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王子の外見と内面
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「イーディス王子は本当に手がかかります。もう18だというのに、いつまで経っても子どものような調子ですから……」
「はは……」
俺もベッドから降りて服を整えながら、午後の仕事は何をすればいいのか思いを巡らせているとイオさんが手招きをした。後をついていくと、テーブルの近くに食事を置いたワゴンがあった。
「イーディス王子の朝食兼昼食とジェードさんの昼食をここにご用意しています。これを並べて王子を待ってやってください」
「え、俺の分もですか!? す、すみません。用意までしていただいて……」
「昔からイーディス王子の面倒は見慣れてますので。1人増えたところであまり変わりありません。お気になさらず」
申し訳ないぐらいにほんとにめちゃくちゃ優しい……! 俺イオさんの下で働けて幸せだ……!
「俺、これからも頑張ります! 王子の役にもイオさんの役にも立ちたいです!」
「一人称が崩れていますよ」
からかい気味に微笑むイオさんに頭を下げる。また口調を崩してしまった……恥ずかしい。
「しかし先程、"王子にベッドに引きずり込まれた"と言わなかったのは何故ですか?」
改まった声に食事を並べていた動きを止める。
「私は事情をわかっておりましたが、もし別の者に見られていたら全ての責任が貴方に降りかかることになっていましたよ」
微笑んでいた表情は変わり、厳しい眼差しだった。
「……眠ってしまったのは私の責任です」
試されていると思った。イオさんは俺がどういう人間なのかを見ようとしている……そんな気がした。言い訳して、このまましらばっくれるなんて性に合わない。
「王子に静かにしろと言われて身動きができなくなりましたが、抜け出して王子を起こすこともできたと思います……反省しています」
「真面目なのですね。真面目……というか、間違いを他人の所為だけにしない……優しいのですね」
「はは……そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます」
イオさんは再び柔らかい笑顔に戻っていた。
「ジェードさん。ハッキリ申しますが、王子はどうしようもなく自分勝手で言うことを聞きません」
ほんとにハッキリ言ったな……
「しかし、そのどんなときでも自分らしくいれる、形式にとらわれない……イーディス王子の自由で柔軟なところは、この国をさらに良くする重要なピースだと国王も第一王子も考えておられます。面倒をおかけしますが、王子のことをお願いしますね」
そうなのか……俺は平凡な町人だったから、王子としてのイーディス王子しか見ていなかった。そもそも顔しか見てなかった。
始まりは不純だけど俺は王子の従者になったんだ。王子の内面もちゃんと理解したい。立派な、王子に信頼される従者になれるように頑張ろう! 駒って言われたけど!
「はい!」
「よい返事です。……しかし、ジェードさんにも非があったのは事実。何度も繰り返されたら困ります。罰として夜は厨房のお皿洗いをやってもらいますので、今晩お声かけください」
「申し訳ございません……」
深く礼をすると、ふふ、と笑ってくれた。
「あの、もうひとつお聞きしたいのですが!」
思い当たることがあり、扉を開けて部屋を出ていくイオさんを呼び止めた。
「なんでしょう?」
「王子と……食事を共にしていいものなのでしょうか……」
イオさんは笑みを崩さなかった。
「王族の中には嫌がる方もいらっしゃいますが、イーディス王子はああ見えて食事は誰かと共にする方がお好きなのです。素直ではないですが、内心喜ばれると思いますよ」
そこに、着替えを終えた王子がやってきた。
「腹が減った」
「王子、食事はじきに準備が整いますのでお待ちください。ではジェードさん、また後で」
部屋を出るイオさんに礼をして見送る。着替えて身支度終わったイーディス王子もお美しい……! 今日もお召し物がとても似合っている。あれ王子のセンスなんだろうか、センス抜群じゃん天才天使、むしろ神……(?)
「おい、俺を見てないでさっさと飯の準備をしろ」
「ごめんなさい!」
見てたのバレた。内面も理解するって思ったのに、もう顔見てた。だって反則だもんあの顔。
王子はふかふかのイスにどかっと体を沈みこませた。早くしろと急かす視線が痛い。急いで食事と食器を並べていく。さすが王族の食事、食器の量がえげつない。並べ方、頑張って覚えてよかった……
「お前もここで食べるのか?」
王族に比べたら随分と質素なワンプレートでおさまる食事に王子は目線を移した。質素と言っても庶民には十分すぎる食事なのだが。
「そうさせていただこうかと……あ、王子が嫌でしたら退出いたします!」
「ふうん……別に構わないが」
「ありがとうございます!」
よっしゃ! 王子の食事シーンをこの目に焼き付ける! 心の中でガッツポーズをしながら、最後に自分の食事を王子の向かいに並べた。
「誰かと食事をするのは久しぶりだ……」
王子はポツンとそう溢し、食事を口に運んだ。少しだけ表情が柔らかくなったような、嬉しそうにしてくれたような……
結局、俺は王子の顔面を見つめすぎて、その料理の味を覚えていない。
「はは……」
俺もベッドから降りて服を整えながら、午後の仕事は何をすればいいのか思いを巡らせているとイオさんが手招きをした。後をついていくと、テーブルの近くに食事を置いたワゴンがあった。
「イーディス王子の朝食兼昼食とジェードさんの昼食をここにご用意しています。これを並べて王子を待ってやってください」
「え、俺の分もですか!? す、すみません。用意までしていただいて……」
「昔からイーディス王子の面倒は見慣れてますので。1人増えたところであまり変わりありません。お気になさらず」
申し訳ないぐらいにほんとにめちゃくちゃ優しい……! 俺イオさんの下で働けて幸せだ……!
