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変化する関係性

まるでデートじゃないか

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 私はスタンドミラーに全身を写し、色んな服を合わせてはあれも違う、これも違うとベッドの上に放り投げた。

 別に気分転換するだけだし。ご飯食べに行くだけだし。服装なんて適当でいいじゃない。そう思ったのに、色々出してたら決められなくなった。

 男性と2人きりで出かけるだなんて何年ぶりだろうか。そう思ったら、服装だって簡単には決まらない。

 相手は久我先生なんだから気を遣う必要なんかない。普段はスクラブのシニヨン姿で接しているわけだし。退勤する時に通勤用の私服なら見られてるし。なんなら、脱がされかけた服も戻してくれたし……。

 だから適当でいいんだ! これとこれとこれ! そう思って適当に選ぶ。けれど、こっちの方が可愛いかな……と淡い紫色のチェック柄ワンピースを手に取る。
 いやいやいやいや! 可愛いかなってなに!? 別に可愛くなくてよくない!? デートなわけじゃないし! あくまでも気分転換だし!

 久我先生と2人でご飯を食べに行くだけで……それって、まるでデートじゃないか!

 デートなの? これってデートなの!? 誰か教えて! 男性免疫薄れてきててわかんない……。こういう時、どうしてたっけ?

 そうグルグルと考え、疲れ果てた私は、結局あまり体のラインがでないタイプのワンピースを選んだ。アバズレだの、誘ってるだの散々言われたから、足首まで丈のあるロングスカートのものにした。
 これで誘ってるだなんて言われたら目がおかしいのよって言ってやるわ。

 そう思いながら、待ち合わせ場所に向かった。迎えに行くと言われたが、さすがに家の場所を教えるのは嫌だった。だから、駅で待ち合わせ。

 外科医である久我先生は、手術が入れば仕事が終わらなくなる。緊急オペもチラホラ入るし、定時で終わるわけがない。
 だからちゃんと待ち合わせ時間に来るだなんて思ってはいなかった。外に出るいいキッカケになったし、もし来られないならそれはそれで仕方のないことだと思っていた。

 けれど、先生は時間通りに現れた。

「なんだよ、人をお化けでも見るような顔で見て」

 怪訝な顔をしてそう言った。

「あ、先生は忙しいので時間通りには来ないかと思ってましたので……」

「時間作ったんだよ。とりあえず、看護師達に任せてきた。急変が出ればまた呼ばれるけどな……」

 そう言いながらスマホを確認する。それをズボンのポケットに入れた先生は、私を頭のてっぺんからつま先まで見下ろして「似合ってんじゃん」と微笑んだ。

 は!? 似合ってるって言った!? ワンピース!? ベージュと紺のバイカラーの襟付きで、スカートはプリーツになっている。歩く度に人魚のひれのようにヒラヒラ舞う。
 綺麗なワンピースでお気に入りだ。それをこの男、私に似合うと言ったのだ。
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