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釧路中国人女性教師行方不明事件
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2017年7月、中国人女性観光客の行方不明が北海道内で捜索案件として扱われることになった。
行方不明となったのは中国福建省出身の女性、Kさん。1990年生まれの当時26~27歳。
中国国内では小学校で語文(中国語)を教える教師として勤務していた。卒業大学は四川師範大学と報じられており教育系の学歴を経て教職に就いていたとみられる。
家族や同僚の証言として伝えられている限りでは、来日前の生活に大きな異変やトラブルは確認されていない。
精神的に不安定であったり強い悩みを抱えていたといった具体的な情報も公式には出ていなかった。
Kさんは2017年7月18日に観光目的で単独で来日した。旅行先は北海道で航空便で函館に入国後は単独で道内を移動していたとされる。
なお来日は初めてだったと報じられている。
来日後数日間の行動は比較的はっきりしている。
函館、小樽、美瑛、洞爺湖など、いわゆる主要観光地を巡り、その一部は中国のSNS(微博)に写真付きで投稿されていた。
投稿内容は当たり前に日本旅行を楽しんでいる様子が読み取れるものが多く、危機的な状況や異変を示す直接的な表現は確認されていない。
7月下旬には札幌市内のゲストハウスに宿泊していた。
宿泊記録や防犯カメラの映像から、7月22日朝にKさんはこの宿をチェックアウトし札幌を離れている。
その後はJRと路線バスを利用し道東方面へ移動したことが防犯カメラや乗車記録から判明した。
同日午後、釧路駅構内および駅前バスターミナルの防犯カメラに姿が映っている。
この時点でも同行者はおらず単独行動であった。
さらに同日、釧路からバスで阿寒湖温泉方面へ向かったとみられ現地の宿泊施設に一泊している。
阿寒湖温泉は観光地ではあるものの、札幌からはそれなりに距離があり当初の旅行計画に含まれていたかどうかは明らかになっていない。
この移動については後に「Kさんの行動の急な変化」として注目されることになる。
7月23日朝、Kさんは阿寒湖温泉の宿をチェックアウトしている。この際も防犯カメラ映像によって姿が確認されている。
その後、阿寒湖周辺や釧路市街地でコンビニ・商店などの防犯カメラにKさんの映像は複数確認された。
しかし7月23日昼以降、本人と特定できる確実な映像記録は途絶える。
家族との連絡もこの時期を最後に取れなくなり、帰国予定日であった7月25日になっても中国に戻らなかったことから家族が異変に気づき、現地関係機関を通じて北海道警察に捜索が要請されたといういきさつである。
これが北海道警察および中国総領事館、そして一部の野次馬、ネット探偵を巻き込む行方不明事案としての捜索開始の発端である。
Kさんの消息が途絶えた直後の日本側で当初は重大事件として大きく報じられていたわけではなかった。単独旅行中の外国人が一時的に連絡不能になる事例は珍しくなく、初期段階では事故・迷子・通信トラブル・自分の意思での音信不通など比較的軽度の可能性も含めて扱われていた。
中国側の家族と一切連絡が取れない状態が続き手がかりもない中で防犯カメラ映像などの報道が繰り返される度に、注目が注がれるようになる。
Kさんの外見が華やかな若い女性であり、短い防犯カメラ映像で宿のスタッフとのやりとりを見る限りは明るく旅行を楽しむ観光客そのものに見えたのもまた謎を深めて注目度を上げるきっかけとなった。
捜索が本格化するにつれ、警察はKさんの直前の行動履歴を可能な限り明確にする必要に迫られた。
札幌、釧路、阿寒湖温泉周辺で確認された複数の防犯カメラ映像が整理され、
札幌の宿泊先をチェックアウト
JR釧路駅構内
釧路駅前バスターミナル
阿寒湖温泉街
釧路市内の一部商店
などに姿が映っていた事実が公表された。
これにより「Kさんは少なくとも7月23日昼頃までは生存しており、見る限りは観光客として単独で自由に移動していた」という前提が共有されることになる。
