいの大所帯。
その中には憧れの鈴木さんもいたのでついつい飲み過ぎてしまった。
あの優しくて紳士的イケメンな先輩と隣同士の席。
記憶を辿ろうとするが、途中から断片的にしか思い出せない。
とりあえず状況整理だ。
昨夜、飲みすぎて記憶が飛んだ。朝起きたら裸。そして、男の香水の匂い。
「やっぱり…誰かと一夜を共にしてしまったの!?」
可能性のある相手を一応考えてみる。
やたら美香にグイグイくる同じ課の橋本?
「あ、アイツ昨日の飲み会欠席だわ。」
隣の課の山本さん?
「いやいやいや、それはないでしょ!ありえない!あの陰キャっぽい人と…絶対ムリ!」
まさか佐藤課長?
「あー、それもないわ。課長ならもうちょっと加齢臭が…」
そう考えるとやっぱり…憧れの鈴木さん。
「いやいや、そんな夢みたいな…でも、あの香水の匂いって、鈴木さんが使ってたやつに似てるような…?」
二日酔いでも会社には行かないといけない。
ぼんやりとした頭で支度を始めると、洗濯機の中に昨夜の勝負下着が入っていた。
「うわ、めっちゃ派手…頑張ったんだな、私」
鈴木さんがいる飲み会なので新しい勝負下着をおろしていったんだった。
と、その下に、男物のワイシャツが。
しかも、うっすらと赤ワインのシミがついている。
「……これ、見覚えがある! 昨日、鈴木さんが着てたやつじゃない!?鈴木さんワイン飲んでた!」
美香の頭の中でパズルのピースがカチッとハマった。
「まさか、憧れの鈴木さんと既成事実を…!? やるじゃん私!?」
一気にテンションが上がった。
「あの鈴木さんと?やっちゃった…。 夢みたい!」
鈴木さんとの夜がどんなだったか、一切覚えていないことだけが悔やまれる。
通勤しながら鈴木さんとあったことを想像すると、二日酔いも覚めてスッキリしてきた。
意気揚々と出社すると、やっぱりみんなの視線を感じる。みんな妙に優しい。
「大丈夫? 昨日、かなり酔ってたけど…」
「無理しないでね…」
なんだか腫れ物に触るような対応だ。
「やっぱり、私、鈴木さんと…みんな知ってるってこと!?」
顔が赤くなる。心の中でニヤけるのを必死に抑える。
「うわー、私、ついに憧れの人をゲットしちゃった!?」
その時、鈴木さんから社内メールが届いた。
「昨日はありがとう。よく眠れた? それと、◯◯さんの弟さんにもよろしく」
「弟…? なんで鈴木さんが弟のこと知ってるの?
もしかして、彼氏として正式に紹介してほしいってこと!?」
美香の弟も同じ時期に上京して近くに住んでいる。女の同僚には話したことがあったが鈴木さんにはそこまで詳しく話したことはなかった。
「一夜限りってわけじゃなくて、鈴木さんはこれからの二人のことも真剣に考えてくれてるってことかも。」
美香はますます舞い上がった。
舞い上がった気持ちのまま会社から帰ると、鈴木さんのワイシャツのワインのシミ抜きをして、洗濯して丁寧にアイロンをかけた。私のお気に入りの柔軟剤の香りもちゃっかり残して。
「鈴木さん、きっと私の家庭的な一面に惚れ直しちゃうかも…!」
翌日、人気のない会議室に鈴木さんを呼び出した。
「なに?なに?どうしたの?」
と付いてくる鈴木さん、もうとぼけちゃって。わかってるくせに。
美香は照れながら洗濯済みのワイシャツを差し出した。
「こ、これ…洗っておきました。
それと…その…また、この前の続きが…したいな…なんて」
言ってしまってから顔が真っ赤になった。
鈴木さんは一瞬ポカンとした後、ゲラゲラと笑いはじめた。
「あはは、気にしなくてよかったのに! 君があんなに赤ワイン飲むとは思わなくて、びっくりしたよ。まさか、あんな派手にぶちまけるとはね!」
「ぶ、ぶちまける…?何を?」
鈴木さんの話によると、真相はこうだった。
美香は隣の席で話せた嬉しさから、鈴木さんと同じ赤ワインをがぶ飲み。
「え?そんなにどんどん飲んで大丈夫?」
「らぁいじょうぶれすって~!先輩もほらどんどん飲んで、どんどん、どんどん!」
結果、前後不覚になり、鈴木さんの目の前で赤ワインを豪快にリバース。
「ゲエエエエ!」
「うわあ!」という鈴木さんの叫び声とともに、彼のワイシャツがワインまみれになってしまった。
周囲は美香の醜態にドン引き。
当の美香は「らあいじょうぶれすって~わらしが責任取って洗いますからぁ~!」と言い張り、鈴木さんのワイシャツを無理やり剥ぎ取ったらしい。
そして、その後酔いつぶれて店で寝てしまい、呆れた佐藤課長が近所に住んでいる美香の弟に仕方なく連絡。
弟が平謝りしながらタクシーで迎えに来て、美香を家まで送り届けたとのこと。
とんだ赤っ恥だ!会社のみんなの「こいつどうすんだ」的な視線も納得できる!
