暴君王子の顔が良すぎる!

すももゆず

文字の大きさ
11 / 14

かわいいって何だ?

しおりを挟む
 食事を終えてからは昨日と同じように王子の執務の補佐。大きい執務机には大量の紙束が積み重なっている。

「昨日よりも書類の量、多いですね?」
「これは朝の分だ。これから昼の分に取りかかる」
「朝寝た分のツケですか……今日中に終わるんですか?」
「お前、一日俺と過ごしただけで随分と物を言うな」
「はっ、すみません! 生意気なことを言いました!」

 動かしていた手を止め、頭を下げる。やばい、王族相手なのにずけずけと……というか普通に会話してた……いくら王子との利害の一致といっても、油断してたらクビになる。気を張り直さないと。

「俺としては一挙一動にビクビクされる方が不愉快だからな。お前はそれでいい」

 それでいい……
 柔らかいとも言えないけど、決して怒ってはいない声に顔をあげると、王子は少しだけ微笑んでいた。その笑顔はキラキラとしていて、眩しい。

「顔、良っ……」

 やべ、尊すぎて声に出た。

「当たり前だ。それより手を動かせ。終わらんだろ」
「はい! ……澄ましてますけど、仕事溜まって、けっこう切羽詰まってます?」
「うるさい。今日はいつもより多いだけだ。俺は明日に仕事を残したくない」

 口は悪くて高圧的だけど、あんまり怖くないな。俺にはわかりやすい仕事を振ってくれるし……顔も綺麗だし、俺と食事して喜んでくれるし。初見はただの暴君かと思ったけど素直じゃないだけなのかも。BLゲームの登場人物だし、ギャップのギャップを狙ってるのかもしれない。かっこいいけどかわいいな。

 ん? かわいい……な……?

「おい、ボーッとするな」
「はっ」

 王子が書類で俺の頭をバシンと叩いた。飛ばしてた意識を戻すと、王子のサファイア色に輝く瞳が俺を映す。

「あ、その……」
「なんだ」
「すみません、見惚れていました」
「見惚れるのはいいが、手を動かせと言っているだろ」

 ああ、怒っても顔がいい……
 でもそれだけじゃない。頬が熱い。なんだろ、さっきまでとは違うドキドキが……





 その日の夜。王子との仕事を終えてから皿洗いのため厨房に向かった。

「ジェード、寝過ごしたんだって? 気にすんなって! 初めての仕事で疲れたんだろ」
「はは……」

 隣で同じく皿を洗いながら、ベリルが陽気に励ましてくれた。正しくは寝坊ではないんだけど……イオさんがいい感じに伝えてくれたんだろう。

「というか、ベリルはなんで手伝ってくれるんだ? これは俺の罰なのに」

 厨房にはほとんど人影は残っていなかった。残っている人は明日の仕込みをしていたり、仕事が終わったからか、酒を飲んだりしている。酒を飲むのはいいのか?

「手伝いじゃねぇよ。皿洗いは下っ端の仕事だからな」
「すごいな……」
「全然すごくねえ。やっぱ城の料理人ってレベル高くて驚いた。もっと立派な料理人になってやる」
「はー。やっぱすごいよ、かっけえ」

 ベリルは少し頬を赤くして嬉しそうに笑い、俺と目を合わせた。

「お前だってすげーじゃん。王子の従者なんて。町にいる頃、修行?とか言って頑張ってたもんな」
「うん、ありがと」

 見ててくれたんだ……ごめん、ベリルが城の料理人の試験受けるの知らなくて。周り見えてなさすぎた。王子のことしか見てなかった……

「なあ、ベリルは、イーディス王子のことどう思う?」

 手を動かしながら、何気なく聞いてみる。

「イーディス王子? 顔だけしか見たことないけど……綺麗な顔だとは思うな。でもイーディス王子だけじゃなくて、ここの王族はみんな容姿端麗だよなあ」

 そういえばそうだな……イーディス王子がド好みすぎてほんとにイーディス王子しか見てなかったけど、パレードで見た時はみんな揃って綺麗だ。

「イーディス王子のことかわいいと思う?」
「かわいい……? かわいい、は違う気がする」
「じゃあさ、かわいいってどんなときに思う?」
「は? なんだその質問。お前今日おかしいぞ。そんなにへこんでんのか?」

 ベリルは顔をあげ、眉を寄せた。
 まあ、そりゃそうなるよな……男相手にかわいいってどういう感情なんだろ。翡翠の頃でも思ったことないからわかんねえな……

「好きな相手には……思うかな」

 静かに響いたその声は、強い意思を持っていた。
 目を伏せ、再び手を動かしはじめたベリルの表情はわからなかった。

 好きな、相手……

「……なるほど?」
「疑問で返すなよ! 真面目に答えたのに!」
「ってことは、え、ベリル、好きな人いんの!?」
「内緒」

 ええ……と口を曲げると、ベリルはニカッと笑った。

「さ、これ終わらせようぜ。終わったら俺たちも飲むか!」
「それは新人だしやめとこ……」
「じょーだんだって! ほんとお前はからかいやすくて、かわ……うん、おもしろいな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学園ものに転生した悪役の男について

ひいきにみゐる
BL
タイトルの通りにございます。文才を褒められたことはないので、そういうつもりで見ていただけたらなと思います。

悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ

椿谷あずる
BL
平凡な高校生だった俺は、ある日事故で命を落としギャルゲーの世界に主人公としてに転生した――はずだった。薔薇色のハーレムライフを望んだ俺の前に、なぜか一緒に事故に巻き込まれた悪友・野里レンまで転生してきて!?「お前だけハーレムなんて、絶対ズルいだろ?」っておい、俺のハーレム計画はどうなるんだ?ヒロインじゃなく、男とばかりフラグが立ってしまうギャルゲー世界。俺のハーレム計画、開幕十分で即終了のお知らせ……!

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

第2王子は断罪役を放棄します!

木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。 前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。 それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。 記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる! ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる! スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します! この話は小説家になろうにも投稿しています。

俺の居場所を探して

夜野
BL
 小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。 そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。 そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、 このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。 シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。 遅筆なので不定期に投稿します。 初投稿です。

異世界転生した悪役令息にざまぁされて断罪ルートに入った元主人公の僕がオメガバースBLゲームの世界から逃げるまで

0take
BL
ふとひらめいたオメガバースもの短編です。 登場人物はネームレス。 きっと似たような話が沢山あると思いますが、ご容赦下さい。 内容はタイトル通りです。 ※2025/08/04追記 お気に入りやしおり、イイねやエールをありがとうございます! 嬉しいです!

処理中です...