途中までは防犯カメラの記録がある一方でその後の足取りが完全に途絶えたことから、メディアでは次第に「不可解な行動」「謎の移動」といった表現が使われ始めた。
特に注目されたのは、
札幌から突然、阿寒湖方面へ向かった点
観光地でありながら、短時間で阿寒湖を離れている点
釧路市内で複数回目撃された後、完全に消息が途絶えた点
だった。
ただしこれらは警察が「不審」と断定した事実ではなく報道上で整理されてネット探偵にも共有された単なる違和感であり、捜査段階では依然として「事故」「体調不良」「移動中のトラブル」などあらゆる可能性が排除されていなかった。
事件性が確定していなかったため、この段階で起きたのはいわゆる純粋な捜索協力の拡大だった。
中国国内ではSNSを通じてKさんの顔写真と行動履歴が拡散されそれが日本国内にも拡散され始めると「似た女性を見た」「阿寒湖周辺で中国語を話す女性がいた」「釧路市内の飲食店に入っていくのを見かけた」といった目撃情報が相次いだ。もちろん真偽不明なものも多く含まれていた。
日本国内でも、釧路・阿寒湖周辺の住民や観光関係者から警察への情報提供が増加した。林道、湖畔、バス停、商店街など、具体的な場所を挙げた通報が寄せられ、警察はその都度、確認や聞き取りを行っている。
この時期に報じられた目撃情報の多くは、夜間や遠目での確認、顔の一致が曖昧、時間帯や服装が確定できないといった理由から、後に本人と断定されるものには至らなかった。
重要なのはこの段階で自殺、他殺、交通事故、港や湖への落水事故から本人の意思での失踪まで何の結論も出ていなかったことである。あくまで行方不明の外国人観光客を探す捜索活動が中心だった点である。
中国総領事館は北海道の現地入りし、警察・自治体・観光関係者との連携を強化。メディアを通じて、広く情報提供を呼びかける声明も出された。
ネット探偵の考察も「なぜそんな場所にいたのか」「何を考えて行動していたのか」という推理的関心はあったものの、根底には「無事に発見される可能性」が残されていた。
トンデモ推理としては日本人あるいは中国人の恋人と駆け落ち、国外亡命、失踪したフリをして極秘帰国、日中どちらかのスパイとして活動しているなどもあった。
2017年8月の捜索開始からおよそ1か月が経過した頃、事態は大きく動いた。
8月中旬、北海道釧路市の海岸付近で女性の遺体が発見された。
発見場所の海岸は市街地からそれほど離れていない一方で、人通りの多い観光エリアではなく、潮汐や海流の影響を受けやすい区域とされている。
発見当初遺体の損傷が激しく身元が即座に特定できる状態ではなかったが、所持品や身体的特徴などから行方不明となっていたKさんである可能性が高いと判断された。
その後関係機関による確認を経て、身元はKさん本人と正式に特定された。
警察の発表によれば、遺体に第三者による明確な暴行痕や致命的な外傷は確認されなかった。
死因は溺水の可能性が高いとされ、事件性を直接示す証拠は見つからなかったとしている。
一方で、海に入った場所、入水時刻、単独か否かといった詳細については断定されず、「事故の可能性」「自死の可能性」の双方を残したままの発表となりその後の確定的な報道はなかった。
遺体の発見地点と、最後に姿が確認されていた釧路市内の防犯カメラ映像とのあいだには、地理的な隔たりがあった。
このため、行方不明直後に海に入ったのか、しばらく市内や周辺で生活していたのか、別の場所から流れ着いたのかといった点についても明確な結論は示されていない。
遺体の状態から発見されるまで一定期間が経過していたことは示唆されたが、夏期ということもあり正確な死亡時期については幅を持たせた表現にとどまった。
遺体が確認されたことにより、日本側の捜索活動は事実上終了となった。
警察は「事件性は低い」との見方を示し、刑事事件としての立件は行われなかった。
中国側の家族には結果が伝えられそれ以上の捜査要請も無かったものとみられ、総領事館を通じた対応も段階的に収束していった。
