暴君王子の顔が良すぎる!

すももゆず

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顔が良すぎる王子様

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「お待たせいたしました。紅茶とスコーンをお持ちしました」
「戻ってきたか。そのまま逃げたかと思ったぞ」
「逃げるなんてしません」

 逃げるわけないだろ、俺は王子の顔面を拝むためにここにいるんだ。

 王子は顔をあげ執務机から立ち上がり、手前にあるふかふかのアンティークソファに腰かけた。偉そうに足を組む仕草も優雅で思わず見惚れる。

 王子の前に紅茶とスコーンを置くと、礼も言わず紅茶に口をつけた。態度は悪いけどその姿は絵になった。なによりも顔がいい。


「この紅茶……いつもと違うな」
「も、申し訳ございません……すぐに別のものをお入れいたします」

 くそ、違ったか……! SSR単発引きは無理だったか……! この無謀な選択肢を間違えてクビになるなんて悔しすぎる! 仮にもシミュレーションゲームなんだからせめて3択ぐらいにしてくれよ! 乙女ゲームってのは選択肢30個以上の中から選んだりすんのか? 自由記述式なのか?

「お前、何故この茶葉を選んだ?」

 下げていた頭をあげると王子は青色の瞳を丸くさせていた。

「王子の好みのものがわからず……自分のいちばん好きな茶葉を入れさせていただきました……」
「そうか」

 そうか、って何!? こわいんだが!? クビか、クビなのか!?
 どうしようもない空気の中、内心ビクビクしていると王子は再び紅茶に口をつけた。「えっ」と思わず声が漏れる。

「この茶葉もなかなかだな」
「あ、ありがとうございます!」

 王子は少しだけ優しく笑った。
 どわ~~!顔がいい~~!! 笑顔にパターンありすぎだろ……反則……!!

「お前がこの紅茶を入れたのか?」
「はい」
「よくできている。褒めてやろう」
「お褒めに預かり光栄です」

 めちゃくちゃ上から目線だな……あ~でもその見下し顔も好き……
 紅茶は町のカフェのマスターから教えてもらった腕だ。褒められると町の人を認められたみたいで素直に誇らしい。


「おいお前、先ほどからずっと俺の顔を見ていないか?」
「えっ!?」

 スコーンに手を伸ばした王子は何気なく俺に聞く。ずっと見てたの気づかれてた!? と焦るが、座っている王子が若干上目遣いにこちらを見上げている。うわ!顔がいい!3Dやべえ!

「なんだ、その反応は」

 王子はむっとしながらスコーンを咀嚼している。その表情もやばいしもぐもぐしてんのもやばい。

「あ、その……イーディス王子は美しいなと……思わず見惚れてしまいます」

 まずい、王子の顔に思考が持っていかれた。誤魔化せなくてそのまま言ってしまった。表現はできるだけオブラートに包んだものの、じろじろ見て気分を損ねたらクビにされる。それだけは避けないと……! でも目の前にド好みの顔面があるのに見ないなんて無理じゃないか!?

 頭で問答しながら王子の言葉を待っていると、呆れたように鼻を鳴らされた。

「よく言われる」
「はは……」

 だろうな! そりゃあこんな顔面国宝いたら誰だって見る!

「ご馳走様。執務の続きをする。それを下げたら手伝え」
「かしこまりました」

 紅茶を飲み終えた王子は再び執務机に戻った。ご馳走様……脳で反芻する。厳しくされたあとのお礼が沁みる……
 とりあえず今すぐクビってことはなさそうだ、と胸を撫で下ろした。


「そこの棚の印を取れ。左側上から2番目だ」
「はい」

 王子の手伝いをしていると、だんだん陽が傾いていた。城は町よりも高い位置にあるので沈んでいく夕陽がよく見えた。

 王子の執務の手伝いって相当でかい仕事なんじゃ……いいのか?新人に任せて……と思いながらも、間近で王子の顔面を拝めてめちゃくちゃ幸福に包まれていた。にやけそうな顔を繕うので必死だった。

 初めての仕事は物の場所も積んである紙束の内容も、これをどこに持っていくかも全くわからなかった。戸惑っていると悪態やため息が飛んできたが、なんだかんだ王子は丁寧に教えてくれた。

 根はいい人なんだろう。態度はでかいし口も悪いけど。




「今日の執務は終わりだ。夕食を持ってこい」
「かしこまりました」

 王子はペンを引き出しにしまっている。積まれていた紙束はいつのまにか机からなくなっていた。

 王子の顔面見つめてる間に終わってたわ……時間経つのはや……と思いつつ夕食を取りに厨房に向かった。
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