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俺様外科医なんか嫌いだ
キスをした男
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「すげぇ胸でけぇじゃん。服の上からでもわかるわ」
下品な言葉が聞こえる。ひんやりとした空気が腹部を撫でた。下着が顔を出したのも感覚でわかる。
「んーん!」
必死に抵抗をするが、足がバタつくだけでその足すらも掴まれてしまった。
「おとなしくしてろって。普段から複数も相手してるんだろ?」
「職場でスルってのに興奮してるのかもしんないなぁ」
「皆で一緒に気持ちよくなろうよ」
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!
どいつもこいつも、男なんてこんなヤツらばっかり! ヤルことしか考えてない、野蛮で汚くて外道!
あの人と別れてからもう何年もセックスなんてしていないのに……。無理矢理挿入されたら痛いんだろうな。
ナカ、傷付くかな……。いつまで続くかな……。
終わりの見えない恐怖に涙がこぼれた。仕事をしにきて帰るだけ。たったそれだけのことも私には許されないんだろうか。
ジーンズを引っ張られる。床についた臀部のおかげでなんとかおろされずにすんでいる。スキニーにしてよかった。スカートなんかでこなくてよかった。
私は、悲しいくらい小さな抵抗で唯一褒められる場所を探した。
「おい、早くしろよ」
「ちょっと待てよ。先に上全部脱がせろ」
「本当にすげぇな。手からあふれるくらいあるぞ」
そんな会話が聞こえて、背中に手を差し込まれる。下着のホックを外されないよう、なんとか背中に体重をかけて踏ん張る。
「いいからもう全部上にあげちゃえよ。それが1番早い」
「あ、待って。そこにクーパーあるだろ」
男が指を差したのは処置カート。私は目を見開く。一般人が処置カートを見てハサミの存在に気付くはずがない。まして、クーパーだなんて専門用語は医療従事者でなければ使わない。
ここの医者ってわけ……。どうなってんの、この病院。
どこか冷静な私が思考の隅っこでそう呟いた。
「あった、あった。切るぞ」
そう言ってクーパーの先端を向けられた瞬間、「切るって何をです? 楽しそうなことしてますね」と別の声が聞こえた。
ピタッと一瞬で動きを止めた3人の男達。ばっと勢いよく後ろを振り返った。私も視線だけ動かせば、そこには久我暖陽がいた。
「……あ、く、久我先生……?」
私に覆いかぶさっていた男が動揺しながらそう言った。
「院内で何してるんですか? そういうプレイですか? ……にしては、リアルですね」
静かな声が響く。助けてくれるのかくれないのかどっちつかずな対応に、私は安心できないまま震えた。
だってこの男は私にキスをした男だ。もしかしたらこの仲間に加わるかもしれない。
3人が4人になる。考えただけでゾッとして私は呼吸が止まりそうだった。
下品な言葉が聞こえる。ひんやりとした空気が腹部を撫でた。下着が顔を出したのも感覚でわかる。
「んーん!」
必死に抵抗をするが、足がバタつくだけでその足すらも掴まれてしまった。
「おとなしくしてろって。普段から複数も相手してるんだろ?」
「職場でスルってのに興奮してるのかもしんないなぁ」
「皆で一緒に気持ちよくなろうよ」
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!
どいつもこいつも、男なんてこんなヤツらばっかり! ヤルことしか考えてない、野蛮で汚くて外道!
あの人と別れてからもう何年もセックスなんてしていないのに……。無理矢理挿入されたら痛いんだろうな。
ナカ、傷付くかな……。いつまで続くかな……。
終わりの見えない恐怖に涙がこぼれた。仕事をしにきて帰るだけ。たったそれだけのことも私には許されないんだろうか。
ジーンズを引っ張られる。床についた臀部のおかげでなんとかおろされずにすんでいる。スキニーにしてよかった。スカートなんかでこなくてよかった。
私は、悲しいくらい小さな抵抗で唯一褒められる場所を探した。
「おい、早くしろよ」
「ちょっと待てよ。先に上全部脱がせろ」
「本当にすげぇな。手からあふれるくらいあるぞ」
そんな会話が聞こえて、背中に手を差し込まれる。下着のホックを外されないよう、なんとか背中に体重をかけて踏ん張る。
「いいからもう全部上にあげちゃえよ。それが1番早い」
「あ、待って。そこにクーパーあるだろ」
男が指を差したのは処置カート。私は目を見開く。一般人が処置カートを見てハサミの存在に気付くはずがない。まして、クーパーだなんて専門用語は医療従事者でなければ使わない。
ここの医者ってわけ……。どうなってんの、この病院。
どこか冷静な私が思考の隅っこでそう呟いた。
「あった、あった。切るぞ」
そう言ってクーパーの先端を向けられた瞬間、「切るって何をです? 楽しそうなことしてますね」と別の声が聞こえた。
ピタッと一瞬で動きを止めた3人の男達。ばっと勢いよく後ろを振り返った。私も視線だけ動かせば、そこには久我暖陽がいた。
「……あ、く、久我先生……?」
私に覆いかぶさっていた男が動揺しながらそう言った。
「院内で何してるんですか? そういうプレイですか? ……にしては、リアルですね」
静かな声が響く。助けてくれるのかくれないのかどっちつかずな対応に、私は安心できないまま震えた。
だってこの男は私にキスをした男だ。もしかしたらこの仲間に加わるかもしれない。
3人が4人になる。考えただけでゾッとして私は呼吸が止まりそうだった。
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