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第2章 - バッテリー切れ
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あの機械、外でいったい何をしているんだ。
カーテンを勢いよく閉めた。
心臓が痛いくらいに打つ。
でも…今のは、女の子の声?
「ごめん、驚かせるつもりはなかったの。
しばらくここに誰かが住んでるのは見てたけど、外に出るところは見たことなくて。
えーーい、いるの?」
元クラスメイトの悪ふざけだ。
きっとそうだ。
部屋を飛び出した。
羽音が頭の中を回る。
壁がわずかに震えている気がした。
ほかの窓のほうまで回らないでくれ、と祈る。
台所へ行く。
あそこは窓が高い。床に座れば見えないはずだ。
二ヶ月、母さん以外の声を聞いていない。
でもこの声は違う。
あの、泣き声みたいな悲しさは混じっていない。
床の冷たさで脚がしびれるまで座っていた。
どれくらい経ったのか、わからない。
女の子…。どうして女の子なんだ。
しばらく物音がしない。
もう帰ったのかもしれない。
ゆっくり部屋へ戻る。足音を確かめながら。
何もない。
自分の部屋のドアの角からのぞく。
からっぽで、静かだ。
いなくなった。やっとヘッドホンがつけられる。
プレイリストは適当に。でも、ときどき音量を下げて、戻ってこないか耳を澄ます。
翌朝。いつもの朝ごはん、いつもの空っぽの家。
でもひとつ増えた。あのドローンのこと。
すぐには来なかった。
変な苛立ちがわいた。
味のない豆腐を噛みながら思う。
どうして戻ってこない。
午後になって、来た。
あの羽音。
あの振動。
窓に近づくが、カーテンの後ろに留まる。
「やっほー? いる? 昨日、私たち話したよね…いや、私が一方的に話したんだっけ。
友だちにならない? 私も外に出られないの。
たぶん似てる。理由も、たぶん。」
返事はしない。
「変だってわかってる。みんな“しゃべるドローン”を見るとちょっとショック受けるんだ。
これはね、パパが作ってくれたの。世界を見て、世界の中にいられるように。
もし君が困ってるなら、同じの作ってもらえるよう頼むよ。どんな事情か教えてくれたら。」
話は続く。
話題が飛ぶ。
今日食べたもの。
綿のブレスレットのこと。
たくさんのアレルギーのこと。
置いてきた友だちのこと。
ひとりで笑ったりもする。
話す。ずっと。
一週間、そんなふうに。
言葉が降り積もっていく。僕を言葉で埋めようとしているみたいに。
そして、ある日、声の色が変わった。
「ねえ…たぶん、今日で最後。もう邪魔はしない。
……ただ、君ならわかる気がして。」
カーテン越しの影を見る。
まだ黙ったまま。
「君がからかわれてるの、見た。あの呼び方、許せない。
もう人が信じられなくて、ひとりのほうがマシだって思ってるのかも。わかるよ。
でも私は違うって、証明したい。だから…
ここにドローンを置いていくね。
やがて電池が切れて止まる。でも充電ケーブルがある。
これは私の唯一の窓。もし君が充電しなかったら——誰も望んでいないってこと。私はもう近づかない。二度と。」
少しだけ続けてから、
僕の窓の下のベランダに降りた。
「罪悪感、持たなくていい。新しいのはパパに頼めるから。これは君に置いていくね。」
小さなカチッという音。
静寂。
変な静けさだ。
どうすればいい。
このままじゃ危ない。
壊れるかもしれない。
それに、母さんに見つかる。
椅子から跳ね起きる。
部屋を出て、ベランダへ。
11月の冷たい空気が正面から刺さる。
窓の下にドローンがいる。
両手で抱える。想像よりずっと軽い。
ケーブルのほかに、一枚の紙。
「あなたと友だちになりたいです。」
部屋に持ち帰って、床に置いた。
充電は、しない。
静けさが戻る。
そして僕は——また耳を澄ませる。
今にも勝手に動き出すんじゃないかと、怯えながら。
カーテンを勢いよく閉めた。
心臓が痛いくらいに打つ。
でも…今のは、女の子の声?