中国側ソースの一部の報道では「事件後に危さんのSNSに意味深な言葉が見つかった」と伝えられたが、投稿内容そのものははっきりと公開されていない。最後の投稿が21日頃で「良い印象の内容」だったという友人の話があるが投稿内容は公式には公開されていない。
一部中国紙は、札幌の宿に置かれた荷物の中から家族に宛てた遺書のように見える手紙が発見されたと報道した。でも内容は感謝や新生活への思いなどとのことなので家族はこれを単なる旅行記の手紙としているという話もあり、結局の真偽は不明のままだ。
中国メディアが最終的に自殺説の裏付けとして伝えたのは釧路市内にあるカフェのオーナー夫婦が、7月23日当日にKさんと見られる女性を見たという詳細な証言だ。そこでは内省的な様子が目撃されており、その後の自殺を計画していたのではないかという論調であった。
まず座席の取り方が普通ではなかった。店の奥の窓際ではなくレジに近い中ほどの席に座った。一般の客が風景を楽しむ席を好むのに対し、外の景色にはほとんど関心を示さなかった。
女性は約1時間にわたりただ窓の外を静かに見ていた。普通の観光客の行動とは異なる様子だったので覚えていたとのことだ。
オーナーの妻が他の客と話すのを楽しむタイプだったにも関わらず、女性は誰とも関わらず静かに過ごしていた。女性が店を出る直前になって初めて「日本語が流暢」と気づいたと述べている。そのため最初は日本人観光客だと思っていたとされている。流暢の度合いは不明だし、Kさんがどの程度日本語を話せたのかも今となってはわからない。
このカフェでの目撃が「最後の確実な人による観測情報」として報道されている。ただし防犯カメラ映像としてではなくあくまで店主の証言であり見間違いや記憶違いの可能性は捨てきれない。
「なぜ阿寒湖方面へ向かったのか」「なぜ釧路市内で足取りが途絶えたのか」 といった疑問点は部外者の一般人に対しては未解明のまま残されることになった。
この件は最終的に、行方不明となった外国人観光客が死亡して発見され刑事事件としては処理されなかった事案として整理されている。
捜査や報道を通じて確認できる事実が小出しになった割には決定的な情報がなく、推測の余地が多く残されたことがこの件が注目を集めた要因だろう。
残された事実としては来日前、Kさんの生活環境に深刻な問題があったとの公的情報はない。来日後のSNS投稿には強い異常性は見られない。防犯カメラは複数存在するが連続的な行動は把握できていない。他者の関与を示す直接証拠は確認されていないということである。
これらの事実から、警察は「犯罪に巻き込まれた可能性は低い」と結論づけ、暗にKさんの自殺として結論を出したことに異論を持つ人は少ない。
Kさんの行動を追う中で一部のネット探偵は、日本文学や阿寒周辺を舞台とする小説に触発されたのではないか。Kさんの足取りや失踪の状況が渡辺淳一の小説『阿寒に果つ』に似ている。人生の最後に小説のストーリーをなぞって自殺したのではないかという言説も流通した。
中国メディアの紹介ではKさんは日常的にドラマや映画を鑑賞することが好きだった。文学や読書も趣味のひとつだったという記述がある。
SNSで村上春樹のエッセイ作品を紹介していたという報道があり、旅の持ち物としてその作品を携えていた、あるいは言及していたという情報も一部で取り上げられた。
一次ソースは中国メディア側のもので信頼性はやや不確かではあるが、少なくとも日本文学作品への興味はあった可能性はある。国語教師というプロフィールとも合致する。
しかし本人が渡辺淳一の小説『阿寒に果つ』を実際に読んでいたという明確な証拠や報道は一切ない。
よってKさんが特定の日本小説を読んで影響を受けた結果、阿寒を自死の場として選んだことを裏付ける記録は確認されていない。
SNS、所持品、通信履歴から、文学作品名や明確な思想的傾向が示されたという公式発表もなかった。
そもそも『阿寒に果つ』を読んだからといって日常の悩みがない女性が急に自殺を選ぶという論理自体は飛躍している。
この点はあくまで後付けの解釈、もしくは想像できる範囲で空白をなんとか埋めようとする願望から生まれた外部の想像に近い位置づけといえる。
