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本編
08-1
しおりを挟む両親は突然連れ帰った客人に驚いたようだが、彼らも客人がカールハインツ陛下だとは認識していなかった。
ひとまず、汚れたままでは気分が悪いだろうと思い、入浴を勧めて身支度を整えるよう告げると、陛下はどこかホッとした様子で了承してくれた。
入浴を済ませ、使用人に用意させた衣服に着替えた陛下を僕の部屋へ案内する。
しばらく二人で話がしたいと言うと、ジョシュアやキースには猛反対をされたが、両親は僕の意思を尊重してくれ、騒ぐ二人を宥めてくれた。
そして、メイドに飲み物や軽食の準備だけしてもらい、ようやく二人きりになったところで、僕は何から訊くべきかと考えを巡らせる。
(どうしようか……)
「……不躾なことを訊くが、君はマールグリット伯爵の養子だろうか?」
「え?」
考え込んでいるところに不意をつかれ、一瞬何を訊かれたのかわからなくなった。
「……どうした?」
唖然としていると怪訝そうに声をかけられ、慌てて質問の内容を思い返す。
「いえ、失礼しました。……僕はマールグリット伯爵の実子です。そして、現状では、この家にエリザベスという娘はいません」
「……現状、というのは、どういうことだ?」
陛下の眉間に皺が寄る。
「カールハインツ陛下。不敬を承知でお願いがあります。先程の問いも含め、今から僕が説明することを、最後まで何も言わずに聞いていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
陛下の目を真っ直ぐ見つめ、懇願するように告げると、
「……わかった。君は私のことを正しく認識しているようだし、君の話を最後まで聞くと約束する」
少しの間の後、陛下は承諾してくれた。
「ありがとうございます」
深く頭を下げ、僕は昏睡状態から目を覚ましたときのことから順を追って説明をした。
◇ ◇ ◇
僕の話を最後まで聞いてくれた陛下は、しばらく考え込むように目を閉じた。
自分で話していても、あまりに荒唐無稽な内容だと思うが、信じてもらえなければ話が進められない。
ハラハラしながら、陛下の考えが纏まるのを待つ。
「……君が自由市で購入したという神器を見せてもらえるだろうか?」
「はい」
陛下が入浴している間に部屋に運び込まれた神器をテーブルの上に載せる。
陛下はそれをじっと見つめ、一つ頷くと僕を見た。
「これは私の知る神器で間違いないだろう」
「やっぱり……」
「だが、この国の神器は今も城の宝物庫に納められている。もちろん、装飾は一つも欠けていない」
「え?」
「とはいえ、私が実物を目にしたのは、一月程前が最後なので確証はないが、現在もこの国を覆う結界が消えていないところを見ると、神器は失われていないはずだ」
小説の中でも、神器の力によってグランストーム王国は守られていた。
もちろん、神器が存在していることで世界が維持されているのだが、この神器をグランストーム王国から動かすようなことがあれば、世界の均衡が崩れ、やがて世界は消滅すると言われている。
そのため、グランストーム王国の外に持ち出されることがないよう、神器はこの国に結界を張っているのだ。
また、グランストーム王国の王は、神器の力を維持するため、定期的に魔力を注ぐことが定められていた。
この魔力を注ぐ行為が一定期間実行されなくなったときも、世界の消滅を意味しているとも言われ、グランストーム国王は代替わりの度にこのことを魂に刻み込む。
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