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愛情
【16】
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「大丈夫です。あなたの方が年上ですし」
「それはそうですね……」
あまねくんとその父親との朗らかな空気から一転し、少し緊張が走る。
「まどかさん、律もああ言ってるし大丈夫だよ」
助け船を出すようにあまねくんが声をかけてくれるが、彼も自分の兄を呼び捨てにしている。
「で、でも……」
「皆が仲良くなれるのはいいことですよ。好きに呼んでやってください」
彼の父親にもそう言われてしまい、「で、では……律くんで……」と答えた。
「そうですか。敬語もいりません」
「……」
ちらりとあまねくんを見れば、うんうんと笑顔で頷いているため「……わかった」と続けた。律くんは満足したのか「こちらは祖母です。父方の」と次に隣のおばあさんを紹介してくれた。
「おばあちゃん、周の彼女さん」
屈んで耳元で話す律くん。おばあさんは耳が遠いのだろうか。
心なしか、おばあさんに話しかける時は、少し口調が柔らかくなるような気がした。
「ああ、そうですか。これはこれは、ようこそいらっしゃいました。あっくんの彼女さんですか。お名前は何ていうの?」
「一まどかです」
「え?」
ソファからダイニングテーブルまで距離があるからか、声が届いていない様子だ。
「まどかさんだって」
律くんが代弁してくれる。それを聞いて「そうですか。まどかさんですか。ゆっくりしていって下さいね」と笑顔で数回お辞儀をしてくれた。
可愛らしいおばあさんだ。高齢者と接するのが好きな私にとってはとても素敵なおばあさんに見えた。
「皆、こっちにきて。支度ができたから」
あまねくんのお母さんがいそいそとダイニングテーブルの周りを動いては何かを置いていく。今更だけれど、私は何も手伝わなくてよかったのだろうか。
そうは思うが、初めてのお宅訪問で人様のキッチンに立つのも失礼な気もするし、せっかく話しかけてくれていたお父さんの話の腰を折るのも失礼な気がして何が正しい対応なのかわからなかった。
促されるままあまねくんの隣に腰かけた。私の目の前にあまねくんの父親、その隣に律くん、おばあさんと並び、私の隣にあまねくん、そしてその隣に母親が座った。
「奏はやっぱり遅くなるみたい。先に食べちゃいましょう」
母親がそう言ったことで、食事となった。ダイニングテーブルにはとても6人分とは思えない豪華な料理の数々。
お寿司や金目の煮付けやら、見たことのない料理までずらりと並んでいる。
何の料理かはわからないが、目の前に小分けされている一品の上にちょこんと乗っているのはおそらくキャビアだろう。ちゃんとした本物のキャビアなんて食べたことがない。
いや、雅臣と行ったレストランで食べたかもしれない。過去に食べたかどうかの記憶さえその程度だ。
「いただきます」
手を合わせて箸を持つ。どれから食べようかと目移りしてしまう。
「まどかちゃん、好き嫌いはない? 適当に作っちゃったけど」
「はい、ないです。どれも美味しそうで迷ってしまいます」
「あら、上手ね。お寿司は行きつけのお寿司屋さんにお願いしちゃったんだけど、それ以外は朝から作ったのよ」
「すごいです! 料理お上手なんですね」
本当に尊敬するレベルだ。あまねくん越しに母親と話をすれば、彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。綺麗でスタイルよくて、料理上手。欠点のない彼女に圧倒されてしまう。
「気を遣わなくて大丈夫だよ。こういう時だけだから。めんどくさくなるとお好み焼きとか鍋とか皿うどんとかそんなのばっか」
こそこそっとあまねくんが私の耳元で言うものだから、テーブルの上に並んでいる料理と比較してしまい、思わず笑ってしまった。
なんて可愛らしいお母さんなんだろう。反対に、今日のために頑張ってくれたのだと嬉しくなった。
「それはそうですね……」
あまねくんとその父親との朗らかな空気から一転し、少し緊張が走る。
「まどかさん、律もああ言ってるし大丈夫だよ」
助け船を出すようにあまねくんが声をかけてくれるが、彼も自分の兄を呼び捨てにしている。
「で、でも……」
「皆が仲良くなれるのはいいことですよ。好きに呼んでやってください」
彼の父親にもそう言われてしまい、「で、では……律くんで……」と答えた。
「そうですか。敬語もいりません」
「……」
ちらりとあまねくんを見れば、うんうんと笑顔で頷いているため「……わかった」と続けた。律くんは満足したのか「こちらは祖母です。父方の」と次に隣のおばあさんを紹介してくれた。
「おばあちゃん、周の彼女さん」
屈んで耳元で話す律くん。おばあさんは耳が遠いのだろうか。
心なしか、おばあさんに話しかける時は、少し口調が柔らかくなるような気がした。
「ああ、そうですか。これはこれは、ようこそいらっしゃいました。あっくんの彼女さんですか。お名前は何ていうの?」
「一まどかです」
「え?」
ソファからダイニングテーブルまで距離があるからか、声が届いていない様子だ。
「まどかさんだって」
律くんが代弁してくれる。それを聞いて「そうですか。まどかさんですか。ゆっくりしていって下さいね」と笑顔で数回お辞儀をしてくれた。
可愛らしいおばあさんだ。高齢者と接するのが好きな私にとってはとても素敵なおばあさんに見えた。
「皆、こっちにきて。支度ができたから」
あまねくんのお母さんがいそいそとダイニングテーブルの周りを動いては何かを置いていく。今更だけれど、私は何も手伝わなくてよかったのだろうか。
そうは思うが、初めてのお宅訪問で人様のキッチンに立つのも失礼な気もするし、せっかく話しかけてくれていたお父さんの話の腰を折るのも失礼な気がして何が正しい対応なのかわからなかった。
促されるままあまねくんの隣に腰かけた。私の目の前にあまねくんの父親、その隣に律くん、おばあさんと並び、私の隣にあまねくん、そしてその隣に母親が座った。
「奏はやっぱり遅くなるみたい。先に食べちゃいましょう」
母親がそう言ったことで、食事となった。ダイニングテーブルにはとても6人分とは思えない豪華な料理の数々。
お寿司や金目の煮付けやら、見たことのない料理までずらりと並んでいる。
何の料理かはわからないが、目の前に小分けされている一品の上にちょこんと乗っているのはおそらくキャビアだろう。ちゃんとした本物のキャビアなんて食べたことがない。
いや、雅臣と行ったレストランで食べたかもしれない。過去に食べたかどうかの記憶さえその程度だ。
「いただきます」
手を合わせて箸を持つ。どれから食べようかと目移りしてしまう。
「まどかちゃん、好き嫌いはない? 適当に作っちゃったけど」
「はい、ないです。どれも美味しそうで迷ってしまいます」
「あら、上手ね。お寿司は行きつけのお寿司屋さんにお願いしちゃったんだけど、それ以外は朝から作ったのよ」
「すごいです! 料理お上手なんですね」
本当に尊敬するレベルだ。あまねくん越しに母親と話をすれば、彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。綺麗でスタイルよくて、料理上手。欠点のない彼女に圧倒されてしまう。
「気を遣わなくて大丈夫だよ。こういう時だけだから。めんどくさくなるとお好み焼きとか鍋とか皿うどんとかそんなのばっか」
こそこそっとあまねくんが私の耳元で言うものだから、テーブルの上に並んでいる料理と比較してしまい、思わず笑ってしまった。
なんて可愛らしいお母さんなんだろう。反対に、今日のために頑張ってくれたのだと嬉しくなった。
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