81 / 208
こんにちは赤ちゃん
【23】
しおりを挟む
「でしょ? まどかちゃんだって変わってるんだよ。今までの相談は全て茉紀ちゃんだったのに、あまねくんが傍にいるようになったらその役割はあまねくんになった」
「……そうですね」
「あまねくんと新婚生活が始まってから、色々見えてきたでしょ?」
「何がですか?」
「あまねくんの素顔? 俺はまどかちゃんよりも長く彼と一緒にいるからね。君に対する愛情が異常なことも知ってるよ」
ハイジさんはそう言ってにやりと笑う。ということは、あのコレクションや写真のことも……。クローゼットに隠してある箱の存在を思い出し、ぞっとした。
「ほら、そんな顔してる。その相手が元彼だったなら、真っ先に茉紀ちゃんに相談したでしょ? でも今はしない。それは、そんなあまねくんのことも含めてまどかちゃんが好きで、今一番信用してるのは彼だから」
「……否定はしません」
「そうなってくるとさ、茉紀ちゃんだって悲しいさ。何でもかんでも解決させるのはあまねくんで、いつの間にか頼りになる年下の旦那に親友奪われて。結婚生活をどんなふうに送っているのかの報告もないなんてさ」
ハイジさんにそう言われて、ようやく私の行動を振り返る。そういえばそうだ。私だって茉紀に何も言ってこなかった。
あまねくんとマンションで喧嘩をして以来、お互いに隠し事はやめようってことになった。陽菜ちゃんの存在がちらついた時には不安にもなった。今までの私ならあの時点ですぐに茉紀に相談していただろう。
しかし、私が泣きながら陽菜ちゃんについて尋ね、あまねくんは全てのことを包み隠さず語ってくれた。
あまねくんにとって不利なことも、もしかしたら私に嫌われるんじゃないかなんて思いながら、涙ながらに本当のあまねくんを見せてくれた。
私は彼を心から信用しているし、彼になら全てを打ち明けてもいいと思っている。いつの間にか私も生活の中心はあまねくんになってしまっていたのだ。
「そういうことだよ。自分のことは気にならなくても、他人のことは目につく。まあ、俺はあまねくんからタイムリーに話を聞いてたから全部知ってたけど」
「そうなんですか!?」
「そりゃそうでしょ。これでも一応君を落とすために協力した友人だからね」
何の悪びれもなくそう彼は言う。別にいいけど……別にいいけど、私と茉紀よりも深い友情を見せられているかのようでちょっと腹立たしい。
私は、かき混ぜた卵の半分を使ってオムレツを作り、半分を茶碗蒸しに使った。これはハイジさんの分。
私とあまねくんの分は綺麗に殻を洗ってから卵を割り、同じようにオムレツと茶碗蒸しを拵えた。
「だから、今回のことも茉紀ちゃんを責めないでやってよ」
「……わかってます。今1人で泣いてるわけじゃないならそれでいいです。私も茉紀が自分で解決させるまで待ちますから」
「うん。そうしてくれると助かるよ」
ハイジさんはそう言って、ようやくあまねくんに見せるような優しい笑顔を私に向けてくれた。
土曜日ということもあり、休日出勤を早く切り上げて帰宅したあまねくんは、リビングにいるハイジさんの姿を見つけて目を見開いた。
「え? 何してんの?」
「話すと長いんだ……」
ハイジさんは、ふうっと軽く息をつく。
私は皿を並べて、あまねくんにも先に食べるよう勧めた。
「え? なんか……卵料理多くない?」
席に着くや否や顔をひきつらせているあまねくんに、「だから話すと長いんだって」とハイジさんが言った。
割れた卵は全てハイジさんに使ったことは、あまねくんにも秘密にしておいた。私を泣かせた罰ですからね。ちゃんと火を通したし、大丈夫な筈だもん。
少しだけハイジさんのお腹を心配しながら、早めの晩餐を開始した。
「……そうですね」
「あまねくんと新婚生活が始まってから、色々見えてきたでしょ?」
「何がですか?」
「あまねくんの素顔? 俺はまどかちゃんよりも長く彼と一緒にいるからね。君に対する愛情が異常なことも知ってるよ」
ハイジさんはそう言ってにやりと笑う。ということは、あのコレクションや写真のことも……。クローゼットに隠してある箱の存在を思い出し、ぞっとした。
「ほら、そんな顔してる。その相手が元彼だったなら、真っ先に茉紀ちゃんに相談したでしょ? でも今はしない。それは、そんなあまねくんのことも含めてまどかちゃんが好きで、今一番信用してるのは彼だから」
「……否定はしません」
「そうなってくるとさ、茉紀ちゃんだって悲しいさ。何でもかんでも解決させるのはあまねくんで、いつの間にか頼りになる年下の旦那に親友奪われて。結婚生活をどんなふうに送っているのかの報告もないなんてさ」
ハイジさんにそう言われて、ようやく私の行動を振り返る。そういえばそうだ。私だって茉紀に何も言ってこなかった。
あまねくんとマンションで喧嘩をして以来、お互いに隠し事はやめようってことになった。陽菜ちゃんの存在がちらついた時には不安にもなった。今までの私ならあの時点ですぐに茉紀に相談していただろう。
しかし、私が泣きながら陽菜ちゃんについて尋ね、あまねくんは全てのことを包み隠さず語ってくれた。
あまねくんにとって不利なことも、もしかしたら私に嫌われるんじゃないかなんて思いながら、涙ながらに本当のあまねくんを見せてくれた。
私は彼を心から信用しているし、彼になら全てを打ち明けてもいいと思っている。いつの間にか私も生活の中心はあまねくんになってしまっていたのだ。
「そういうことだよ。自分のことは気にならなくても、他人のことは目につく。まあ、俺はあまねくんからタイムリーに話を聞いてたから全部知ってたけど」
「そうなんですか!?」
「そりゃそうでしょ。これでも一応君を落とすために協力した友人だからね」
何の悪びれもなくそう彼は言う。別にいいけど……別にいいけど、私と茉紀よりも深い友情を見せられているかのようでちょっと腹立たしい。
私は、かき混ぜた卵の半分を使ってオムレツを作り、半分を茶碗蒸しに使った。これはハイジさんの分。
私とあまねくんの分は綺麗に殻を洗ってから卵を割り、同じようにオムレツと茶碗蒸しを拵えた。
「だから、今回のことも茉紀ちゃんを責めないでやってよ」
「……わかってます。今1人で泣いてるわけじゃないならそれでいいです。私も茉紀が自分で解決させるまで待ちますから」
「うん。そうしてくれると助かるよ」
ハイジさんはそう言って、ようやくあまねくんに見せるような優しい笑顔を私に向けてくれた。
土曜日ということもあり、休日出勤を早く切り上げて帰宅したあまねくんは、リビングにいるハイジさんの姿を見つけて目を見開いた。
「え? 何してんの?」
「話すと長いんだ……」
ハイジさんは、ふうっと軽く息をつく。
私は皿を並べて、あまねくんにも先に食べるよう勧めた。
「え? なんか……卵料理多くない?」
席に着くや否や顔をひきつらせているあまねくんに、「だから話すと長いんだって」とハイジさんが言った。
割れた卵は全てハイジさんに使ったことは、あまねくんにも秘密にしておいた。私を泣かせた罰ですからね。ちゃんと火を通したし、大丈夫な筈だもん。
少しだけハイジさんのお腹を心配しながら、早めの晩餐を開始した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
専属秘書は極上CEOに囚われる
有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる