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第一章 桜舞う
十
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そして桜の木に近寄ると、枝に手を伸ばした。ゆっくりと綾に近づいてきたその人が手にしていたのは、桜の花だった。淡い色と鈴のような花弁が愛らしい。
男性は、手のひらにのせた桜を、そっと、綾の髪に挿した。
「……うん、やっぱり綺麗や」
「……へ⁉」
綾の素頓狂な声に驚きもせず、その人はふわりと笑みを浮かべる。
「ほな、明日」
そう言って、男性は再び歩き出し、夜の闇に溶けていってしまった。
「えーと……猫さん、い、行きましょうか」
綾の言葉に反応したのか、猫は綾の腕から抜け出した。
そのまま庭を突っ切っていき、綾の寝泊まりする客間に入って、毛繕いを始めてしまった。
「あの方のお部屋じゃなくて、いいの?」
尋ねても、答えはない。当然だと言わんばかりの様子で、猫は寛いでいる。
その背を、綾はそっと撫でてやる。猫の喉がゴロゴロ鳴るのを聞いて、安心した。
「猫さん、私は明日には違うお部屋に移ります。だから今日だけ、このお部屋でご一緒させてくださいな」
猫は「にゃあ」と一鳴きすると、敷いてあった布団まで歩いていく。布団の中央、一番ふかふかしている箇所にどっかり座り込むと、身体を丸めた。
綾は、猫の邪魔にならないように、布団の端に潜り込む。そして、明日への不安や今日までの疲労を思ううちに、いつの間にか眠りに落ちていた。
男性は、手のひらにのせた桜を、そっと、綾の髪に挿した。
「……うん、やっぱり綺麗や」
「……へ⁉」
綾の素頓狂な声に驚きもせず、その人はふわりと笑みを浮かべる。
「ほな、明日」
そう言って、男性は再び歩き出し、夜の闇に溶けていってしまった。
「えーと……猫さん、い、行きましょうか」
綾の言葉に反応したのか、猫は綾の腕から抜け出した。
そのまま庭を突っ切っていき、綾の寝泊まりする客間に入って、毛繕いを始めてしまった。
「あの方のお部屋じゃなくて、いいの?」
尋ねても、答えはない。当然だと言わんばかりの様子で、猫は寛いでいる。
その背を、綾はそっと撫でてやる。猫の喉がゴロゴロ鳴るのを聞いて、安心した。
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猫は「にゃあ」と一鳴きすると、敷いてあった布団まで歩いていく。布団の中央、一番ふかふかしている箇所にどっかり座り込むと、身体を丸めた。
綾は、猫の邪魔にならないように、布団の端に潜り込む。そして、明日への不安や今日までの疲労を思ううちに、いつの間にか眠りに落ちていた。
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