私は何を勘違いしてたの!
鈴木さんと既成事実どころか、絶対やばい女じゃん!
一部始終を聞かされた美香は真っ赤な顔でひたすら鈴木さんに謝るしかなかった。
後日弟から連絡があった。
そういえば弟も香水プンプン付けるタイプだった。
「実家の時と同じだよ。姉貴が自分で脱いでたよ。面倒くせえからすぐ帰ったわ。」
美香は、ガックリとうなだれた。
「…弟、はやく教えてよ…!」
憧れの一夜は、まさかの赤ワインまみれの赤っ恥の夜だった。
これから会社でどうやって生きていこう…。
しかも一糸まとわぬ姿。
隣には…だれもいない。
「……え、なにこれ、なにがあったの!?」
部屋に男がいた痕跡をわずかに感じる。
かすかに男物の香水の匂いが漂っている。
「え? や、やっぱり男がいたの!? 誰!? まさか…鈴木さんとか!?」
しかし状況に脳が付いてこない。頭はガンガン痛むし、体は妙にダルい。二日酔いだ。
そうだった。昨夜は会社の営業部の飲み会だった。20人くらいの大所帯。
その中には憧れの鈴木さんもいたのでついつい飲み過ぎてしまった。
あの優しくて紳士的イケメンな先輩と隣同士の席。
記憶を辿ろうとするが、途中から断片的にしか思い出せない。
とりあえず状況整理だ。
昨夜、飲みすぎて記憶が飛んだ。朝起きたら裸。そして、男の香水の匂い。
「やっぱり…誰かと一夜を共にしてしまったの!?」
可能性のある相手を一応考えてみる。
やたら美香にグイグイくる同じ課の橋本?
「あ、アイツ昨日の飲み会欠席だわ。」
隣の課の山本さん?
「いやいやいや、それはないでしょ!ありえない!あの陰キャっぽい人と…絶対ムリ!」
まさか佐藤課長?
「あー、それもないわ。課長ならもうちょっと加齢臭が…」
そう考えるとやっぱり…憧れの鈴木さん。
「いやいや、そんな夢みたいな…でも、あの香水の匂いって、鈴木さんが使ってたやつに似てるような…?」
二日酔いでも会社には行かないといけない。
ぼんやりとした頭で支度を始めると、洗濯機の中に昨夜の勝負下着が入っていた。
「うわ、めっちゃ派手…頑張ったんだな、私」
鈴木さんがいる飲み会なので新しい勝負下着をおろしていったんだった。
と、その下に、男物のワイシャツが。
しかも、うっすらと赤ワインのシミがついている。
「……これ、見覚えがある! 昨日、鈴木さんが着てたやつじゃない!?鈴木さんワイン飲んでた!」
美香の頭の中でパズルのピースがカチッとハマった。
「まさか、憧れの鈴木さんと既成事実を…!? やるじゃん私!?」
一気にテンションが上がった。
「あの鈴木さんと?やっちゃった…。 夢みたい!」
鈴木さんとの夜がどんなだったか、一切覚えていないことだけが悔やまれる。
通勤しながら鈴木さんとあったことを想像すると、二日酔いも覚めてスッキリしてきた。
意気揚々と出社すると、やっぱりみんなの視線を感じる。みんな妙に優しい。
「大丈夫? 昨日、かなり酔ってたけど…」
「無理しないでね…」
なんだか腫れ物に触るような対応だ。
「やっぱり、私、鈴木さんと…みんな知ってるってこと!?」
顔が赤くなる。心の中でニヤけるのを必死に抑える。
「うわー、私、ついに憧れの人をゲットしちゃった!?」
その時、鈴木さんから社内メールが届いた。
「昨日はありがとう。よく眠れた? それと、◯◯さんの弟さんにもよろしく」
「弟…? なんで鈴木さんが弟のこと知ってるの?
