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急に目が覚めた。
あのまま寝てしまったことを思い出す。
ベッドの横には幽霊はいない。
寝起きの重い瞼を力尽くで開ける。
時計は2時を指している。
寝たのは5時くらいだから9時間くらい寝ていたのか。
最近は睡眠時間がどんどん減っていって寝不足気味だったけれどよく寝れて良かった。こんな夜中だけれど久しぶりの良い目覚めだ。
夕飯も食べずお風呂も入らず寝てしまったけれどこんな時間から料理をする気にも買い物に行く気にもお風呂を沸かす気にもなりはしない。
やることもなくただベッドの上で天井を見つめる。
何があるわけでもない。真っ白なよく見る天井だ。
ぼーっとしているといろんなことを考える。
ただぼーっとしていてまた段々眠くなった頃。
ガチャ……
家の玄関の扉の鍵が開いた。
聞き間違いかと思って自分の耳を疑った。ぼーっとしていたからはっきり聞こえたとは言えないでも確かに聞こえた気もする。
キィィ……
玄関の扉が開いた。
聞き間違いな気がしない。確実に誰かが家に、部屋に入ってきている。
怖い怖い怖い怖い怖いか怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
そうだ。誰かに連絡しよう。ケータイはどこにおいたっけ。
目だけを動かして体は全く動かさずに探す。
見つけた。テーブルの上に置いたままだ。
寝る前の自分を恨む。
きっと今からケータイの場所へ移動しても家の中へ入ってきている何者かと会ってしまう。
結局は会うかもしれないけれど起きていたら殺されるかもしれない。寝ていたらその間に部屋の金目のものが奪われるだけで済むかもしれない。金目のものを奪って家を出て行ってから警察へ通報しても充分なくらいだろう。命があるなら金目のものなんてどうってことはない。
命より大事なものなんてない。生きてないと意味がない。
キシッ キシッ……
多分この部屋に向かって歩いてきている。ゆっくりと確実に向かっている。
心臓が壊れてしまいそうなほどに動いている。オーバーヒートして止まってしまわないか不安になるくらいに動いている。
身体の中で心臓は動き続けているが布団の中で身体は動きを止めている。
動いたら起きていると思われて殺されるかもしれない。
寝たフリだ。今の私にはこんなことしかできない。
台所もここからでは遠い。近くに対抗できそうな家具もない。
私にもっとお金があればいろんなおしゃれな家具や飾りなどを買うことができて今この瞬間対抗できるようなものが近くにあったかもしれない。
過去の自分を恨んでもしょうがない。
今の自分ができる1番のことをしよう。
寝たフリしかない。
頭はフル回転。でもこれ以外には思いつかない。
キシッ キシッ ……
もう多分すごく近くにいる。
怖い。頭がおかしくなりそうだ。
体はすごく動きたがっている。叫びたがっている。だが動いてはならない。
汗が止まらない。
じっとしているだけや掛け布団を被っていても汗を書くような季節ではない。
家に入ってきている何者かがどんな特徴。男か女かくらいでもいいから確認しないと警察は動いてくれないかもしれない。
そう思い寝返りをうったフリをしながら薄目で部屋の様子を確認する。
「え? アカリ? 」
私の部屋にアカリがいた。
寝たフリはやめて起き上がる。
「今私の部屋に入ってきたのはアカリ? 」
「そうよ。私よ」
アカリはすごく単調に答える。
いつもとは様子が違う。
メールか電話でも何回もしてきたのだろうか。無視していたなら悪かったな。
「驚かさないでよ。めっちゃ怖かったじゃん」
「驚かしちゃってごめんね。でも驚かすのもこれで最後だから。てか、なんで起きてるの? 私そんなにうるさかった? 」
「早めに寝たから目が覚めちゃっただけだよ。」
アカリが立っているのはベッドの横。
暗くてはっきり見えない部屋の中どことなくアカリがあのいなくなった幽霊に見えなくもない。
