【R18】美人過ぎる○○は今日も旦那様からの寵愛を受ける

雪村こはる

文字の大きさ
68 / 208
こんにちは赤ちゃん

【10】

しおりを挟む
「それに対して茉紀がすっごく怒って、うちの母親に怒鳴ったんです」

 義母に怒鳴るなんて凄いな……。凄い剣幕で怒る茉紀を思い出し、私は思わず苦笑した。

「でも俺、その時茉紀のことを怒ったんです。確か茉紀の都合で預けてて……。面倒見てもらっておいて、その言い方はないんじゃないかって。茉紀は、母親の味方をするのかって俺のことまで責めてきました。その時には、なんて自分勝手な女だって思って、久しぶりに大喧嘩しました」

 複雑そうな表情を浮かべる彼。温厚そうな彼が、茉紀と対等に口論する姿など想像もつかなかった。

「でも、夫婦なら喧嘩くらいしますよ……」

「まあ、そうなんですけどね……。でも、俺は何にもわかってなくて……。知らなかったんです。哺乳瓶に慣れると、母乳を飲まなくなるって……そういうのは母親の役目だって勝手に決めつけてたんで」

 確かに母乳の出ない父親には、そこまでの考えは至らないだろう。茉紀のことだから「母乳出ない奴は黙ってて」とか言いそうだし……。
 
「うちの母も、俺が長男なんで光輝と麗夢を溺愛してて……。茉紀を追い出すようにして気分転換にどこかに出掛けさせたりしてたみたいなんです。
 俺は平日仕事でいないし、多分茉紀からそのことについて不満を訴えられてたんですけど、仕事で疲れててまともに茉紀の話も聞かなかったんです」

 それだけ聞くと、どこの夫婦にもありそうな話だと思った。茉紀は茉紀で喜んで預かってくれるから楽だなんて言っていたけれど、本当は義母に面倒を見てもらうのは嫌だったのかもしれない。

「そしたらその内、麗夢が直接母乳を飲まなくなっちゃって……。俺、バカなんで母乳あげなくていいなら、楽でいいじゃんって笑ってたんです。
 でもある時、夜中に茉紀が泣きながら搾乳? っていうでしたっけ? してるの見て……ああ、俺茉紀の楽しみ奪ったんだなぁってその時他人事みたいに思ったんです」

 そこまで聞いて、私は胸の奥がぎゅっと痛くなった。今考えると、よくハイジさんの店に行きたがり、お酒を煽るように飲んでいた茉紀。

「もう母乳飲まなくなっちゃったからやめたんだー」そんなことをあっけらかんとした様子で言っていた。
 私にだって、泣く程辛かったとは言ってくれなかった。

「それくらいからですかね? 夜出てっては朝帰って来たり、休みの日は昼まで寝てたり……。何か、家事も育児もすっかりやる気がなくなっちゃったみたいで……。今では母が2人を預かりたいって言うと、喜んで預けるんです。
 粉ミルクばっかりになったことに俺もさすがに気になって、たまには母乳もあげた方がいいんじゃないって言ったら、もうとっくに出ないからって睨まれまして……。って、俺っ、すみません……こんな話……」

 彼ははっとしたように顔を上げ、申し訳無さそうに頭を下げた。
 いや、もう今更だし……そこまで聞いたら続きが気になるし……。

「いえ……。私ももうすぐ母親になる身なので、気にしないで続けて下さい」

 そう言って彼の言葉を待った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

専属秘書は極上CEOに囚われる

有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...