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本編
09
しおりを挟むひとまず答えを出すには情報が足りないということで、僕と陛下の密談は終わった。
そして、周囲が陛下のことを正しく認識していない現状では、体力が落ちて魔力も乏しくなっている陛下が王城に戻るのは危険だろうという判断から、しばらく伯爵家へ滞在できるよう両親に頼もうということになった。
また、陛下の本来の身分を明かすこともできないので、即席で考えた“フランツ・ブラウン”という偽名を使って、僕の友人として改めて両親に紹介する。
「フランツ様とは、以前国立図書館で何度か顔を合わせていて、魔獣が使う魔法のことや魔道具についてよく話し合っていたんだ」
両親に会うにあたって、僕と陛下は綿密に打ち合わせをし、偽りの設定を作った。
まずは、実は顔見知りであったということに信憑性を持たせるため、僕が昏睡前までよく通っていた国立図書館での出会いを語る。
「彼との魔法談義は非常に有意義でしたので、実際に自分の目で魔獣が魔法を使うところを見たくなり、旅をしていたんですが……」
続いて陛下が、魔獣の魔法を見たいという好奇心に駆られて一人で国内を巡っていたこと、久しぶりに王都へ戻ってきたところで、僕と再会したということを話す。
更に、彼がボロボロになっていたのは、帰る途中の森の中で盗賊に遭い、命からがら逃げてきたからだと告げると、心優しい両親は酷く同情し、彼を労った。
「それは大変でしたね……。住むところもないということですし、どうぞ当家へご滞在ください」
「お心遣い痛み入ります。また、厚かましいお願いを聞き入れてくださり、ありがとうございます」
父の言葉に陛下は丁寧に頭を下げた。
(陛下って演技も上手いんだな……設定だって知ってる僕でも真実だと思いそうになる)
僕は偽りの設定を伝えるときに酷く緊張してしまったが、陛下は自然体で滑らかな口調で語っていた。
和やかに言葉を交わす彼らを見て、ひとまず両親を誤魔化しきることはできそうだと安堵しながら、ふと視線を向けた先で、馬車の事故から屋敷に戻るまでの一部始終を知るキースが怪訝そうに口を開きかけるのが見えた。
しかし、キースは僕と目が合うと僕の意図を汲み、すぐにグッと歯を食いしばって耐えてくれた。
彼には申し訳ないと思うが、ここは合わせてもらうしかない。
後で何か聞かれたら、先程は以前会った時と風貌が違っていて、すぐに気づかなかったということにしておこう。
それで納得してくれるかどうかは賭けるしかないのだけれど。
「……では、ブラウン殿には二階の客間を使っていただきましょうか。ジョシュア、そのように準備を」
「は、畏まりました」
父の言葉にジョシュアが一礼をしながら答え、すぐに侍従が動き出す。
部屋が整い次第、声を掛けてくれることになったので、このまま応接間で両親と四人でお茶を飲みながら談話することになった。
(僕の昏睡や婚約破棄なんかでバタバタしてるところに新たな問題を持ち込んでごめんなさい)
決して口に出すことができない、両親への謝罪を僕は心の中で告げた。
10
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