もしかして、彼氏として正式に紹介してほしいってこと!?」
美香の弟も同じ時期に上京して近くに住んでいる。女の同僚には話したことがあったが鈴木さんにはそこまで詳しく話したことはなかった。
「一夜限りってわけじゃなくて、鈴木さんはこれからの二人のことも真剣に考えてくれてるってことかも。」
美香はますます舞い上がった。
舞い上がった気持ちのまま会社から帰ると、鈴木さんのワイシャツのワインのシミ抜きをして、洗濯して丁寧にアイロンをかけた。私のお気に入りの柔軟剤の香りもちゃっかり残して。
「鈴木さん、きっと私の家庭的な一面に惚れ直しちゃうかも…!」
翌日、人気のない会議室に鈴木さんを呼び出した。
「なに?なに?どうしたの?」
と付いてくる鈴木さん、もうとぼけちゃって。わかってるくせに。
美香は照れながら洗濯済みのワイシャツを差し出した。
「こ、これ…洗っておきました。
それと…その…また、この前の続きが…したいな…なんて」
言ってしまってから顔が真っ赤になった。
鈴木さんは一瞬ポカンとした後、ゲラゲラと笑いはじめた。
「あはは、気にしなくてよかったのに! 君があんなに赤ワイン飲むとは思わなくて、びっくりしたよ。まさか、あんな派手にぶちまけるとはね!」
「ぶ、ぶちまける…?何を?」
鈴木さんの話によると、真相はこうだった。
美香は隣の席で話せた嬉しさから、鈴木さんと同じ赤ワインをがぶ飲み。
「え?そんなにどんどん飲んで大丈夫?」
「らぁいじょうぶれすって~!先輩もほらどんどん飲んで、どんどん、どんどん!」
結果、前後不覚になり、鈴木さんの目の前で赤ワインを豪快にリバース。
「ゲエエエエ!」
「うわあ!」という鈴木さんの叫び声とともに、彼のワイシャツがワインまみれになってしまった。
周囲は美香の醜態にドン引き。
当の美香は「らあいじょうぶれすって~わらしが責任取って洗いますからぁ~!」と言い張り、鈴木さんのワイシャツを無理やり剥ぎ取ったらしい。
そして、その後酔いつぶれて店で寝てしまい、呆れた佐藤課長が近所に住んでいる美香の弟に仕方なく連絡。
弟が平謝りしながらタクシーで迎えに来て、美香を家まで送り届けたとのこと。
とんだ赤っ恥だ!会社のみんなの「こいつどうすんだ」的な視線も納得できる!
私は何を勘違いしてたの!
鈴木さんと既成事実どころか、絶対やばい女じゃん!
一部始終を聞かされた美香は真っ赤な顔でひたすら鈴木さんに謝るしかなかった。
後日弟から連絡があった。
そういえば弟も香水プンプン付けるタイプだった。
「実家の時と同じだよ。姉貴が自分で脱いでたよ。面倒くせえからすぐ帰ったわ。」
美香は、ガックリとうなだれた。
「…弟、はやく教えてよ…!」
憧れの一夜は、まさかの赤ワインまみれの赤っ恥の夜だった。
これから会社でどうやって生きていこう…。
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