なんて思っていたら胸に激痛が走る。
咳というより吐いた。
手が真っ黒だ。血だ。吐血だ。
激痛の走った胸のあたりを抑えると濡れている。
恐る恐る見てみるとここもまた真っ黒。
理解できない。さっきから意味のわからないことが起こりすぎだ。感情の整理が追いつかない。
今は怒るべきなのだろうか。怖がるべきなのだろうか。笑うべきなのだろうか。わからない。
胸にもう一度激痛が走る。
また吐血。
アカリの方をみるとこちらを向きながら何かを手に持っている。鋭利な先端が月夜に反射して光って見える。
この激痛と大量の血。そこまで考えなくてもアカリが手に持っているものが包丁かナイフかの予想くらいはすぐにできた。
喋ろうとした瞬間また容赦なくその刃物は私の胸辺りに振り下ろされる。
うっすらと見えるアカリの顔は笑っている。恐ろしいくらいに。見たことないくらいに笑っている。
痛みを感じなくなってきた。
必要以上に痛みを感じると脳が痛みの感情を受け付けなくなると聞いたことがある。本当だったんだ。
胸をどんだけ抑えても血は止まらない。
きっと私は今すごく怯えている顔をしているだろう。でもそれには構わずに包丁は私の体にめがけて刺さってくる。
もうこの体が自分のものなのかわからなくなってくる。
確かに私の頭とつながっているけれど痛みは感じない。とても不思議な感覚だ。
段々と眠くなってきた。力尽くで瞼を開けようとしても力が入らない。
気づけば腕もだらんとしている気がする。
もう瞼が開かない。もう目の前は真っ暗だ。痛みも感じない。暑さも何も感じない。
このまま死んでしまうのだろう。
どうせならもっと遊んでおけばよかったな。
アカリに対しての恨みなんてない。そんな暇はない。
いろんなことが思い出される。
小学生の頃、中学生の頃、高校生の頃。親に反抗した時。好きな子に告白した時。友達と喧嘩した時。思い切ってイメチェンした時。受験勉強を頑張った時。走馬灯だ。
音、声だけが聞こえる。
あのまま寝てしまったことを思い出す。
ベッドの横には幽霊はいない。
寝起きの重い瞼を力尽くで開ける。
時計は2時を指している。
寝たのは5時くらいだから9時間くらい寝ていたのか。
最近は睡眠時間がどんどん減っていって寝不足気味だったけれどよく寝れて良かった。こんな夜中だけれど久しぶりの良い目覚めだ。
夕飯も食べずお風呂も入らず寝てしまったけれどこんな時間から料理をする気にも買い物に行く気にもお風呂を沸かす気にもなりはしない。
やることもなくただベッドの上で天井を見つめる。
何があるわけでもない。真っ白なよく見る天井だ。
ぼーっとしているといろんなことを考える。
ただぼーっとしていてまた段々眠くなった頃。
ガチャ……
家の玄関の扉の鍵が開いた。
聞き間違いかと思って自分の耳を疑った。ぼーっとしていたからはっきり聞こえたとは言えないでも確かに聞こえた気もする。
キィィ……
玄関の扉が開いた。
聞き間違いな気がしない。確実に誰かが家に、部屋に入ってきている。
怖い怖い怖い怖い怖いか怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
そうだ。誰かに連絡しよう。ケータイはどこにおいたっけ。
目だけを動かして体は全く動かさずに探す。
見つけた。テーブルの上に置いたままだ。
寝る前の自分を恨む。
きっと今からケータイの場所へ移動しても家の中へ入ってきている何者かと会ってしまう。
結局は会うかもしれないけれど起きていたら殺されるかもしれない。寝ていたらその間に部屋の金目のものが奪われるだけで済むかもしれない。金目のものを奪って家を出て行ってから警察へ通報しても充分なくらいだろう。命があるなら金目のものなんてどうってことはない。
命より大事なものなんてない。生きてないと意味がない。
キシッ キシッ……
多分この部屋に向かって歩いてきている。ゆっくりと確実に向かっている。
