暴君王子の顔が良すぎる!

すももゆず

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逃げ出したりなんかしません!

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 ベリルから受け取った美味しそうな夕食を運ぶと、王子はソファに座って本を読んでいた。

「夕食をお持ちいたしました」
「そこに置け」

 本、読むんだ……真剣な顔もかっこいいな……と思いながら軽快に返事をし、王子の前に夕食を並べる。

 というか王族って執務仕事以外に何してるんだろう。一応ゲームの世界なわけだし、何かしらの設定はありそうだけど……そもそもこのBLゲームのストーリーってどんなのなんだろう。王子の顔しか見てなかったからな……タイトルも思い出せない。

 シミュレーションゲームなんだから、攻略対象も何人かいるはずだし、俺も何かしらの登場人物かもしれないけど……いったい俺の立ち位置って……? 王子の従者になれたってことは"王子の従者"っていう肩書きのキャラなのかな。
 目の前にはイーディス王子がいるんだからもうなんでもいいや、この立場を守るためならなんだって頑張るって決めたんだ。


 王子の食事の間も俺は横顔を見つめ続けた。すぐに出て行けと言われるかと覚悟していたが、王子は何も言わずに夕食を食べ終えた。

「お前、俺の態度を見ても今日1日逃げ出さなかったな」
「え、」

 王子は食事の手を止め、こちらをまっすぐ見つめた。綺麗な顔で見つめられるとドキドキしてしまう。

「あの……先ほども逃げたかと思った、と申されておりましたが……もしかして前の従者は王子の態度を見て逃げ出した、ということでしょうか」
「……」

 無言! ということは当たりか……
 王子は不満そうに口を開けた。

「前の従者だけじゃない、その前もその前も……数え切れないぐらいだ。持って3日、その程度で逃げ出す」
「そ、そうなのですか……」
「俺が口を開くたびに肩を震わすからそれにも苛立つし、食事を持ってきてもすぐに出て行っていた」

 おそらく、イーディス王子に憧れる人はこの国にたくさんいるはずだが、このお方は見た目と性格がかけ離れている。言葉使いは荒いし、威厳もあるし怖くもなるか。ショックを受けて耐え切れなかったのか……俺も最初はイメージと全然違う!って思ったし。

 まあ、そんなことは俺には関係ない。王子の性格がどうであれ、顔は変わらないんだから。

「お前は出て行こうともしないし、驚きもしない……何故だ?」
「何故、と言われましても……」

 近くで顔を拝みたいからとは言えない……!

「俺……私は、王子のもとに仕えることを目標として頑張っていましたので……王子のもとにいられることが幸福でして……」
「ほう」

 王子は足を組み、試すように俺を見つめる。

「なので、俺は自分から逃げ出したりはしません! 王子が俺を解雇にしない限り、ずっとここで働きたいです!」

 王子の隣は絶対死守する!!! 

 俺はいつのまにか跪き、縋り付くように王子の手を握っていた。はっと気がつき、慌てて手を離す。

「も、申し訳ございません! 軽々しく王子の手を……」

 素早く土下座をキメる。西洋文化に土下座は通じないかもしれないが、そうするしか思いつかなかった。
 背中にダラダラと汗が伝う中でも、手すべすべだった! 水分量えぐい! 肌まで完璧なのか!? と、煩悩が駆けめぐる。

「……一人称が崩れているぞ」
「はっ!」

 ほんとだ、俺って言ってたわ。主人の前で言葉使いを乱すなんて……

「申し訳ございません……1ヶ月で作法をたたき込んだので、感情が乱れるとついこうなってしまいます……」

 もう一度頭を下げると、頭上から笑い声が降ってきた。そこには楽しそうに笑う王子の顔があった。

「ははっ……! お前、変わっているな。お前みたいな従者ははじめてだ」

 えらそうな笑顔でもなく、国民相手の澄ました笑顔でもなく、年相応に無邪気笑っていた。
 全身がブワッと熱くなる。やっば……いきなりその顔は反則……! 破壊力が高すぎる……!

「好き……」

「ん?」
「は?」

 俺と王子は同時に顔を合わせて瞳を大きく見開いた。

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