「俺、これからも頑張ります! 王子の役にもイオさんの役にも立ちたいです!」
「一人称が崩れていますよ」
からかい気味に微笑むイオさんに頭を下げる。また口調を崩してしまった……恥ずかしい。
「しかし先程、"王子にベッドに引きずり込まれた"と言わなかったのは何故ですか?」
改まった声に食事を並べていた動きを止める。
「私は事情をわかっておりましたが、もし別の者に見られていたら全ての責任が貴方に降りかかることになっていましたよ」
微笑んでいた表情は変わり、厳しい眼差しだった。
「……眠ってしまったのは私の責任です」
試されていると思った。イオさんは俺がどういう人間なのかを見ようとしている……そんな気がした。言い訳して、このまましらばっくれるなんて性に合わない。
「王子に静かにしろと言われて身動きができなくなりましたが、抜け出して王子を起こすこともできたと思います……反省しています」
「真面目なのですね。真面目……というか、間違いを他人の所為だけにしない……優しいのですね」
「はは……そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます」
イオさんは再び柔らかい笑顔に戻っていた。
「ジェードさん。ハッキリ申しますが、王子はどうしようもなく自分勝手で言うことを聞きません」
ほんとにハッキリ言ったな……
「しかし、そのどんなときでも自分らしくいれる、形式にとらわれない……イーディス王子の自由で柔軟なところは、この国をさらに良くする重要なピースだと国王も第一王子も考えておられます。面倒をおかけしますが、王子のことをお願いしますね」
そうなのか……俺は平凡な町人だったから、王子としてのイーディス王子しか見ていなかった。そもそも顔しか見てなかった。
始まりは不純だけど俺は王子の従者になったんだ。王子の内面もちゃんと理解したい。立派な、王子に信頼される従者になれるように頑張ろう! 駒って言われたけど!
「はい!」
「よい返事です。……しかし、ジェードさんにも非があったのは事実。何度も繰り返されたら困ります。罰として夜は厨房のお皿洗いをやってもらいますので、今晩お声かけください」
「申し訳ございません……」
深く礼をすると、ふふ、と笑ってくれた。
「あの、もうひとつお聞きしたいのですが!」
思い当たることがあり、扉を開けて部屋を出ていくイオさんを呼び止めた。
「なんでしょう?」
「王子と……食事を共にしていいものなのでしょうか……」
イオさんは笑みを崩さなかった。
「王族の中には嫌がる方もいらっしゃいますが、イーディス王子はああ見えて食事は誰かと共にする方がお好きなのです。素直ではないですが、内心喜ばれると思いますよ」
そこに、着替えを終えた王子がやってきた。
「腹が減った」
「王子、食事はじきに準備が整いますのでお待ちください。ではジェードさん、また後で」
部屋を出るイオさんに礼をして見送る。着替えて身支度終わったイーディス王子もお美しい……! 今日もお召し物がとても似合っている。あれ王子のセンスなんだろうか、センス抜群じゃん天才天使、むしろ神……(?)
「おい、俺を見てないでさっさと飯の準備をしろ」
「ごめんなさい!」
見てたのバレた。内面も理解するって思ったのに、もう顔見てた。だって反則だもんあの顔。
王子はふかふかのイスにどかっと体を沈みこませた。早くしろと急かす視線が痛い。急いで食事と食器を並べていく。さすが王族の食事、食器の量がえげつない。並べ方、頑張って覚えてよかった……
「お前もここで食べるのか?」
王族に比べたら随分と質素なワンプレートでおさまる食事に王子は目線を移した。質素と言っても庶民には十分すぎる食事なのだが。
「そうさせていただこうかと……あ、王子が嫌でしたら退出いたします!」
「ふうん……別に構わないが」
「ありがとうございます!」
よっしゃ! 王子の食事シーンをこの目に焼き付ける! 心の中でガッツポーズをしながら、最後に自分の食事を王子の向かいに並べた。
「誰かと食事をするのは久しぶりだ……」
王子はポツンとそう溢し、食事を口に運んだ。少しだけ表情が柔らかくなったような、嬉しそうにしてくれたような……
結局、俺は王子の顔面を見つめすぎて、その料理の味を覚えていない。
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