出来事そのものの記録上は淡々と進行している一方でその空白が多く、結果として多様な解釈を生んだということだろう。そして本人が亡くなっている以上これ以上の答え合わせはできないのである。
行方不明となったのは中国福建省出身の女性、Kさん。1990年生まれの当時26~27歳。
中国国内では小学校で語文(中国語)を教える教師として勤務していた。卒業大学は四川師範大学と報じられており教育系の学歴を経て教職に就いていたとみられる。
家族や同僚の証言として伝えられている限りでは、来日前の生活に大きな異変やトラブルは確認されていない。
精神的に不安定であったり強い悩みを抱えていたといった具体的な情報も公式には出ていなかった。
Kさんは2017年7月18日に観光目的で単独で来日した。旅行先は北海道で航空便で函館に入国後は単独で道内を移動していたとされる。
なお来日は初めてだったと報じられている。
来日後数日間の行動は比較的はっきりしている。
函館、小樽、美瑛、洞爺湖など、いわゆる主要観光地を巡り、その一部は中国のSNS(微博)に写真付きで投稿されていた。
投稿内容は当たり前に日本旅行を楽しんでいる様子が読み取れるものが多く、危機的な状況や異変を示す直接的な表現は確認されていない。
7月下旬には札幌市内のゲストハウスに宿泊していた。
宿泊記録や防犯カメラの映像から、7月22日朝にKさんはこの宿をチェックアウトし札幌を離れている。
その後はJRと路線バスを利用し道東方面へ移動したことが防犯カメラや乗車記録から判明した。
同日午後、釧路駅構内および駅前バスターミナルの防犯カメラに姿が映っている。
この時点でも同行者はおらず単独行動であった。
さらに同日、釧路からバスで阿寒湖温泉方面へ向かったとみられ現地の宿泊施設に一泊している。
阿寒湖温泉は観光地ではあるものの、札幌からはそれなりに距離があり当初の旅行計画に含まれていたかどうかは明らかになっていない。
この移動については後に「Kさんの行動の急な変化」として注目されることになる。
7月23日朝、Kさんは阿寒湖温泉の宿をチェックアウトしている。この際も防犯カメラ映像によって姿が確認されている。
その後、阿寒湖周辺や釧路市街地でコンビニ・商店などの防犯カメラにKさんの映像は複数確認された。
しかし7月23日昼以降、本人と特定できる確実な映像記録は途絶える。
家族との連絡もこの時期を最後に取れなくなり、帰国予定日であった7月25日になっても中国に戻らなかったことから家族が異変に気づき、現地関係機関を通じて北海道警察に捜索が要請されたといういきさつである。
これが北海道警察および中国総領事館、そして一部の野次馬、ネット探偵を巻き込む行方不明事案としての捜索開始の発端である。
Kさんの消息が途絶えた直後の日本側で当初は重大事件として大きく報じられていたわけではなかった。単独旅行中の外国人が一時的に連絡不能になる事例は珍しくなく、初期段階では事故・迷子・通信トラブル・自分の意思での音信不通など比較的軽度の可能性も含めて扱われていた。
中国側の家族と一切連絡が取れない状態が続き手がかりもない中で防犯カメラ映像などの報道が繰り返される度に、注目が注がれるようになる。
Kさんの外見が華やかな若い女性であり、短い防犯カメラ映像で宿のスタッフとのやりとりを見る限りは明るく旅行を楽しむ観光客そのものに見えたのもまた謎を深めて注目度を上げるきっかけとなった。
捜索が本格化するにつれ、警察はKさんの直前の行動履歴を可能な限り明確にする必要に迫られた。
札幌、釧路、阿寒湖温泉周辺で確認された複数の防犯カメラ映像が整理され、
札幌の宿泊先をチェックアウト
JR釧路駅構内
釧路駅前バスターミナル
阿寒湖温泉街
釧路市内の一部商店
などに姿が映っていた事実が公表された。
これにより「Kさんは少なくとも7月23日昼頃までは生存しており、見る限りは観光客として単独で自由に移動していた」という前提が共有されることになる。
途中までは防犯カメラの記録がある一方でその後の足取りが完全に途絶えたことから、メディアでは次第に「不可解な行動」「謎の移動」といった表現が使われ始めた。
