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第4章 祭りの前のひと仕事、ふた仕事
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真っ白な壁にシンプルな……だが家ほどの大きさのある門。その奥には、さらに真っ白な建物。門と扉には、太陽を象徴するレリーフが飾られている。
すぐ隣には王宮がそびえ立つ。何度も通ったきらびやかな外装と窓から窺い見える豪奢な内装。王家の権威と、神々への信仰、その二つが両立してこの国は成り立っている。
両者が並び建っているのは、そのことの象徴だった。
(だからこそ、今、その一つに訴えかけるために、もう片方に助力を乞おうとしている……!)
教会の敷地内には修道士達が生活を送る修道院が数棟並ぶ。まだ誰も起き出している気配はない。だが修道院の朝は早い。日が昇るより前に誰かと鉢合わせする可能性は十分ある。
馬車は裏手に乗り付け、裏口の小さな戸が開いていた。いつも大司教の小間使いをしている若い修道士がレティシアとセルジュを迎え入れ、先導した。
木々が生い茂るばかりで見通しの悪い中を進むと、ひときわ白く大きな建物に近づいた。教会の敷地内でもっとも広大であり、もっとも荘厳な建物だ。
それは、レティシアが『偽聖女』へと転落してしまった、大聖堂だ。
「大司教様は大聖堂の奥でお待ちだ」
あの時の記憶が、一瞬、脳裏に甦る。
『偽聖女』の烙印を押された。そのことは、もういい。
レティシアの心に深く刻まれた傷は、別にある。
正面ではなく、脇にある小さな扉からそっと中に足を踏み入れた。その姿は、すぐに目に目に入る。
大聖堂の奥に、太陽のシンボルが掲げられた先にある大きな大きな影。太く固く、力強い根が幾本も床を通り抜けて根ざし、天井を破らんばかりに天に向かって枝葉を広げる、聖大樹の姿が。
一度はレティシアが枯らしてしまった、この国も民すべての希望の象徴。
レティシアは、触れることさえおこがましくて、その神々しい姿をただじっと見つめた。
その時、ふわりと何かがレティシアの目の前に降ってきた。軽くて薄い、花びらよりも大きく、布よりは小さいものだった。
「これは……葉?」
手触りはサラサラしているが、なんだか感触が固い。そして何となくだが、潤いを感じない。この感触には、覚えがあった。
いったい何だったか。
記憶を探ろうとしていると、前を歩いていたセルジュから呼ばれた。
「シア、どうしたんだ?」
「いえ、何でもありません、お兄様」
その葉を、どことなく捨てる気になれず、掌にそっと握ってセルジュに続いて歩いた。
信者達が普段足を運ぶことのない、教会内部の執務室が奥にはある。レティシアも入ったことがある。
次期聖女と目されていたレティシアはどうしても人目を引く。礼拝に訪れた際は、信者達の礼拝に支障が出てはいけないという理由で、いつもこの小部屋の方に呼ばれていた。
その代わり、大司教直々に付き添われ、ありがたい説教を受けていた。
(ここに来るのは、いったい何ヶ月ぶりかしら……)
張り詰めていた気持ちが、ふわりと懐かしい想いに包まれた。いつも、裏からこっそり招き入れられ、こうして静かに廊下を歩き、奥の部屋の扉をノックする。
そうすると、聞こえるのだ。穏やかな響きで、こう言う声が。
「お入り」
すぐ隣には王宮がそびえ立つ。何度も通ったきらびやかな外装と窓から窺い見える豪奢な内装。王家の権威と、神々への信仰、その二つが両立してこの国は成り立っている。
両者が並び建っているのは、そのことの象徴だった。
(だからこそ、今、その一つに訴えかけるために、もう片方に助力を乞おうとしている……!)
教会の敷地内には修道士達が生活を送る修道院が数棟並ぶ。まだ誰も起き出している気配はない。だが修道院の朝は早い。日が昇るより前に誰かと鉢合わせする可能性は十分ある。
馬車は裏手に乗り付け、裏口の小さな戸が開いていた。いつも大司教の小間使いをしている若い修道士がレティシアとセルジュを迎え入れ、先導した。
木々が生い茂るばかりで見通しの悪い中を進むと、ひときわ白く大きな建物に近づいた。教会の敷地内でもっとも広大であり、もっとも荘厳な建物だ。
それは、レティシアが『偽聖女』へと転落してしまった、大聖堂だ。
「大司教様は大聖堂の奥でお待ちだ」
あの時の記憶が、一瞬、脳裏に甦る。
『偽聖女』の烙印を押された。そのことは、もういい。
レティシアの心に深く刻まれた傷は、別にある。
正面ではなく、脇にある小さな扉からそっと中に足を踏み入れた。その姿は、すぐに目に目に入る。
大聖堂の奥に、太陽のシンボルが掲げられた先にある大きな大きな影。太く固く、力強い根が幾本も床を通り抜けて根ざし、天井を破らんばかりに天に向かって枝葉を広げる、聖大樹の姿が。
一度はレティシアが枯らしてしまった、この国も民すべての希望の象徴。
レティシアは、触れることさえおこがましくて、その神々しい姿をただじっと見つめた。
その時、ふわりと何かがレティシアの目の前に降ってきた。軽くて薄い、花びらよりも大きく、布よりは小さいものだった。
「これは……葉?」
手触りはサラサラしているが、なんだか感触が固い。そして何となくだが、潤いを感じない。この感触には、覚えがあった。
いったい何だったか。
記憶を探ろうとしていると、前を歩いていたセルジュから呼ばれた。
「シア、どうしたんだ?」
「いえ、何でもありません、お兄様」
その葉を、どことなく捨てる気になれず、掌にそっと握ってセルジュに続いて歩いた。
信者達が普段足を運ぶことのない、教会内部の執務室が奥にはある。レティシアも入ったことがある。
次期聖女と目されていたレティシアはどうしても人目を引く。礼拝に訪れた際は、信者達の礼拝に支障が出てはいけないという理由で、いつもこの小部屋の方に呼ばれていた。
その代わり、大司教直々に付き添われ、ありがたい説教を受けていた。
(ここに来るのは、いったい何ヶ月ぶりかしら……)
張り詰めていた気持ちが、ふわりと懐かしい想いに包まれた。いつも、裏からこっそり招き入れられ、こうして静かに廊下を歩き、奥の部屋の扉をノックする。
そうすると、聞こえるのだ。穏やかな響きで、こう言う声が。
「お入り」
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