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友人の悩み
【5】
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え? ……血? 何で……。
胸の中がざわざわとする。一気に血の気が引いた気がして、どうしようかとその場から動けなくなった。
妊娠してから今まで出血したことなんてなかった。あまねくんに言われて極力外出しないようにしていたし、安定期に入るまではとにかく気を付けるようにしていた。
それなのに、どうして血なんか……。
少量の付着程度だったが、頭に浮かんだのは流産の文字。このまま動いて病院に行けば、歩いている内に大量に出血して、赤ちゃんまで流れて出てきてしまうんじゃないか……。
そんな最悪なことが頭を過って、身動きがとれない。
とにかく病院に連絡しなきゃ……。
あんなに茉紀とハイジさんのことで頭がいっぱいだったのに、今はそれどころではない。もし、流産なんかしたら……。
あまねくんとの子供がいなくなってしまう。そう考えただけで怖くて涙が溢れた。
這うようにしてリビングへ戻り、病院に電話をかけた。
事情を説明すれば、すぐに受診してくださいと言われた。
早く病院に行かないと。そうは思うが、やはり怖くてその場から動けなかった。
どうしよう……。あまねくんは仕事中だし、うちの両親だって仕事中だ。姉のさくらはもうお腹が大きくてとても迎えにきてもらうような状況じゃない。それに、そんな姉に余計な心配もかけたくはない。
ダリアさんだっておばあちゃんをみているため、家を空けられないし……。
どうしようかと悩んだが、何も言わずに受診して後からあまねくんに何で言ってくれなかったのかと怒られても困る。とりあえず連絡くらいは入れておこう。そう思い、あまねくんへ電話をかけた。
しかし、彼は出なかった。お客さんのところに行っているのだろうか。
どうしよう……。あまねくん、助けて。
不安で不安で仕方がない。一人で病院に行くのも恐ろしく、だからといって行かないわけにもいかない。
誰か付き添ってくれないだろうか……。喧嘩したばかりで茉紀にもお願いできないし……。奏ちゃんはまだパリから戻ってきていない。
こんな時に誰にも頼ることができないなんて……。涙を拭いながら、とにかく病院に行く準備をと診察券や財布を用意する。
その途中で、藁にもすがる思いで律くんに電話をかけた。
もし、事務所にこもって仕事をしていたら出てくれるかもしれない……。
仕事中に電話をかけるなんて非常識だとわかっている。けれど、不安と恐怖で押し潰されてしまいそうだった。後で怒られたっていい。今は、とにかく誰かの声を聞きたかった。
「……まどかさん?」
何回かコールが鳴って、律くんの声が聞こえた。
「り、律くん……」
「え? 何? 何事?」
「ごめっ、仕事中に、ごめんね……」
「何かあったんですか?」
「今、出血して……病院、すぐ来て下さいって言われて。でも、怖くて動けな……。あまねくんも、仕事で、電話出なくて……どうしよ……」
「出血? ちょっと、待ってて下さい。すぐ行くから」
「で、でも……、律くん仕事」
「いいから。何とでもなります。とにかく行くから待ってて」
「うん、ごめ……」
律くんの声を聞いて安心したのか、次々と涙が溢れて止まらなかった。
律くんには申し訳ない気持ちでいっぱいだが、とにかく一人で病院に行かなくてもよさそうだ。それだけで気持ちが落ち着いていくようだった。
10分程して、チャイムが鳴る。早い……。いくら律くんの勤める事務所も街中にあるといっても、こんなにすぐにマンションに来てくれるなんて……。
すぐに解錠すると、「まどかさん!?」と勢いよくドアが開けられた。
「律くん……」
「出血ってどういうこと!? 子供は大丈夫なんですか!?」
血相を変えて私に駆け寄る律くん。額には汗が滲んでいる。走って来てくれたのだろうか。
電話ではもう少し冷静に思えたのに。
「わかんないの……。お腹痛くてトイレ行ったら血がついてて……そんなにいっぱい出たわけじゃないんだけど……」
「とにかく病院行きましょう。歩ける?」
「うん……」
