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俺様外科医なんか嫌いだ
恐怖による弊害
久我先生は余裕そうに微笑むと「今から大勢やって来ます」と言った。
「は?」
掴みかかろうとしていた男の1人が間抜けな声をあげた。
「一緒にいた医師が人を呼びに行ってくれています」
「な……」
「データは既に別のところに送ってあるのでこのスマホを取り上げても無駄です。こちらのデータは既に消しましたし」
「……嘘だろ」
絶望した面持ちで動揺する3人。久我先生はため息をついて「医師ともあろう者が人を傷付ける行為に走るなんて残念です」と軽く首を左右に振る。
「き、傷付けるなんて大袈裟な……。俺達は、あの子が男を誘うためにいつもこの外来前の廊下で待ってるって聞いたから!」
「そうだよ! 必ず複数じゃないと相手にされないって聞いたから、3人できただけのことでっ!」
「誘ったのはあの女で、俺達は悪くない!」
必死に言い訳を並べる3人。私には彼らの言っている意味がわからない。どうしてそんな嘘をつけるのか。
「悪くないって……彼女が誘ったって……あんな状態の人間がですか?」
久我先生は、声も出ず乱れた服さえも直せずに震える私を指さした。涙で視界がぼやけて全員の顔がわからない。ただ、両頬がふやけるほどとめどなく涙がこぼれているのは自分でもわかる。
客観的に見た状況は悲惨だったのだろう。3人の男達は、もう一度私に目を向けて「あ……」と小さく呟いた。
「そもそもそれ、確実な情報だったんですか? 誰かがでっち上げた話だったら、先生達単なる性犯罪者ですよ」
「い、いや……それは」
「おい! もう行くぞ! 今バレるのはヤバい!」
1人の男が、久我先生と向き合っていた男の腕を掴んだ。慌てた様子で後ずさり、チラリとこちらに視線を向ける。私はまたビクリと体が震え、ようやく指先が動くようになった。
まるで金縛りにでもあったかのようだった。本当の恐怖を感じると、体は動かなくなるものなのだと身をもって知った。
「そのデータ、必ず消させるからな! 今度ちゃんと話し合ってもらうからな!」
捨て台詞を吐いて逃げていく3人。やっと大きく息を吸い込んだ。途端にヒュッと喉の奥で高い音がした。
急に息ができなくなって息苦しくなる。肩が大きく揺れて、呼吸がはっはっと細かく刻む。
ああ、これが過換気症候群か……。そんな悠長なことを頭が唱えた。
首元を押さえて横向きになる。
「お、おい! 大丈夫か!」
駆け寄ってきた久我先生の姿が目に入る。途端に先程の恐怖が蘇った。またガタガタと震えが起こり、頭の中が真っ白になった。
苦しくて、苦しくて、死ぬかもしれない。そう思った瞬間、私は意識を手放した。
「は?」
掴みかかろうとしていた男の1人が間抜けな声をあげた。
「一緒にいた医師が人を呼びに行ってくれています」
「な……」
「データは既に別のところに送ってあるのでこのスマホを取り上げても無駄です。こちらのデータは既に消しましたし」
「……嘘だろ」
絶望した面持ちで動揺する3人。久我先生はため息をついて「医師ともあろう者が人を傷付ける行為に走るなんて残念です」と軽く首を左右に振る。
「き、傷付けるなんて大袈裟な……。俺達は、あの子が男を誘うためにいつもこの外来前の廊下で待ってるって聞いたから!」
「そうだよ! 必ず複数じゃないと相手にされないって聞いたから、3人できただけのことでっ!」
「誘ったのはあの女で、俺達は悪くない!」
必死に言い訳を並べる3人。私には彼らの言っている意味がわからない。どうしてそんな嘘をつけるのか。
「悪くないって……彼女が誘ったって……あんな状態の人間がですか?」
久我先生は、声も出ず乱れた服さえも直せずに震える私を指さした。涙で視界がぼやけて全員の顔がわからない。ただ、両頬がふやけるほどとめどなく涙がこぼれているのは自分でもわかる。
客観的に見た状況は悲惨だったのだろう。3人の男達は、もう一度私に目を向けて「あ……」と小さく呟いた。
「そもそもそれ、確実な情報だったんですか? 誰かがでっち上げた話だったら、先生達単なる性犯罪者ですよ」
「い、いや……それは」
「おい! もう行くぞ! 今バレるのはヤバい!」
1人の男が、久我先生と向き合っていた男の腕を掴んだ。慌てた様子で後ずさり、チラリとこちらに視線を向ける。私はまたビクリと体が震え、ようやく指先が動くようになった。
まるで金縛りにでもあったかのようだった。本当の恐怖を感じると、体は動かなくなるものなのだと身をもって知った。
「そのデータ、必ず消させるからな! 今度ちゃんと話し合ってもらうからな!」
捨て台詞を吐いて逃げていく3人。やっと大きく息を吸い込んだ。途端にヒュッと喉の奥で高い音がした。
急に息ができなくなって息苦しくなる。肩が大きく揺れて、呼吸がはっはっと細かく刻む。
ああ、これが過換気症候群か……。そんな悠長なことを頭が唱えた。
首元を押さえて横向きになる。
「お、おい! 大丈夫か!」
駆け寄ってきた久我先生の姿が目に入る。途端に先程の恐怖が蘇った。またガタガタと震えが起こり、頭の中が真っ白になった。
苦しくて、苦しくて、死ぬかもしれない。そう思った瞬間、私は意識を手放した。
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