【完結】先生、大人の診察は勤務外でお願いします

不貞行為の汚名

不倫顔

　体だけならまだしも、問題は顔だ。体ならまだ大きめの服で誤魔化せる。ただ、顔だけはそうもいかない。目立たないように化粧をしなくても元々大きめの目と厚めの唇。
　よく言えば色っぽい。悪く言えば下品。

｢すぐヤレそう｣
｢彼女持ちの男に手を出しそう｣
｢明らかに不倫顔｣

　そんなことを言われるのは日常茶飯事。26歳ともなればもう慣れた。陰口を言われるのも面倒だが、直接罵声を浴びせられるのも結構精神的にくるものだ。
　だから私は無心で過ごす癖がついている。咲季さんのように心を許せる人なんてほんのひと握り。あとは影でなにを言われているかわかったもんじゃないからプライベートな話はもちろんしないし、仕事中は淡々と業務をこなすのみ。

　恋愛だってすっかりご無沙汰だ。それもこれも、全部この顔と体のせい。

　初めて彼氏ができたのは高校2年生の時。大好きだった先輩がいて、意を決して告白したら付き合ってもらえた。私は天にも昇る気持ちで毎日が幸せだった。
　そして初めて迎えた大人の行為。初体験は絶対に好きな人とって決めてたんだもん。痛くて苦しかったけど、幸せだった。好きな人と1つになれるってこんなに素敵なことなんだって思った。

　そんな私に彼、なんて言ったと思う？　血の付いてしまったシーツを見て硬直しながらこう言ったの。

｢汚ぇな。生理なら初めに言えよ｣

　いつもは優しい先輩だった。私は自分の耳に異常があるんじゃないかと疑ったほど。

｢せ、生理じゃないです……初めてだったから｣

　そう言った私に、今度は先輩の方が目を丸くさせた。
　ぐっと唇を噛んで｢嘘だろ？　初めてとか聞いてねぇし。俺、無理だよ。そんな重いの｣なんて言いやがった。