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愛情
【14】
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「立ち話もなんだから、座ってて。今お茶いれるからね。まどかちゃんは紅茶でいいかな?」
「ありがとうございます、大丈夫です」
手渡したお菓子を嬉しそうに抱えながらキッチンへ向かうあまねくんの母。とても綺麗な人だけれど、仕草の1つ1つが可愛らしくて見ていてこちらの胸が暖かくなる。
「さあ、こちらへどうぞ」
あまねくんの父に促されて、ソファへ座る。体が沈むように柔らかだった。
「今、周の兄にあたる息子が上にいるので、直に降りてくるかと思います。娘は今東京からこちらに向かっているところなので、食事には間に合わないかもしれませんが、帰るまでには挨拶させますので」
対角線状に座ったあまねくんの父はそう言った。丁寧な言葉使いとは逆に、表情はいたって穏やかで少しずつ緊張が解かれていく気がした。
「東京はお仕事ですか?」
「そうなんです。妻は昔モデルをしておりましてね、その影響でか娘もモデルになりたいと高校を卒業してすぐに東京へ行ってしまいました」
「夢があっていいですね」
「ええ。今では娘も上京してよかったと喜んでいますし、1度は反対したんですがね、最終的に認めてやってよかったと思っていますよ」
「きっとモデルさんの仕事は厳しいですもんね……」
「そうですね。妻からもモデル時代の苦労を聞かされていましたから、娘にはそんな思いはさせたくなかったんですが、少々気の強いところがありましてね」
彼は、困ったように眉を下げて笑った。
「奏の頑固なところは母さん似だよ。言い出したら聞かないから」
「かなで?」
「妹ね。母さんも普段あんな感じだけど、自分がこれって決めたら絶対譲らないんだ。負けん気が強くてさ」
「全然そんな感じしないけど……。すごく、可愛らしい人だなって……」
「お客さんの前だからね」
あまねくんも顔をしかめて、軽く息をつく。キッチンを見れば、依然と楽しそうに紅茶を淹れている母親の姿。
とても気が強いようには見えない。
「うちは女性の方が強いんですよ」
「まどかさんがうちに入ったら少しは穏やかになるかな」
「案外、周も尻に敷かれるタイプかもしれないな」
「うーん……俺も、まどかさんには弱いからなぁ……」
自然な流れで守屋家に嫁ぐ話に切り替わり、心臓がドクドクと立てる音を激しくさせるが、彼とその父は笑顔で話している。
事前に結婚を前提としていることを話してあるのか、彼の父親も疑問を抱く様子もない。
「はい、紅茶が入りました。どうぞ」
丁度いいタイミングであまねくんの母が紅茶を出してくれた。
とてもいい香りがする。お礼を言って受けとると、「そろそろご飯を用意するからね」と微笑んでくれた。
あまねくんの両親がとてもいい人そうな人達でよかった。普段コミュニケーションを大切にする仕事に就いている私でも、こんな緊張する場面でまともに会話ができるか不安だったが、彼の父親が話を振ってくれるおかげで、疎外感を抱くことなくあまねくんとも会話ができる。
こんなに穏やかな時間が過ごせるとは思っていなかったため、この現状に安堵する。
「ありがとうございます、大丈夫です」
手渡したお菓子を嬉しそうに抱えながらキッチンへ向かうあまねくんの母。とても綺麗な人だけれど、仕草の1つ1つが可愛らしくて見ていてこちらの胸が暖かくなる。
「さあ、こちらへどうぞ」
あまねくんの父に促されて、ソファへ座る。体が沈むように柔らかだった。
「今、周の兄にあたる息子が上にいるので、直に降りてくるかと思います。娘は今東京からこちらに向かっているところなので、食事には間に合わないかもしれませんが、帰るまでには挨拶させますので」
対角線状に座ったあまねくんの父はそう言った。丁寧な言葉使いとは逆に、表情はいたって穏やかで少しずつ緊張が解かれていく気がした。
「東京はお仕事ですか?」
「そうなんです。妻は昔モデルをしておりましてね、その影響でか娘もモデルになりたいと高校を卒業してすぐに東京へ行ってしまいました」
「夢があっていいですね」
「ええ。今では娘も上京してよかったと喜んでいますし、1度は反対したんですがね、最終的に認めてやってよかったと思っていますよ」
「きっとモデルさんの仕事は厳しいですもんね……」
「そうですね。妻からもモデル時代の苦労を聞かされていましたから、娘にはそんな思いはさせたくなかったんですが、少々気の強いところがありましてね」
彼は、困ったように眉を下げて笑った。
「奏の頑固なところは母さん似だよ。言い出したら聞かないから」
「かなで?」
「妹ね。母さんも普段あんな感じだけど、自分がこれって決めたら絶対譲らないんだ。負けん気が強くてさ」
「全然そんな感じしないけど……。すごく、可愛らしい人だなって……」
「お客さんの前だからね」
あまねくんも顔をしかめて、軽く息をつく。キッチンを見れば、依然と楽しそうに紅茶を淹れている母親の姿。
とても気が強いようには見えない。
「うちは女性の方が強いんですよ」
「まどかさんがうちに入ったら少しは穏やかになるかな」
「案外、周も尻に敷かれるタイプかもしれないな」
「うーん……俺も、まどかさんには弱いからなぁ……」
自然な流れで守屋家に嫁ぐ話に切り替わり、心臓がドクドクと立てる音を激しくさせるが、彼とその父は笑顔で話している。
事前に結婚を前提としていることを話してあるのか、彼の父親も疑問を抱く様子もない。
「はい、紅茶が入りました。どうぞ」
丁度いいタイミングであまねくんの母が紅茶を出してくれた。
とてもいい香りがする。お礼を言って受けとると、「そろそろご飯を用意するからね」と微笑んでくれた。
あまねくんの両親がとてもいい人そうな人達でよかった。普段コミュニケーションを大切にする仕事に就いている私でも、こんな緊張する場面でまともに会話ができるか不安だったが、彼の父親が話を振ってくれるおかげで、疎外感を抱くことなくあまねくんとも会話ができる。
こんなに穏やかな時間が過ごせるとは思っていなかったため、この現状に安堵する。
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