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ナースの王子様
愛されることを知らない
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「初めての彼氏もそうでした。ここで出会った彼も……」
久我先生が川崎先生から以前付き合っていた医者との話を聞いた場面を私は目撃している。けれど、そのことをこの人は知らない。
だからあえて私は話した。26年間生きてきて、3人の男性を本気で愛したこと。けれど、誰にとっても私は本命ではななかったこと。
「……お前に見る目がねぇだけなんじゃねぇの?」
バカにされるかと思いきや、隣の男は険しい顔をして私を見た。
「なっ……そんなこと! いや……否定できないか……」
誰か1人でもまともな人と付き合っていれば、中にはいい人もいました! って言えたけど……ここまでくるとさすがに言い返す言葉が見つからない。
「ほらな。それに、たかが3人だけだろ。最低100人くらい相手にしてから男なんてって言えよ。この世に男がどれくらいいると思ってんだよ」
「……海外も検討してみましょうか」
私がそういえば、先生はぶはっと吹き出した。
「そうだな。世界に目を向けたら腐るほどいる」
「そう……ですね。でも、暫くはいいです……」
「暫くって、その男と別れてからもう5年も経ってるんだろ?」
「そうなんですけど……私は、本気で好きになってもらったことがないので……愛されるってことがどういうことかもよくわからないですし。なんかもう、知らないなら知らないままでもいいかなって思うんです」
私は、膝の上に置いた自分の手の甲をじっと見つめた。もしも先生が言うように世界にも目を向けてみて、本当に私のことを心から愛してくれる人がいるとして、じゃあその人に出会えるまで一体私はあと何回恋愛に失敗したらいいんだろうか。
次に付き合った人がまた実は既婚者だったら? また本気じゃなかったって言われたら? そんなことを何回繰り返せば辿りつけるんだろう。
私はあと何回惨めな思いをしなければならないんだろう。それを考えたらその度に落ち込んで、泣いて、付き合ったことを後悔して、そんな労力なんて残っていない。
「……少なくとも、お前の周りにいる味方はお前のこと大事に思ってるんじゃないのか?」
「……え?」
「それが友情か恋愛感情かは知らねぇけど、お前が数年かけて築き上げた信頼関係っていうのはそんなに脆いもんなのか」
先生の言葉に思い浮かんだのは、慎さんの顔。それに咲季さんも。慎さんは男性だけど、私が唯一信用できる人。男性として意識したことはないけれど、私の中身を見てくれる人。
「……慎さんはいい人です」
「とりあえず、そういうの増やしていったら変わるんじゃねぇの?」
「増え……ますかね」
「さぁな。でも変わるかもな、アイツらいなくなったら」
そう言って先生はふっと笑い、スマートフォンを片手に掲げた。
久我先生が川崎先生から以前付き合っていた医者との話を聞いた場面を私は目撃している。けれど、そのことをこの人は知らない。
だからあえて私は話した。26年間生きてきて、3人の男性を本気で愛したこと。けれど、誰にとっても私は本命ではななかったこと。
「……お前に見る目がねぇだけなんじゃねぇの?」
バカにされるかと思いきや、隣の男は険しい顔をして私を見た。
「なっ……そんなこと! いや……否定できないか……」
誰か1人でもまともな人と付き合っていれば、中にはいい人もいました! って言えたけど……ここまでくるとさすがに言い返す言葉が見つからない。
「ほらな。それに、たかが3人だけだろ。最低100人くらい相手にしてから男なんてって言えよ。この世に男がどれくらいいると思ってんだよ」
「……海外も検討してみましょうか」
私がそういえば、先生はぶはっと吹き出した。
「そうだな。世界に目を向けたら腐るほどいる」
「そう……ですね。でも、暫くはいいです……」
「暫くって、その男と別れてからもう5年も経ってるんだろ?」
「そうなんですけど……私は、本気で好きになってもらったことがないので……愛されるってことがどういうことかもよくわからないですし。なんかもう、知らないなら知らないままでもいいかなって思うんです」
私は、膝の上に置いた自分の手の甲をじっと見つめた。もしも先生が言うように世界にも目を向けてみて、本当に私のことを心から愛してくれる人がいるとして、じゃあその人に出会えるまで一体私はあと何回恋愛に失敗したらいいんだろうか。
次に付き合った人がまた実は既婚者だったら? また本気じゃなかったって言われたら? そんなことを何回繰り返せば辿りつけるんだろう。
私はあと何回惨めな思いをしなければならないんだろう。それを考えたらその度に落ち込んで、泣いて、付き合ったことを後悔して、そんな労力なんて残っていない。
「……少なくとも、お前の周りにいる味方はお前のこと大事に思ってるんじゃないのか?」
「……え?」
「それが友情か恋愛感情かは知らねぇけど、お前が数年かけて築き上げた信頼関係っていうのはそんなに脆いもんなのか」
先生の言葉に思い浮かんだのは、慎さんの顔。それに咲季さんも。慎さんは男性だけど、私が唯一信用できる人。男性として意識したことはないけれど、私の中身を見てくれる人。
「……慎さんはいい人です」
「とりあえず、そういうの増やしていったら変わるんじゃねぇの?」
「増え……ますかね」
「さぁな。でも変わるかもな、アイツらいなくなったら」
そう言って先生はふっと笑い、スマートフォンを片手に掲げた。
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