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愛情
【15】
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あまねくんの母親が夕食の支度に取りかかり、私はあまねくんの両親の馴れ初めを聞いていた。
弁護士の友人が主催したパーティーにゲストとして来ていたのがあまねくんの母親で、当時ニューヨークのコレクションにも出場していた程のモデルだったそうだ。
彼女は日本とロシアのハーフで、当時からその美貌は誰もが振り返る程だったのだとか。皆が彼女をもてなす中、付き合いで挨拶に行った彼。
その時に彼が身に付けていた時計が、以前彼女がイメージモデルを務めたことのあるブランドの新作だったようで、メンズだったのにも関わらずすぐに彼女がそれに気付き、一気に距離が近付いたとのことだった。
ファッションモデルには疎い彼だったが、その時計のブランドは好きで、レディースのモデルを務めたことから彼女の顔を見たことがあったという。
そこからはどちらからともなく連絡を取り合い、あっという間に結婚に至ったとのことだった。
そんなドラマみたいな話があるだろうかとうっとりしながら話を聞いていると、リビングのドアの方から話し声が聞こえた。
「おばあちゃん、足元気をつけて」
「ありがとうね、りっちゃん」
「うん。ほら、座って」
「ありがと、ありがと」
長身で細身の男性が、おばあさんの左腕を支えながらリビングへと入ってきた。
6人掛けのダイニングテーブル前に置かれた一番手前の椅子を引き、そこへ誘導させている。
おばあさんへ目線がいっているため、顔は少し下を向いているが、それでも美形だとわかるのは、この家系の血筋だろう。
「ねぇ、あまねくんっち兄弟って皆お母さん似?」
こっそりとあまねくんの耳元で尋ねると、「それ、父さんの前では言っちゃだめだよ。誰も父さんに似てないの。すっごい気にしてるから」と小声で返された。
母親から産まれたのだから、3人とも母親の子供であることは確かだが、父親からすれば誰も自分に似ていないのは不安が過るのも頷ける。
「でも多分、母さんの方が父さんのこと好きだから、3人とも父さんの子供のはず」
そう言って彼は笑うが、冗談にしては笑えない。
あまねくんだって税理士になれるくらい頭がいいのだから、きっとこの弁護士さんの子供で間違いないと……思う。
おばあさんを座らせた後、男性はこちらを振り返ったものだから、私は慌てて立ち上がり、「お邪魔しております。一まどかです」とお辞儀をした。
「こんばんわ。周の兄です。リツといいます」
「リツさん……」
「法律の律でリツ。律でいいです」
「いえ、そういうわけには……」
あまねくんのことだって呼び捨てにしたことがないのに、その兄をいきなり呼び捨てにするなど気が引けた。
それに、私の2つ下だと聞いていたがまだあどけなさが残るあまねくんとは違い、どこかピシッとしたような、冷たいような印象を受けた。
とても綺麗な顔をしているが、第一印象で言えば寡黙そう、笑わなそう、怖そう……そんな少しマイナスな印象さえ受けてしまった。
弁護士の友人が主催したパーティーにゲストとして来ていたのがあまねくんの母親で、当時ニューヨークのコレクションにも出場していた程のモデルだったそうだ。
彼女は日本とロシアのハーフで、当時からその美貌は誰もが振り返る程だったのだとか。皆が彼女をもてなす中、付き合いで挨拶に行った彼。
その時に彼が身に付けていた時計が、以前彼女がイメージモデルを務めたことのあるブランドの新作だったようで、メンズだったのにも関わらずすぐに彼女がそれに気付き、一気に距離が近付いたとのことだった。
ファッションモデルには疎い彼だったが、その時計のブランドは好きで、レディースのモデルを務めたことから彼女の顔を見たことがあったという。
そこからはどちらからともなく連絡を取り合い、あっという間に結婚に至ったとのことだった。
そんなドラマみたいな話があるだろうかとうっとりしながら話を聞いていると、リビングのドアの方から話し声が聞こえた。
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「うん。ほら、座って」
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おばあさんへ目線がいっているため、顔は少し下を向いているが、それでも美形だとわかるのは、この家系の血筋だろう。
「ねぇ、あまねくんっち兄弟って皆お母さん似?」
こっそりとあまねくんの耳元で尋ねると、「それ、父さんの前では言っちゃだめだよ。誰も父さんに似てないの。すっごい気にしてるから」と小声で返された。
母親から産まれたのだから、3人とも母親の子供であることは確かだが、父親からすれば誰も自分に似ていないのは不安が過るのも頷ける。
「でも多分、母さんの方が父さんのこと好きだから、3人とも父さんの子供のはず」
そう言って彼は笑うが、冗談にしては笑えない。
あまねくんだって税理士になれるくらい頭がいいのだから、きっとこの弁護士さんの子供で間違いないと……思う。
おばあさんを座らせた後、男性はこちらを振り返ったものだから、私は慌てて立ち上がり、「お邪魔しております。一まどかです」とお辞儀をした。
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「いえ、そういうわけには……」
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