うどん大食いチャレンジ体験談

もっくん

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食べても食べても減らないうどん

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想定外だったのは、うどんのスープの量だった。
普通のうどんなら、普通の大きさの丼のせいぜい七分目ほどにスープが入り、その上からうどんがふんわりと顔を出しているものだろう。ごく自然にうどんをすすっていけばスープが半分くらいに減っているもので、あとは飲み干すなり残すなり食べる側に委ねられる。麺と汁のバランスでいえば、あくまで麺が主役、スープは脇役。これがうどん界のスタンダードだ。
だが、この大盛りチャレンジうどんは、その常識を根本から覆してきた。まず、スープが丼の淵ギリギリまで満たされている。すり切りだ。
「日本酒かよ!これ絶対注ぎすぎだろ!」と思うレベルだ。その上に、山盛りご飯のように麺がドサッと積まれ、横から見ると完全に丼のフチを越えた山。
その麺の隙間に表面張力で吸い上げられたスープが持ち上がっている。
スープ+麺で、ひとつの巨大な食物地形が形成されている。

当然、麺をすするたびにスープが溢れそうになる。僕は丼を持ち上げる余裕もなく、途中からはテーブルに置いたまま、まるで井戸の縁に顔を近づけるようにしてスープをズルズル飲む羽目になった。
もっともうどん満載の丼は持ち上げられるような重量ではなかった。
麺を半分くらい食べても麺にまとわりついていたスープが落ちて丼に戻っただけなので丼の縁すれすれのスープが減る兆しがない。確かにスープは麺と一緒にすすっているので胃袋に入っているのだがそれでも丼のスープは減らない。
丼1杯すり切りでは飽き足らず、すり切り+表面張力分のスープが僕にノルマとして課せられていた。
スープだけで2リットルはあったのではないだろうか…。

そして、そのスープが、また絶妙に美味しくない。
薄めた化学調味料の味がほんのり感じられるかどうか。丼は特大だけど、もともとは通常サイズのうどんスープしか入って無くて、それをチャレンジメニューに合わせてお湯で薄めただけなのでは?と疑うほどの淡白さだ。しかも無駄に熱い。もしこの濃さのスープが普通盛りで提供されていたら、僕は絶対に二度と来ないし、このスープの色を目にしたらそもそも一度目すら来なかっただろう。安いとか関係ない。こんな虚無スープに浸かったうどんをわざわざ食べようという動機は僕にはゼロだ。
とはいえチャレンジ中の僕に許された感情はただひとつ。とにかく完食して早く楽になりたいこと。
空腹を極限まで高めてきたおかげで、全体の2/3までは勢いでどうにか食べ進められた。だが、ここからが地獄だった。
まず、体がもう麺を受け付けない。胃の奥底から「もういいよ…うどんは…」というサイレント悲鳴が聞こえてくる。
物量もさることながら、単調な味に完全に飽きているのだ。さらに、さっき飲んだ熱いスープと一緒に胃に落ちていった麺たちが、内部でスープを吸って膨張を始めている気配を感じる。これは錯覚ではない。確実に体積が増えている。胃袋がパンパンで、内側から押されているのがわかる。

本来なら水を飲むべきではない。大食いの鉄則である。しかし、もはや冷たい水で流し込まないと飲み込むことすら難しい。ペースはどんどん落ち、額に浮かぶ脂汗。呼吸も荒くなる。だが挑戦したからには完食したいという意地だけで箸を動かす。
そして具材を後半に残したのが完全に失敗だった。

天ぷらはまだ良かった。油が喉を滑らせてくれるので、3回噛んだらほぼ丸飲みという禁断のワザで乗り切ることができた。しかし、問題はわかめだ。
このわかめ、とにかく減らない。食べても食べても姿を消さないどころか、スープを吸ってどんどん巨大化しているように見える。胃に入ったら最後、内部でさらなる膨張を始めている実感がある。
まるで生き物のようだ。
いや、これはもう店側の罠としか思えない。

そういえばここのテナント、前はわかめラーメンが入ってたな。まさか同じオーナーが居抜きで業態転換したんじゃ?そんな今はどうでもいい想像がもうろうとする脳内を巡っていた。

残り1/3のうどん、膨張するわかめ、無限に感じるスープ。
時間は刻一刻と迫り、僕は洗面器サイズの丼を前に、ひたすら無言で格闘し続けた。

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