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かわいいって何だ?
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食事を終えてからは昨日と同じように王子の執務の補佐。大きい執務机には大量の紙束が積み重なっている。
「昨日よりも書類の量、多いですね?」
「これは朝の分だ。これから昼の分に取りかかる」
「朝寝た分のツケですか……今日中に終わるんですか?」
「お前、一日俺と過ごしただけで随分と物を言うな」
「はっ、すみません! 生意気なことを言いました!」
動かしていた手を止め、頭を下げる。やばい、王族相手なのにずけずけと……というか普通に会話してた……いくら王子との利害の一致といっても、油断してたらクビになる。気を張り直さないと。
「俺としては一挙一動にビクビクされる方が不愉快だからな。お前はそれでいい」
それでいい……
柔らかいとも言えないけど、決して怒ってはいない声に顔をあげると、王子は少しだけ微笑んでいた。その笑顔はキラキラとしていて、眩しい。
「顔、良っ……」
やべ、尊すぎて声に出た。
「当たり前だ。それより手を動かせ。終わらんだろ」
「はい! ……澄ましてますけど、仕事溜まって、けっこう切羽詰まってます?」
「うるさい。今日はいつもより多いだけだ。俺は明日に仕事を残したくない」
口は悪くて高圧的だけど、あんまり怖くないな。俺にはわかりやすい仕事を振ってくれるし……顔も綺麗だし、俺と食事して喜んでくれるし。初見はただの暴君かと思ったけど素直じゃないだけなのかも。BLゲームの登場人物だし、ギャップのギャップを狙ってるのかもしれない。かっこいいけどかわいいな。
ん? かわいい……な……?
「おい、ボーッとするな」
「はっ」
王子が書類で俺の頭をバシンと叩いた。飛ばしてた意識を戻すと、王子のサファイア色に輝く瞳が俺を映す。
「あ、その……」
「なんだ」
「すみません、見惚れていました」
「見惚れるのはいいが、手を動かせと言っているだろ」
ああ、怒っても顔がいい……
でもそれだけじゃない。頬が熱い。なんだろ、さっきまでとは違うドキドキが……
*
その日の夜。王子との仕事を終えてから皿洗いのため厨房に向かった。
「ジェード、寝過ごしたんだって? 気にすんなって! 初めての仕事で疲れたんだろ」
「はは……」
隣で同じく皿を洗いながら、ベリルが陽気に励ましてくれた。正しくは寝坊ではないんだけど……イオさんがいい感じに伝えてくれたんだろう。
「というか、ベリルはなんで手伝ってくれるんだ? これは俺の罰なのに」
厨房にはほとんど人影は残っていなかった。残っている人は明日の仕込みをしていたり、仕事が終わったからか、酒を飲んだりしている。酒を飲むのはいいのか?
「手伝いじゃねぇよ。皿洗いは下っ端の仕事だからな」
「すごいな……」
「全然すごくねえ。やっぱ城の料理人ってレベル高くて驚いた。もっと立派な料理人になってやる」
「はー。やっぱすごいよ、かっけえ」
ベリルは少し頬を赤くして嬉しそうに笑い、俺と目を合わせた。
「お前だってすげーじゃん。王子の従者なんて。町にいる頃、修行?とか言って頑張ってたもんな」
「うん、ありがと」
見ててくれたんだ……ごめん、ベリルが城の料理人の試験受けるの知らなくて。周り見えてなさすぎた。王子のことしか見てなかった……
「なあ、ベリルは、イーディス王子のことどう思う?」
手を動かしながら、何気なく聞いてみる。
「イーディス王子? 顔だけしか見たことないけど……綺麗な顔だとは思うな。でもイーディス王子だけじゃなくて、ここの王族はみんな容姿端麗だよなあ」
そういえばそうだな……イーディス王子がド好みすぎてほんとにイーディス王子しか見てなかったけど、パレードで見た時はみんな揃って綺麗だ。
「イーディス王子のことかわいいと思う?」
「かわいい……? かわいい、は違う気がする」
「じゃあさ、かわいいってどんなときに思う?」
「は? なんだその質問。お前今日おかしいぞ。そんなにへこんでんのか?」
ベリルは顔をあげ、眉を寄せた。
まあ、そりゃそうなるよな……男相手にかわいいってどういう感情なんだろ。翡翠の頃でも思ったことないからわかんねえな……
「好きな相手には……思うかな」
静かに響いたその声は、強い意思を持っていた。
目を伏せ、再び手を動かしはじめたベリルの表情はわからなかった。
好きな、相手……
「……なるほど?」
「疑問で返すなよ! 真面目に答えたのに!」
「ってことは、え、ベリル、好きな人いんの!?」
「内緒」
ええ……と口を曲げると、ベリルはニカッと笑った。
