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風雲児
【38】
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ーー
ある日、お義父さんから電話がかかってきた。快晴のいい日だった。しかし、電話の内容を聞いて私は息を飲んだ。
雅臣の療養が終わり、本格的に裁判が動き始めたとのことだった。
色んな容疑で連行され、次々と色んな疑惑があったため、彼は多くの罪を背負っているようにみえた。けれど、実際のところ、脱税と詐欺に関しては無関係であったことが証明されている。
問題は、私の家への住居侵入と傷害、それから強制わいせつ、殺人未遂についてだ。それだけでも立派な犯罪者だけれど。
そんなことさえしなければ、父親と兄から馬鹿にされ続け、罪を擦り付けられようとした哀れな税理士で済んだものを。
だからといって私を騙し、別に婚約者をつくっていた事実はなくならない。それでも私が雅臣と籍を入れていたわけではない以上、それは法には引っ掛からない。
税理士として再スタートを切れたはずだ。
もとい、脱税をしていたのは雅臣ではないため、彼の税理士免許が剥奪されたわけではない。しかし、税理士としての信用を落とし、活躍の場を狭めたことは事実である。
だからおそらく税理士としてではなく、新たに企業を始めるという考えに至ったのだろう。
どちらにせよ私を裏切り、あまねくんを殺そうとした罪は重い。いくら彼が過去に私をとても好きでいてくれていたとしても、もしかしたら隣にあまねくんはいなかったかもしれない。その恐怖はいつまでたっても消えない。
私は冷静にこれからの流れについて語るお義父さんの言葉に耳を傾けた。
今回の件は刑事裁判となるため、主に検事さんと雅臣の弁護士さんとで行われることとなるそうだ。
騙す、騙されたの民事裁判であれば私は被害者として雅臣を訴えるが、今回はすでに殺人未遂の容疑まであるため、私は証人として裁判に出向くそうだ。
とにかく難しい言葉がたくさん出てきたけれど、お義父さんに言われた通り証言していけば大丈夫だと言われ、安堵した。
あまねくんのお父さんが弁護士さんでよかった。雅臣と揉めていたところで、私には弁護士の知り合いなんていないし、弁護士を紹介してくれる知人もいない。
最悪泣き寝入りをするか、殺されていたかもしれない。
人生なんてわからないものだと深く考えさせられた。
当の雅臣はと言うと、車椅子生活を余儀なくされ、今では自力で車椅子に乗れる程には回復したようだ。ただ、まだ全てが自分でできるわけではなく、人の手を借りることの方が多い。
お義父さんは雅臣に会いに行ったそうだが、もう覚悟を決めているようで悪態をつくこともなかったそうだ。
それは以前にも聞いていたが、お義父さんもあの態度が本当の彼であれば裁判も直ぐに片が付くかもしれないねなんて言っていた。
あまねくんに全てを話すと「ここまで長かったね。スムーズに終わるといいけど」と言って眉をひそめた。
あんなにも雅臣に対して憤りを顕にしていたあまねくんだったが、半年以上も経ち、おそらく判決が下されるであろうとわかっているからか、彼も冷静であった。
本当だったらとっくに終わっていた筈の裁判。ここまで長くなってしまったけれど、ようやく先が見えそうで、とにかく色々準備をするためにまた忙しくなるなぁと気合いを入れた。
ある日、お義父さんから電話がかかってきた。快晴のいい日だった。しかし、電話の内容を聞いて私は息を飲んだ。
雅臣の療養が終わり、本格的に裁判が動き始めたとのことだった。
色んな容疑で連行され、次々と色んな疑惑があったため、彼は多くの罪を背負っているようにみえた。けれど、実際のところ、脱税と詐欺に関しては無関係であったことが証明されている。
問題は、私の家への住居侵入と傷害、それから強制わいせつ、殺人未遂についてだ。それだけでも立派な犯罪者だけれど。
そんなことさえしなければ、父親と兄から馬鹿にされ続け、罪を擦り付けられようとした哀れな税理士で済んだものを。
だからといって私を騙し、別に婚約者をつくっていた事実はなくならない。それでも私が雅臣と籍を入れていたわけではない以上、それは法には引っ掛からない。
税理士として再スタートを切れたはずだ。
もとい、脱税をしていたのは雅臣ではないため、彼の税理士免許が剥奪されたわけではない。しかし、税理士としての信用を落とし、活躍の場を狭めたことは事実である。
だからおそらく税理士としてではなく、新たに企業を始めるという考えに至ったのだろう。
どちらにせよ私を裏切り、あまねくんを殺そうとした罪は重い。いくら彼が過去に私をとても好きでいてくれていたとしても、もしかしたら隣にあまねくんはいなかったかもしれない。その恐怖はいつまでたっても消えない。
私は冷静にこれからの流れについて語るお義父さんの言葉に耳を傾けた。
今回の件は刑事裁判となるため、主に検事さんと雅臣の弁護士さんとで行われることとなるそうだ。
騙す、騙されたの民事裁判であれば私は被害者として雅臣を訴えるが、今回はすでに殺人未遂の容疑まであるため、私は証人として裁判に出向くそうだ。
とにかく難しい言葉がたくさん出てきたけれど、お義父さんに言われた通り証言していけば大丈夫だと言われ、安堵した。
あまねくんのお父さんが弁護士さんでよかった。雅臣と揉めていたところで、私には弁護士の知り合いなんていないし、弁護士を紹介してくれる知人もいない。
最悪泣き寝入りをするか、殺されていたかもしれない。
人生なんてわからないものだと深く考えさせられた。
当の雅臣はと言うと、車椅子生活を余儀なくされ、今では自力で車椅子に乗れる程には回復したようだ。ただ、まだ全てが自分でできるわけではなく、人の手を借りることの方が多い。
お義父さんは雅臣に会いに行ったそうだが、もう覚悟を決めているようで悪態をつくこともなかったそうだ。
それは以前にも聞いていたが、お義父さんもあの態度が本当の彼であれば裁判も直ぐに片が付くかもしれないねなんて言っていた。
あまねくんに全てを話すと「ここまで長かったね。スムーズに終わるといいけど」と言って眉をひそめた。
あんなにも雅臣に対して憤りを顕にしていたあまねくんだったが、半年以上も経ち、おそらく判決が下されるであろうとわかっているからか、彼も冷静であった。
本当だったらとっくに終わっていた筈の裁判。ここまで長くなってしまったけれど、ようやく先が見えそうで、とにかく色々準備をするためにまた忙しくなるなぁと気合いを入れた。
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