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ファンクラブ
【6】
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「え? え? 初めて名前呼んでもらった時って、周くんもまどかさんのファンだったの?」
千愛希さんは、身を乗り出してあまねくんに尋ねる。あまねくんに話しかけるのは平気なようだ。
「そうそう。10年越しの片想いが実って、奥さんにまでなってくれました」
珍しく上機嫌なあまねくん。普段、初対面の方と話す時にはもっとしっかりしていて紳士的な雰囲気を崩さないのに、今では頬が緩みっぱなしだ。
「え!? すごい、すごい! いいな! どうやって出会ったの!?」
「それはそんな簡単には教えられませんよ。付き合うまでどれ程の下積みを経て、苦難を乗り越えてきたことか……」
わなわなと手を震わせて、まるで生死をさ迷ったのかとでも思わせるような空気を漂わせている。
「そうだよね、そうだよね! 周くん、すごいね! こんなに素敵な女性のハートを射止めるなんて、並の努力じゃ無理だよ!」
まだ涙を浮かべて大きく何度も頷いている千愛希さん。
「わかってくれますか! 興奮して舞い上がりそうなのを必死で抑えてポーカーフェイスを気取り、どれ程紳士的な態度を心がけたことか。
悪者から守るためにそれはもう気が遠くなるようなことまで調べに調べてようやく救い出したわけですよ。囚われの身だったまどかさんが初めて俺に好きだと言ってくれた瞬間、世界は生まれ変わりましたね」
あまねくんも何故か深く頷き、対角線上で謎のやり取りを始めた2人。囚われの身ってなに? 世界が生まれ変わったって何? 天下統一でもしたの?
わけのわからない会話についていけず律くんを見れば、明らかに引いているのがわかる。顔をひきつらせて視線だけを交互に隣と向かいに移している。
そんな律くんに「ねぇ、何の話してんの?」と聞けば、ゆっくり首を横に振り「わかんない」と囁くような声で言われる。もはやほとんど口パクである。
「何なの!? 実に興味深い! 周くんは、まどかさんを救ったヒーローなの!?」
「ええ、そうなんです。悪者をやっつけましてね。ただ、俺1人の力ではどうにもならなかった。そこにいる兄にも協力していただきまして、多くの皆様に支えられてようやく姫君の奪還に成功したわけですよ!」
奪還も何も、そもそも誰のものでもないけれど……。その悪者、まだ実刑もついてないしね。
壮大なスケールで話は進むものだから、おそらく単なる恋愛の縺れに関する事柄が、日本問題を凌駕する程の最大ニュースのように聞こえる。
千愛希さんは、身を乗り出してあまねくんに尋ねる。あまねくんに話しかけるのは平気なようだ。
「そうそう。10年越しの片想いが実って、奥さんにまでなってくれました」
珍しく上機嫌なあまねくん。普段、初対面の方と話す時にはもっとしっかりしていて紳士的な雰囲気を崩さないのに、今では頬が緩みっぱなしだ。
「え!? すごい、すごい! いいな! どうやって出会ったの!?」
「それはそんな簡単には教えられませんよ。付き合うまでどれ程の下積みを経て、苦難を乗り越えてきたことか……」
わなわなと手を震わせて、まるで生死をさ迷ったのかとでも思わせるような空気を漂わせている。
「そうだよね、そうだよね! 周くん、すごいね! こんなに素敵な女性のハートを射止めるなんて、並の努力じゃ無理だよ!」
まだ涙を浮かべて大きく何度も頷いている千愛希さん。
「わかってくれますか! 興奮して舞い上がりそうなのを必死で抑えてポーカーフェイスを気取り、どれ程紳士的な態度を心がけたことか。
悪者から守るためにそれはもう気が遠くなるようなことまで調べに調べてようやく救い出したわけですよ。囚われの身だったまどかさんが初めて俺に好きだと言ってくれた瞬間、世界は生まれ変わりましたね」
あまねくんも何故か深く頷き、対角線上で謎のやり取りを始めた2人。囚われの身ってなに? 世界が生まれ変わったって何? 天下統一でもしたの?
わけのわからない会話についていけず律くんを見れば、明らかに引いているのがわかる。顔をひきつらせて視線だけを交互に隣と向かいに移している。
そんな律くんに「ねぇ、何の話してんの?」と聞けば、ゆっくり首を横に振り「わかんない」と囁くような声で言われる。もはやほとんど口パクである。
「何なの!? 実に興味深い! 周くんは、まどかさんを救ったヒーローなの!?」
「ええ、そうなんです。悪者をやっつけましてね。ただ、俺1人の力ではどうにもならなかった。そこにいる兄にも協力していただきまして、多くの皆様に支えられてようやく姫君の奪還に成功したわけですよ!」
奪還も何も、そもそも誰のものでもないけれど……。その悪者、まだ実刑もついてないしね。
壮大なスケールで話は進むものだから、おそらく単なる恋愛の縺れに関する事柄が、日本問題を凌駕する程の最大ニュースのように聞こえる。
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