「ごめん、驚かせるつもりはなかったの。
しばらくここに誰かが住んでるのは見てたけど、外に出るところは見たことなくて。
えーーい、いるの?」
元クラスメイトの悪ふざけだ。
きっとそうだ。
部屋を飛び出した。
羽音が頭の中を回る。
壁がわずかに震えている気がした。
ほかの窓のほうまで回らないでくれ、と祈る。
台所へ行く。
あそこは窓が高い。床に座れば見えないはずだ。
二ヶ月、母さん以外の声を聞いていない。
でもこの声は違う。
あの、泣き声みたいな悲しさは混じっていない。
床の冷たさで脚がしびれるまで座っていた。
どれくらい経ったのか、わからない。
女の子…。どうして女の子なんだ。
しばらく物音がしない。
もう帰ったのかもしれない。
ゆっくり部屋へ戻る。足音を確かめながら。
何もない。
自分の部屋のドアの角からのぞく。
からっぽで、静かだ。
いなくなった。やっとヘッドホンがつけられる。
プレイリストは適当に。でも、ときどき音量を下げて、戻ってこないか耳を澄ます。
翌朝。いつもの朝ごはん、いつもの空っぽの家。
でもひとつ増えた。あのドローンのこと。
すぐには来なかった。
変な苛立ちがわいた。
味のない豆腐を噛みながら思う。
どうして戻ってこない。
午後になって、来た。
あの羽音。
あの振動。
窓に近づくが、カーテンの後ろに留まる。
「やっほー? いる? 昨日、私たち話したよね…いや、私が一方的に話したんだっけ。
友だちにならない? 私も外に出られないの。
たぶん似てる。理由も、たぶん。」
返事はしない。
「変だってわかってる。みんな“しゃべるドローン”を見るとちょっとショック受けるんだ。
これはね、パパが作ってくれたの。世界を見て、世界の中にいられるように。
もし君が困ってるなら、同じの作ってもらえるよう頼むよ。どんな事情か教えてくれたら。」
話は続く。
話題が飛ぶ。
今日食べたもの。
綿のブレスレットのこと。
たくさんのアレルギーのこと。
置いてきた友だちのこと。
ひとりで笑ったりもする。
話す。ずっと。
一週間、そんなふうに。
言葉が降り積もっていく。僕を言葉で埋めようとしているみたいに。
そして、ある日、声の色が変わった。
「ねえ…たぶん、今日で最後。もう邪魔はしない。
……ただ、君ならわかる気がして。」
カーテン越しの影を見る。
まだ黙ったまま。
「君がからかわれてるの、見た。あの呼び方、許せない。
もう人が信じられなくて、ひとりのほうがマシだって思ってるのかも。わかるよ。
でも私は違うって、証明したい。だから…
ここにドローンを置いていくね。
やがて電池が切れて止まる。でも充電ケーブルがある。
これは私の唯一の窓。もし君が充電しなかったら——誰も望んでいないってこと。私はもう近づかない。二度と。」
少しだけ続けてから、
僕の窓の下のベランダに降りた。
「罪悪感、持たなくていい。新しいのはパパに頼めるから。これは君に置いていくね。」
小さなカチッという音。
静寂。
変な静けさだ。
どうすればいい。
このままじゃ危ない。
壊れるかもしれない。
それに、母さんに見つかる。
椅子から跳ね起きる。
部屋を出て、ベランダへ。
11月の冷たい空気が正面から刺さる。
窓の下にドローンがいる。
両手で抱える。想像よりずっと軽い。
ケーブルのほかに、一枚の紙。
「あなたと友だちになりたいです。」
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そして僕は——また耳を澄ませる。
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