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バレたら死ぬ恋愛小説、全国発売
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「ちょっと、聡! これ、何なの?」
ある日の放課後、クラスの人気者・凛が鬼の形相で僕の元へと歩いてきた。
手には一冊の本。
僕が書いた、あの本だ。
『漆黒の契約 ~孤高の魔導士と白銀の姫君~』
うおおおおおおお!!!
なんでバレてるんだよおおおおお!!!
「えっと……どこで手に入れたんですか?」
「駅前の書店に平積みされてたわよ!」
「大人気ですね……」
「そうじゃなくて! これ、どう読んでも私とあなたの話じゃない!
著者のペンネームSad Seaって聡でしょ?」
そう、僕は陰キャな高校生・聡。
地味で友達も少なく、もっぱら趣味はネット小説投稿だった。
好きな子をモデルにこっそり恋愛小説を書くのは、だれでもしてるはず…。
それがまさか、世に出てしまうとは。
そもそもの始まりは、僕の淡い片思いだった。
同じクラスの天真爛漫な美少女・凛。
僕とは住む世界が違うはずなのに、なぜかたまに話しかけてくれる。
僕の書いた小説では、そんな彼女を「白銀の姫君」として描き、僕は「漆黒の魔導士」としてクールでミステリアスな最強キャラに仕立て上げた。
作中では二人が運命的に結ばれる。最初はツンツンしている彼女も、物語が進むにつれ、
『あなたが、私の運命の人だったのね……好き…』
なんて甘い言葉を囁くのだ。
そして、その中二病の物語が、まさかの恋愛小説大賞を受賞。
いつの間にか書籍化されて、全国の書店に並んでしまった。
しかし問題は、それだけではない。
「聡、これさ……まさかとは思うけど……文化祭のペア割りの話まで出てるんだけど?」
「そ、それは……偶然の一致で……!」
「じゃあこの『姫君が文化祭で、漆黒の魔導士を引き当ててしまい、顔を真っ赤にしていた』って話は?」
「……」
「さらに、あんたの誕生日に私がジュースおごった話も出てるんだけど?クーポン内容まで一致するわけある?」
「偶然です!!!」
もう無理だ、絶対バレてる。
そして、さらなる問題があった。
この作品、まだ連載中なのだ。
「ねえ、最新話のタイトル、これ何?『運命の夜 ~姫君と魔導士の禁断の誓い~』……」
やばい。
「しかもさ、次回予告に『二人はついに、夜の契約を交わす……!?』って書いてあるんだけど?」
ああああああ!!!
そう、物語が進むと、もっと甘くてエッチな展開が待っている。
まだ書籍化はしていないが、原稿はすでに出来上がっているのだ。
これが公開されたら、凛にエロい展開まで読まれてしまう!!!
バレる前に何とかしないと……
「……あ、あのさ!」
僕は覚悟を決めた。
「僕と、付き合ってください!!!」
「……は?」
「もうバレてるのは仕方ないし、だったら、現実でも結ばれるしかないっていうか……」
「……」
凛は、驚いたように目を見開いていた。ドン引きしてるかと思ったら、笑って
「……まあ、これだけ想われてたら、悪くないかもね?」
そして、
「じゃあ、カッコよくエスコートしてね? 漆黒の魔導士さん♡」
僕の妄想は、まさかのハッピーエンドの現実へと転がっていった。
ある日の放課後、クラスの人気者・凛が鬼の形相で僕の元へと歩いてきた。
手には一冊の本。
僕が書いた、あの本だ。
『漆黒の契約 ~孤高の魔導士と白銀の姫君~』
うおおおおおおお!!!
なんでバレてるんだよおおおおお!!!
「えっと……どこで手に入れたんですか?」
「駅前の書店に平積みされてたわよ!」
「大人気ですね……」
「そうじゃなくて! これ、どう読んでも私とあなたの話じゃない!
著者のペンネームSad Seaって聡でしょ?」
そう、僕は陰キャな高校生・聡。
地味で友達も少なく、もっぱら趣味はネット小説投稿だった。
好きな子をモデルにこっそり恋愛小説を書くのは、だれでもしてるはず…。
それがまさか、世に出てしまうとは。
そもそもの始まりは、僕の淡い片思いだった。
同じクラスの天真爛漫な美少女・凛。
僕とは住む世界が違うはずなのに、なぜかたまに話しかけてくれる。
僕の書いた小説では、そんな彼女を「白銀の姫君」として描き、僕は「漆黒の魔導士」としてクールでミステリアスな最強キャラに仕立て上げた。
作中では二人が運命的に結ばれる。最初はツンツンしている彼女も、物語が進むにつれ、
『あなたが、私の運命の人だったのね……好き…』
なんて甘い言葉を囁くのだ。
そして、その中二病の物語が、まさかの恋愛小説大賞を受賞。
いつの間にか書籍化されて、全国の書店に並んでしまった。
しかし問題は、それだけではない。
「聡、これさ……まさかとは思うけど……文化祭のペア割りの話まで出てるんだけど?」
「そ、それは……偶然の一致で……!」
「じゃあこの『姫君が文化祭で、漆黒の魔導士を引き当ててしまい、顔を真っ赤にしていた』って話は?」
「……」
「さらに、あんたの誕生日に私がジュースおごった話も出てるんだけど?クーポン内容まで一致するわけある?」
「偶然です!!!」
もう無理だ、絶対バレてる。
そして、さらなる問題があった。
この作品、まだ連載中なのだ。
「ねえ、最新話のタイトル、これ何?『運命の夜 ~姫君と魔導士の禁断の誓い~』……」
やばい。
「しかもさ、次回予告に『二人はついに、夜の契約を交わす……!?』って書いてあるんだけど?」
ああああああ!!!
そう、物語が進むと、もっと甘くてエッチな展開が待っている。
まだ書籍化はしていないが、原稿はすでに出来上がっているのだ。
これが公開されたら、凛にエロい展開まで読まれてしまう!!!
バレる前に何とかしないと……
「……あ、あのさ!」
僕は覚悟を決めた。
「僕と、付き合ってください!!!」
「……は?」
「もうバレてるのは仕方ないし、だったら、現実でも結ばれるしかないっていうか……」
「……」
凛は、驚いたように目を見開いていた。ドン引きしてるかと思ったら、笑って
「……まあ、これだけ想われてたら、悪くないかもね?」
そして、
「じゃあ、カッコよくエスコートしてね? 漆黒の魔導士さん♡」
僕の妄想は、まさかのハッピーエンドの現実へと転がっていった。
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