特に注目されたのは、
札幌から突然、阿寒湖方面へ向かった点
観光地でありながら、短時間で阿寒湖を離れている点
釧路市内で複数回目撃された後、完全に消息が途絶えた点
だった。
ただしこれらは警察が「不審」と断定した事実ではなく報道上で整理されてネット探偵にも共有された単なる違和感であり、捜査段階では依然として「事故」「体調不良」「移動中のトラブル」などあらゆる可能性が排除されていなかった。
事件性が確定していなかったため、この段階で起きたのはいわゆる純粋な捜索協力の拡大だった。
中国国内ではSNSを通じてKさんの顔写真と行動履歴が拡散されそれが日本国内にも拡散され始めると「似た女性を見た」「阿寒湖周辺で中国語を話す女性がいた」「釧路市内の飲食店に入っていくのを見かけた」といった目撃情報が相次いだ。もちろん真偽不明なものも多く含まれていた。
日本国内でも、釧路・阿寒湖周辺の住民や観光関係者から警察への情報提供が増加した。林道、湖畔、バス停、商店街など、具体的な場所を挙げた通報が寄せられ、警察はその都度、確認や聞き取りを行っている。
この時期に報じられた目撃情報の多くは、夜間や遠目での確認、顔の一致が曖昧、時間帯や服装が確定できないといった理由から、後に本人と断定されるものには至らなかった。
重要なのはこの段階で自殺、他殺、交通事故、港や湖への落水事故から本人の意思での失踪まで何の結論も出ていなかったことである。あくまで行方不明の外国人観光客を探す捜索活動が中心だった点である。
中国総領事館は北海道の現地入りし、警察・自治体・観光関係者との連携を強化。メディアを通じて、広く情報提供を呼びかける声明も出された。
ネット探偵の考察も「なぜそんな場所にいたのか」「何を考えて行動していたのか」という推理的関心はあったものの、根底には「無事に発見される可能性」が残されていた。
トンデモ推理としては日本人あるいは中国人の恋人と駆け落ち、国外亡命、失踪したフリをして極秘帰国、日中どちらかのスパイとして活動しているなどもあった。
2017年8月の捜索開始からおよそ1か月が経過した頃、事態は大きく動いた。
8月中旬、北海道釧路市の海岸付近で女性の遺体が発見された。
発見場所の海岸は市街地からそれほど離れていない一方で、人通りの多い観光エリアではなく、潮汐や海流の影響を受けやすい区域とされている。
発見当初遺体の損傷が激しく身元が即座に特定できる状態ではなかったが、所持品や身体的特徴などから行方不明となっていたKさんである可能性が高いと判断された。
その後関係機関による確認を経て、身元はKさん本人と正式に特定された。
警察の発表によれば、遺体に第三者による明確な暴行痕や致命的な外傷は確認されなかった。
死因は溺水の可能性が高いとされ、事件性を直接示す証拠は見つからなかったとしている。
一方で、海に入った場所、入水時刻、単独か否かといった詳細については断定されず、「事故の可能性」「自死の可能性」の双方を残したままの発表となりその後の確定的な報道はなかった。
遺体の発見地点と、最後に姿が確認されていた釧路市内の防犯カメラ映像とのあいだには、地理的な隔たりがあった。
このため、行方不明直後に海に入ったのか、しばらく市内や周辺で生活していたのか、別の場所から流れ着いたのかといった点についても明確な結論は示されていない。
遺体の状態から発見されるまで一定期間が経過していたことは示唆されたが、夏期ということもあり正確な死亡時期については幅を持たせた表現にとどまった。
遺体が確認されたことにより、日本側の捜索活動は事実上終了となった。
警察は「事件性は低い」との見方を示し、刑事事件としての立件は行われなかった。
中国側の家族には結果が伝えられそれ以上の捜査要請も無かったものとみられ、総領事館を通じた対応も段階的に収束していった。
中国側ソースの一部の報道では「事件後に危さんのSNSに意味深な言葉が見つかった」と伝えられたが、投稿内容そのものははっきりと公開されていない。最後の投稿が21日頃で「良い印象の内容」だったという友人の話があるが投稿内容は公式には公開されていない。