心臓が壊れてしまいそうなほどに動いている。オーバーヒートして止まってしまわないか不安になるくらいに動いている。
身体の中で心臓は動き続けているが布団の中で身体は動きを止めている。
動いたら起きていると思われて殺されるかもしれない。
寝たフリだ。今の私にはこんなことしかできない。
台所もここからでは遠い。近くに対抗できそうな家具もない。
私にもっとお金があればいろんなおしゃれな家具や飾りなどを買うことができて今この瞬間対抗できるようなものが近くにあったかもしれない。
過去の自分を恨んでもしょうがない。
今の自分ができる1番のことをしよう。
寝たフリしかない。
頭はフル回転。でもこれ以外には思いつかない。
キシッ キシッ ……
もう多分すごく近くにいる。
怖い。頭がおかしくなりそうだ。
体はすごく動きたがっている。叫びたがっている。だが動いてはならない。
汗が止まらない。
じっとしているだけや掛け布団を被っていても汗を書くような季節ではない。
家に入ってきている何者かがどんな特徴。男か女かくらいでもいいから確認しないと警察は動いてくれないかもしれない。
そう思い寝返りをうったフリをしながら薄目で部屋の様子を確認する。
「え? アカリ? 」
私の部屋にアカリがいた。
寝たフリはやめて起き上がる。
「今私の部屋に入ってきたのはアカリ? 」
「そうよ。私よ」
アカリはすごく単調に答える。
いつもとは様子が違う。
メールか電話でも何回もしてきたのだろうか。無視していたなら悪かったな。
「驚かさないでよ。めっちゃ怖かったじゃん」
「驚かしちゃってごめんね。でも驚かすのもこれで最後だから。てか、なんで起きてるの? 私そんなにうるさかった? 」
「早めに寝たから目が覚めちゃっただけだよ。」
アカリが立っているのはベッドの横。
暗くてはっきり見えない部屋の中どことなくアカリがあのいなくなった幽霊に見えなくもない。
なんて思っていたら胸に激痛が走る。
咳というより吐いた。
手が真っ黒だ。血だ。吐血だ。
激痛の走った胸のあたりを抑えると濡れている。
恐る恐る見てみるとここもまた真っ黒。
理解できない。さっきから意味のわからないことが起こりすぎだ。感情の整理が追いつかない。
今は怒るべきなのだろうか。怖がるべきなのだろうか。笑うべきなのだろうか。わからない。
胸にもう一度激痛が走る。
また吐血。
アカリの方をみるとこちらを向きながら何かを手に持っている。鋭利な先端が月夜に反射して光って見える。
この激痛と大量の血。そこまで考えなくてもアカリが手に持っているものが包丁かナイフかの予想くらいはすぐにできた。
喋ろうとした瞬間また容赦なくその刃物は私の胸辺りに振り下ろされる。
うっすらと見えるアカリの顔は笑っている。恐ろしいくらいに。見たことないくらいに笑っている。
痛みを感じなくなってきた。
必要以上に痛みを感じると脳が痛みの感情を受け付けなくなると聞いたことがある。本当だったんだ。
胸をどんだけ抑えても血は止まらない。
きっと私は今すごく怯えている顔をしているだろう。でもそれには構わずに包丁は私の体にめがけて刺さってくる。
もうこの体が自分のものなのかわからなくなってくる。
確かに私の頭とつながっているけれど痛みは感じない。とても不思議な感覚だ。
段々と眠くなってきた。力尽くで瞼を開けようとしても力が入らない。
気づけば腕もだらんとしている気がする。
もう瞼が開かない。もう目の前は真っ暗だ。痛みも感じない。暑さも何も感じない。
このまま死んでしまうのだろう。
どうせならもっと遊んでおけばよかったな。
アカリに対しての恨みなんてない。そんな暇はない。
いろんなことが思い出される。
小学生の頃、中学生の頃、高校生の頃。親に反抗した時。好きな子に告白した時。友達と喧嘩した時。思い切ってイメチェンした時。受験勉強を頑張った時。走馬灯だ。
音、声だけが聞こえる。
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