暴君王子の顔が良すぎる!

すももゆず

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王子の命令

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 しまったーーーー!! 口から勝手に出てた!!
 ダラダラと冷や汗がつたう。

「……それは俺のことがか?」

 沈黙を破ったのは王子の方だった。

「あ、いや、あの、えとこれは……」

 一国の王子に好きとか! 俺は従者なのに! しかも好きなのは顔っていう不純すぎる事態!!
 その場を突破する言葉が思いつかず、目を逸らして黙る。こうなったら処刑を待とう。

「本当に俺自身が好きなのか? 答えろ」
「うっ……」

 顎を掴んで持ち上げられ、強制的に目を合わせられる。青い瞳に俺がうつるぐらい距離が近づいてくる。

 ちか、うわ、顔がいい~~~~!! キラキラが飛んでる!まぶしい!!

 それしか頭に回らない。王子の顔で脳が塗りつぶされていくみたいだ。

 王子は眉間にしわを寄せて声を低くした。

「こ、た、え、ろ」
「お、王子の……顔が好きです……超ド好みなんです……好きすぎて頭おかしくなる……どの表情も……一生見つめていたいです」
「……顔?」

 顎に触れていた手が離される。
 瞬間、正直に話してしまったことに気づく。血の気が引いた。

 やばい、逆らえなかった! その顔で命令されると脳が溶けてしまう!!

 広い部屋には沈黙が訪れた。
 今度こそ終わった……解雇決定……さらば、王子……

 今度こそ処刑の言葉を待っていると、ソファに体を預けて思案していた王子がこちらを向いた。

「顔が好き……つまり、俺が何をしようが何を言おうがこの顔があれば関係ないし、お前はこの顔が見れれば良い、ということか?」
「ハイ、申し訳ございません、その通りでございます……」

 もう言い訳しても無駄だろう。どうせあと数分の従者生命だ。協力してくれた町のみんなの顔が浮かんだ。ごめん……俺の煩悩のせいで1日で解雇とか……どんな顔して戻ればいいんだ……

「それは好都合」
「へ?」

 間抜けな声が出た。王子は足を組み、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「いくら命令しても怯えたり逃げ出したりしない、そういう駒が欲しかったんだ」

 ……待て? 話がどんどん変な方向に行ってる気がするが、構わず王子は続ける。

「今日1日、お前の働きはそこそこ良い出来だったしな、鍛えればもっと使えるようになる」
「え、あの……?」

 王子の言葉が理解できず、首を捻りながら綺麗な顔を見つめた。

「この顔で命令されればお前は俺に逆らえないんだろう? 先ほど俺がこたえろ、と言ったらお前は洗いざらい吐いた。それが証拠だ」
「あの、俺は解雇では……?」
「解雇? こんな便利な駒、手放すわけないだろう。これからお前には、この顔を眺める代価として、俺の言うことを全て聞いてもらう」

 な、なにを言ってるんだ、この王子は……!?

「お前は一生、俺の下で働き続けろ! 大好きな俺の顔を眺めながらな! 光栄だろう?」

 俺を指さし、青色の瞳を真っ直ぐ向け傲慢に輝く王子の笑顔は、それはそれはこの世の何よりも美しいものだった。そ、そんな顔で微笑まれたら……

「ありがたく拝ませていただきます……」

 なすすべなく屈するしかなかった。
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