一部中国紙は、札幌の宿に置かれた荷物の中から家族に宛てた遺書のように見える手紙が発見されたと報道した。でも内容は感謝や新生活への思いなどとのことなので家族はこれを単なる旅行記の手紙としているという話もあり、結局の真偽は不明のままだ。
中国メディアが最終的に自殺説の裏付けとして伝えたのは釧路市内にあるカフェのオーナー夫婦が、7月23日当日にKさんと見られる女性を見たという詳細な証言だ。そこでは内省的な様子が目撃されており、その後の自殺を計画していたのではないかという論調であった。
まず座席の取り方が普通ではなかった。店の奥の窓際ではなくレジに近い中ほどの席に座った。一般の客が風景を楽しむ席を好むのに対し、外の景色にはほとんど関心を示さなかった。
女性は約1時間にわたりただ窓の外を静かに見ていた。普通の観光客の行動とは異なる様子だったので覚えていたとのことだ。
オーナーの妻が他の客と話すのを楽しむタイプだったにも関わらず、女性は誰とも関わらず静かに過ごしていた。女性が店を出る直前になって初めて「日本語が流暢」と気づいたと述べている。そのため最初は日本人観光客だと思っていたとされている。流暢の度合いは不明だし、Kさんがどの程度日本語を話せたのかも今となってはわからない。
このカフェでの目撃が「最後の確実な人による観測情報」として報道されている。ただし防犯カメラ映像としてではなくあくまで店主の証言であり見間違いや記憶違いの可能性は捨てきれない。
「なぜ阿寒湖方面へ向かったのか」「なぜ釧路市内で足取りが途絶えたのか」 といった疑問点は部外者の一般人に対しては未解明のまま残されることになった。
この件は最終的に、行方不明となった外国人観光客が死亡して発見され刑事事件としては処理されなかった事案として整理されている。
捜査や報道を通じて確認できる事実が小出しになった割には決定的な情報がなく、推測の余地が多く残されたことがこの件が注目を集めた要因だろう。
残された事実としては来日前、Kさんの生活環境に深刻な問題があったとの公的情報はない。来日後のSNS投稿には強い異常性は見られない。防犯カメラは複数存在するが連続的な行動は把握できていない。他者の関与を示す直接証拠は確認されていないということである。
これらの事実から、警察は「犯罪に巻き込まれた可能性は低い」と結論づけ、暗にKさんの自殺として結論を出したことに異論を持つ人は少ない。
Kさんの行動を追う中で一部のネット探偵は、日本文学や阿寒周辺を舞台とする小説に触発されたのではないか。Kさんの足取りや失踪の状況が渡辺淳一の小説『阿寒に果つ』に似ている。人生の最後に小説のストーリーをなぞって自殺したのではないかという言説も流通した。
中国メディアの紹介ではKさんは日常的にドラマや映画を鑑賞することが好きだった。文学や読書も趣味のひとつだったという記述がある。
SNSで村上春樹のエッセイ作品を紹介していたという報道があり、旅の持ち物としてその作品を携えていた、あるいは言及していたという情報も一部で取り上げられた。
一次ソースは中国メディア側のもので信頼性はやや不確かではあるが、少なくとも日本文学作品への興味はあった可能性はある。国語教師というプロフィールとも合致する。
しかし本人が渡辺淳一の小説『阿寒に果つ』を実際に読んでいたという明確な証拠や報道は一切ない。
よってKさんが特定の日本小説を読んで影響を受けた結果、阿寒を自死の場として選んだことを裏付ける記録は確認されていない。
SNS、所持品、通信履歴から、文学作品名や明確な思想的傾向が示されたという公式発表もなかった。
そもそも『阿寒に果つ』を読んだからといって日常の悩みがない女性が急に自殺を選ぶという論理自体は飛躍している。
この点はあくまで後付けの解釈、もしくは想像できる範囲で空白をなんとか埋めようとする願望から生まれた外部の想像に近い位置づけといえる。
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