律くんに促され、病院に行く。普段は徒歩で行くクリニックだが、急いだ方がいいと今日は律くんが車を出してくれた。
胸の中がざわざわとする。一気に血の気が引いた気がして、どうしようかとその場から動けなくなった。
妊娠してから今まで出血したことなんてなかった。あまねくんに言われて極力外出しないようにしていたし、安定期に入るまではとにかく気を付けるようにしていた。
それなのに、どうして血なんか……。
少量の付着程度だったが、頭に浮かんだのは流産の文字。このまま動いて病院に行けば、歩いている内に大量に出血して、赤ちゃんまで流れて出てきてしまうんじゃないか……。
そんな最悪なことが頭を過って、身動きがとれない。
とにかく病院に連絡しなきゃ……。
あんなに茉紀とハイジさんのことで頭がいっぱいだったのに、今はそれどころではない。もし、流産なんかしたら……。
あまねくんとの子供がいなくなってしまう。そう考えただけで怖くて涙が溢れた。
這うようにしてリビングへ戻り、病院に電話をかけた。
事情を説明すれば、すぐに受診してくださいと言われた。
早く病院に行かないと。そうは思うが、やはり怖くてその場から動けなかった。
どうしよう……。あまねくんは仕事中だし、うちの両親だって仕事中だ。姉のさくらはもうお腹が大きくてとても迎えにきてもらうような状況じゃない。それに、そんな姉に余計な心配もかけたくはない。
ダリアさんだっておばあちゃんをみているため、家を空けられないし……。
どうしようかと悩んだが、何も言わずに受診して後からあまねくんに何で言ってくれなかったのかと怒られても困る。とりあえず連絡くらいは入れておこう。そう思い、あまねくんへ電話をかけた。
しかし、彼は出なかった。お客さんのところに行っているのだろうか。
どうしよう……。あまねくん、助けて。
不安で不安で仕方がない。一人で病院に行くのも恐ろしく、だからといって行かないわけにもいかない。
誰か付き添ってくれないだろうか……。喧嘩したばかりで茉紀にもお願いできないし……。奏ちゃんはまだパリから戻ってきていない。
こんな時に誰にも頼ることができないなんて……。涙を拭いながら、とにかく病院に行く準備をと診察券や財布を用意する。
その途中で、藁にもすがる思いで律くんに電話をかけた。
もし、事務所にこもって仕事をしていたら出てくれるかもしれない……。
仕事中に電話をかけるなんて非常識だとわかっている。けれど、不安と恐怖で押し潰されてしまいそうだった。後で怒られたっていい。今は、とにかく誰かの声を聞きたかった。
「……まどかさん?」
何回かコールが鳴って、律くんの声が聞こえた。
「り、律くん……」
「え? 何? 何事?」
「ごめっ、仕事中に、ごめんね……」
「何かあったんですか?」
「今、出血して……病院、すぐ来て下さいって言われて。でも、怖くて動けな……。あまねくんも、仕事で、電話出なくて……どうしよ……」
「出血? ちょっと、待ってて下さい。すぐ行くから」
「で、でも……、律くん仕事」
「いいから。何とでもなります。とにかく行くから待ってて」
「うん、ごめ……」
律くんの声を聞いて安心したのか、次々と涙が溢れて止まらなかった。
律くんには申し訳ない気持ちでいっぱいだが、とにかく一人で病院に行かなくてもよさそうだ。それだけで気持ちが落ち着いていくようだった。
10分程して、チャイムが鳴る。早い……。いくら律くんの勤める事務所も街中にあるといっても、こんなにすぐにマンションに来てくれるなんて……。
すぐに解錠すると、「まどかさん!?」と勢いよくドアが開けられた。
「律くん……」
「出血ってどういうこと!? 子供は大丈夫なんですか!?」
血相を変えて私に駆け寄る律くん。額には汗が滲んでいる。走って来てくれたのだろうか。
電話ではもう少し冷静に思えたのに。
「わかんないの……。お腹痛くてトイレ行ったら血がついてて……そんなにいっぱい出たわけじゃないんだけど……」
「とにかく病院行きましょう。歩ける?」
「うん……」
律くんに促され、病院に行く。普段は徒歩で行くクリニックだが、急いだ方がいいと今日は律くんが車を出してくれた。
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