憂い視線のその先に

雪村こはる

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おまけ

01

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--3年後

「んぎゃーーー!」

 守屋家の朝は盛大な泣き声から始まる。とはいえ、つい1時間前にも起こされたばかりだ。
 むくっと体を起こした律。その隣で同時に千愛希も目を覚ました。

「あー……また泣いてる。瑠稀るきくん……」

 千愛希がのそっと起きてベビーベッドへ近付いた。結婚して2年、熱い新婚生活を送っていたが、2ヶ月前に家族が増えた。

「男の子ですね」

 そう産科医に言われた時には、律と手を取り合って喜んだものだ。千愛希も35歳を迎え、「結局高齢出産かぁ」なんて言っていたが、さすがは寝ずに働いていた体力の持ち主か、本人の回復力は並大抵ではなかった。

 しかし夜泣きが続く中、律も千愛希もすっかり寝不足である。

「よく泣くね……」

 ぼーっとしながらゆっくりと千愛希に近付く。

「律、いいよ。仕事まで寝てて」

「いや……そろそろ」

「んぎゃーー!!」

 律が呟いたところでまた泣き声が響く。千愛希の腕の中にいる瑠稀は、おとなしく抱かれていた。待ち望んでいた授乳に満足しているのだ。
 律は手を伸ばし、隣のベビーベッドから小さな体を抱えた。

「ほらね……」

「どっちか泣くとどっちか起きちゃうからなぁ……もういっその事部屋を分けたい」

「そしたら俺達もバラバラに寝なきゃじゃん」

 不服そうに顔をしかめる律は、千愛希同様に腕の中に子供を収めた。

「まさか双子とはね……」

 律と千愛希は声を揃え、小さく息をついた。男の子が生まれると聞いて着々と準備を進めていた。必要物品は全て揃い、千愛希も順調に経過を追っていた。

「あれ? 心音2つあるね」
 
 そう言われたのは生まれる少し前のこと。えぇっ!? と2人で目を丸くしたものだ。

「生まれるまでわからないこともあるからね。先にわかってよかったね」

 医師はそう言ったが、律は新たに物品を揃えたりと大忙しだった。
 出産は無事に終えたものの、その後に待ちかまえていたのは2人分の育児。1人だってわからないことだらけだというのに、考える間もなく2人目が声を上げる。

瑠唯るいもお腹空いたのかな?」

「双子だしね……タイミングが同じなんじゃない」

「同時にあげとけば次も同時に泣くか……」

「そんなに都合よくいくかね」

 律はふわっと欠伸をすると千愛希の服をたくしあげる。

「ちょ、律?」

 千愛希をベビーベッドに前かがみにさせ、瑠唯をその下に差し込んだ。

「とりあえず、現状維持で」

「律っ!」

 両乳を双子に陣取られ、身動きのできない千愛希は、ひいっと顔を歪めながら律を見る。

「とりあえず顔洗ってくる。もう支度するよ」

 律はさらりとその場を離れ、洗面所へ向かった。
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