「さ、これ終わらせようぜ。終わったら俺たちも飲むか!」
「それは新人だしやめとこ……」
「じょーだんだって! ほんとお前はからかいやすくて、かわ……うん、おもしろいな」
「昨日よりも書類の量、多いですね?」
「これは朝の分だ。これから昼の分に取りかかる」
「朝寝た分のツケですか……今日中に終わるんですか?」
「お前、一日俺と過ごしただけで随分と物を言うな」
「はっ、すみません! 生意気なことを言いました!」
動かしていた手を止め、頭を下げる。やばい、王族相手なのにずけずけと……というか普通に会話してた……いくら王子との利害の一致といっても、油断してたらクビになる。気を張り直さないと。
「俺としては一挙一動にビクビクされる方が不愉快だからな。お前はそれでいい」
それでいい……
柔らかいとも言えないけど、決して怒ってはいない声に顔をあげると、王子は少しだけ微笑んでいた。その笑顔はキラキラとしていて、眩しい。
「顔、良っ……」
やべ、尊すぎて声に出た。
「当たり前だ。それより手を動かせ。終わらんだろ」
「はい! ……澄ましてますけど、仕事溜まって、けっこう切羽詰まってます?」
「うるさい。今日はいつもより多いだけだ。俺は明日に仕事を残したくない」
口は悪くて高圧的だけど、あんまり怖くないな。俺にはわかりやすい仕事を振ってくれるし……顔も綺麗だし、俺と食事して喜んでくれるし。初見はただの暴君かと思ったけど素直じゃないだけなのかも。BLゲームの登場人物だし、ギャップのギャップを狙ってるのかもしれない。かっこいいけどかわいいな。
ん? かわいい……な……?
「おい、ボーッとするな」
「はっ」
王子が書類で俺の頭をバシンと叩いた。飛ばしてた意識を戻すと、王子のサファイア色に輝く瞳が俺を映す。
「あ、その……」
「なんだ」
「すみません、見惚れていました」
「見惚れるのはいいが、手を動かせと言っているだろ」
ああ、怒っても顔がいい……
でもそれだけじゃない。頬が熱い。なんだろ、さっきまでとは違うドキドキが……
*
その日の夜。王子との仕事を終えてから皿洗いのため厨房に向かった。
「ジェード、寝過ごしたんだって? 気にすんなって! 初めての仕事で疲れたんだろ」
「はは……」
隣で同じく皿を洗いながら、ベリルが陽気に励ましてくれた。正しくは寝坊ではないんだけど……イオさんがいい感じに伝えてくれたんだろう。
「というか、ベリルはなんで手伝ってくれるんだ? これは俺の罰なのに」
厨房にはほとんど人影は残っていなかった。残っている人は明日の仕込みをしていたり、仕事が終わったからか、酒を飲んだりしている。酒を飲むのはいいのか?
「手伝いじゃねぇよ。皿洗いは下っ端の仕事だからな」
「すごいな……」
「全然すごくねえ。やっぱ城の料理人ってレベル高くて驚いた。もっと立派な料理人になってやる」
「はー。やっぱすごいよ、かっけえ」
ベリルは少し頬を赤くして嬉しそうに笑い、俺と目を合わせた。
「お前だってすげーじゃん。王子の従者なんて。町にいる頃、修行?とか言って頑張ってたもんな」
「うん、ありがと」
見ててくれたんだ……ごめん、ベリルが城の料理人の試験受けるの知らなくて。周り見えてなさすぎた。王子のことしか見てなかった……
「なあ、ベリルは、イーディス王子のことどう思う?」
手を動かしながら、何気なく聞いてみる。
「イーディス王子? 顔だけしか見たことないけど……綺麗な顔だとは思うな。でもイーディス王子だけじゃなくて、ここの王族はみんな容姿端麗だよなあ」
そういえばそうだな……イーディス王子がド好みすぎてほんとにイーディス王子しか見てなかったけど、パレードで見た時はみんな揃って綺麗だ。
「イーディス王子のことかわいいと思う?」
「かわいい……? かわいい、は違う気がする」
「じゃあさ、かわいいってどんなときに思う?」
「は? なんだその質問。お前今日おかしいぞ。そんなにへこんでんのか?」
ベリルは顔をあげ、眉を寄せた。
まあ、そりゃそうなるよな……男相手にかわいいってどういう感情なんだろ。翡翠の頃でも思ったことないからわかんねえな……
「好きな相手には……思うかな」
静かに響いたその声は、強い意思を持っていた。
目を伏せ、再び手を動かしはじめたベリルの表情はわからなかった。
好きな、相手……
「……なるほど?」
「疑問で返すなよ! 真面目に答えたのに!」
「ってことは、え、ベリル、好きな人いんの!?」
「内緒」
ええ……と口を曲げると、ベリルはニカッと笑った。
「さ、これ終わらせようぜ。終わったら俺たちも飲むか!」
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